第2次高市改造内閣でデジタル相に就いた古川俊治氏が9月18日、デジタル庁で就任記者会見を開いた。これまで経済安全保障担当相が担っていたAI戦略と科学技術政策がデジタル相の手に移り、人工知能とデジタル行政の司令塔が一人に集約された。古川氏は「全ての国民にAX/DXの恩恵が行き渡る社会の構築をするように指示を受けている」と述べ、高市早苗首相からの指示書の内容を明らかにした。

AI戦略とデジタル政策を一人に集約

今回の改造で古川氏が拝命したのは、デジタル相、AI・デジタル改革推進担当相、サイバー安全保障担当相、コンテンツ戦略担当相と、人工知能戦略・科学技術政策・宇宙政策・海洋政策・知的財産戦略を担当する内閣府特命担当相である。個人情報保護委員会や原子力政策、認知症施策本部に関する事務も持つ。

前の体制では、AI戦略と科学技術政策は経済安全保障担当相の所掌だった。担務が再編された意義を問われた古川氏は「AIとかAIエージェント、こうしたAI技術というものをデジタルの推進とともに繰り広げていく、ここが非常に重要なこれからの課題だと考えておりまして、そこで集中をして、この司令塔たるデジタル大臣と人工知能戦略、この大臣を一緒に担うことになったと理解をしております」と答えた。

会見で古川氏が繰り返したのが「AX」という言葉である。DX(デジタルトランスフォーメーション=業務や社会の仕組みをデジタル前提に組み替えること)に対し、AXはAIトランスフォーメーション、つまりAIを前提に作り替えることを指す。政府は「日本AX」の柱として、業種ごとに特化したバーティカルAIと、ロボットなど実体を動かすフィジカルAIへの官民投資を掲げており、古川氏は「『強く豊かな日本』投資枠を活用して、強力に推進してまいります」と述べた。

医師・弁護士の経歴と「医療AX」

古川氏は会見で「医師でございます、また、弁護士でもございます」と自ら紹介した。参院議員で、記者からは自民党で科学技術政策に取り組んできた経歴にも質問が及んだ。強みをどう生かすかを問われ、新型コロナウイルスの流行期に世界中の論文を毎朝確認して発信し続けた経験を挙げ、各国がその間にAIへ大規模な投資を行い創薬などに生かされていく過程を「その効果というのを目の当たりにしました」と語った。

そのうえで「AIの出口としては、極めて医療というのは非常に幅広いし、実験的にやってみるという意味では非常に導入がしやすい、成果が早くみやすいところ」として、「今進めている医療DX、これを医療AXに」と意欲を示した。関連して、医療情報の二次利用を広げるための法制度については、次世代医療基盤法の改正を視野に検討会で議論中であるとし、今月中の取りまとめを経て「来年の通常国会を目指して取りまとめをしていく」との見通しを示した。患者の権利や利益の保護と、治療で得た情報の活用の両立が前提になるとしている。

研究環境については、大学・国立研究開発法人・民間企業の間で人材が動かないことを「かなり問題」と指摘。「大学そして国研、民間というものがより各国と同じぐらい人材交流が研究者の間でなされていくと、これをまず1つ目指していきたい」と述べた。財源に限りがある以上、予算の増額だけでなく、実用化を通じて研究者が次の研究資金を得られる循環をつくる必要があるとの考えを示した。

政府共通基盤への不正アクセス「重く認識」

サイバー安全保障担当相も兼ねることから、デジタル庁が提供する政府共通の業務基盤GSS(ガバメントソリューションサービス)への不正アクセスについても質問が出た。各省庁の職員や関係事業者らの個人情報が流出した可能性があると公表された事案である。

古川氏は「非常に大臣として重く認識をしております」としたうえで、現時点で同様の被害につながる事象は確認されていないと説明。専用の問い合わせ窓口による対応と外部の専門事業者と協同した原因究明を進めるとし、対策として「脆弱性の管理方法の見直し、また、外部からの接続方法の改善、こういったことがやはり不正な侵入を防ぐためには肝要だ」と述べた。侵入を受けた場合でも影響を最小限に抑える対策を強化する方針も示した。

このほか会見では、フュージョンエネルギー(核融合による発電)について、7月に策定した官民投資ロードマップのもとで2030年代の発電実証を目指すこと、来年の宇宙基本計画の改定に向けた議論を加速することなどを挙げた。コンテンツ戦略では2033年までに海外売上20兆円という目標を示し、予算配分の全体最適化と執行の一元化を進めるとした。

会見の最後、就任の打診がいつあったかを問われた古川氏は「前日に高市総理からお話をいただきました」と答え、所掌範囲については「1時に、昨日その直前まで知りませんでした」と明かした。理系出身の閣僚が少ないなかで起用された理由については「今までのバックグラウンドを生かして、この分野一番重要だからやりなさいと、こういう命題をいただいたと理解をしております」と述べた。