政府は9月15日午後の臨時閣議で、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」を決定した。2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、軽減税率8%の対象である飲食料品の消費税率を国税分0.78%、地方消費税と合わせて1%に引き下げる。臨時閣議で決まった案件はこの1件だけで、官房長官は記者会見で「一般案件1件が決定された」と述べ、閣議では城内大臣と財務相が大綱について発言したと説明した。
税率1%と給付の組み合わせで「実質ゼロ」
大綱によると、2年間の税率引き下げは「現下の物価の上昇に鑑み」た臨時措置と位置づけられている。1000円の食料品なら、税込みで1080円だったものが1010円になる計算だ。週2回以上発行される新聞の定期購読分の税率は、現行の8%のまま据え置かれる。
同時に2027年4月、新たな給付制度である「就業者負担軽減支援金」を導入する。内閣官房は、飲食料品にかかる消費税1%相当分の範囲で支援金を先行導入することで「全体として飲食料品に係る消費税の実質ゼロ化を実現する」としている。つまり、税率を0%にするのではなく、1%分を給付で戻すという組み立てだ。
この2年間はあくまで「つなぎ」で、2029年度からは所得に連動して額が変わる本格的な給付制度へ移行する。大綱は支援金制度を「本格的な『給付付き税額控除』を導入する第一歩」と明記している。本格導入分の制度設計は8月5日に閣議決定された基本方針が骨格で、その中身は「給付付き税額控除」2029年度に本格導入、2027年4月から支援金で先行 閣議決定した基本方針の中身 支給額は今も「検討し定める」にまとめている。
値札の表示については経過措置が置かれた。2027年2月1日から3月31日までは、税率引き下げ前でも1%に基づく税込価格を表示でき、逆に引き下げ後の2027年4月1日から5月31日までは8%に基づく税込価格を表示できる。切り替え時期に値札を貼り替える店側の手間を考えた措置とみられる。
肝心の支給額は決定後も白紙
一方、支援金をいくら配るのかは、大綱が閣議決定された後も決まっていない。大綱は支援金の額について「純負担率の国際比較等を参照しながら(中略)恒久財源の確保と併せて検討し定める」と書くにとどまる。
対象者を区切る所得の下限額、扶養する子どもの数に応じて変わる所得の上限額、給付が増え始める「逓増開始額」といった数字も、すべて「定める」「検討して定める」という書きぶりだ。制度の骨格は決まったが、自分がいくら受け取れるのかを国民が知る材料は、まだ大綱には無い。
大綱に具体的な数字として出てくるのは、判断の目安として引かれた既存制度の水準だけだ。単身者の個人住民税所得割の非課税限度額である所得45万円(給与収入119万円)や、最低賃金が最も低い地域の時給1023円に週20時間を掛けた給与収入106万円といった数値が、注記として示されている。
案から消えた「地方と協議中」の7か所
9月11日に国と地方の協議の場へ示された大綱案と、15日に決定した大綱を突き合わせると、本文の中身はほとんど変わっていない。日付が「令和○年○月○日」から「令和8年9月15日」に入り、「閣議決定」の4文字が加わった以外は、数字も条文の構成もそのままだ。
目立つ違いは、案に7か所付いていた「(地方と協議中)」という注記が、決定版ではすべて消えたことだ。注記が付いていたのは、税率引き下げによる地方消費税の減収を地方特例交付金で全額補塡するという部分、支援金の認定・支給・支払いの事務、費用の負担、市町村が処理する事務を法定受託事務とする扱い、確定申告書や源泉徴収票などの様式変更、国による情報システムの整備といった項目で、いずれも市区町村の実務に直結する。地方との調整がひとまず片付いたことを示す形だ。
ただし、注記が消えても本文の記述までは変わっていない。地方へ示された段階の内容は食料品の消費税、2027年4月から2年間1%に 本体1000円の食品は1080円から1010円へ 酒類・外食と新聞の定期購読は対象外にまとめている。費用の負担については「その3分の2以上を国が負担し、残余のうち2分の1ずつを都道府県と市町村がそれぞれ負担する」としたうえで、「費用の負担割合の決定に際しては地方と協議する」という一文がそのまま残っている。国と地方がどの割合で負担するかは、まだ決着していない。この協議や自治体側の準備の進み具合は、政府が10月9日に設けた関係府省庁連絡会議でも追うことになった(食料品1%と支援金、13府省庁の連絡会議が初会合 レジ改修は詳細公表から5〜6か月)。内閣官房はこの協議を2026年末までに行うとしており、支給時期の見通しとあわせて「就業者負担軽減支援金」の支給は年1回 2029年度だけ4月と秋の2回に分けて半年分ずつ 費用の負担割合は年末までに国と地方で協議で詳しく扱っている。
財源は「特例公債に頼らず」 結論は予算編成過程で
財源も積み残しになっている。大綱は、2027年度と2028年度の税率引き下げと給付の国負担分について「市場の信認を得られるよう、特例公債に頼らず」と明記し、補助金や租税特別措置の適正化、税収以外の収入の確保など歳出・歳入全般の見直しで賄うとした。結論を出す時期は「令和9年度の予算編成過程」、つまり今年の年末にかけての予算編成の中とされている。
2029年度以降の本格導入分についても恒久財源の確保が必要だとし、こちらは「早期に結論を得る」との表現にとどまった。与党の自民党は臨時国会の代表質問で、減税を給付への「つなぎ」と位置づけ、2年後に税率を戻すことを首相に確認している(自民の代表質問、食料品減税は「つなぎ」と強調 青木氏は赤字国債に頼らぬ財源確保を首相に求める)。ここでいう特例公債がどういう国債で、2026年度にどれだけ出る予定なのかは首相が言う「特例公債に頼らず」の特例公債とは 財政法が原則禁じる赤字国債 2026年度は当初22兆8680億円、補正後は25兆9815億円 発行には5年ごとの特例法が要るで整理した。
政府は法案提出に向けて必要な法制上の措置を「可及的速やかに」講ずるとしており、大綱は臨時国会に出す法案の土台となる。政府は10月9日にこの大綱を条文にした法律案を閣議決定し、国会に提出した。中身は食料品消費税1%と支援金の法案、国会に提出 支援金の額と所得の線引きは政令に委ねるにまとめている。大綱には、事業者やシステム会社が早期に準備へ着手できるよう関係府省庁が直ちに準備作業に入る、という注記も添えられた。その準備費は9月29日に予備費から支出することが決まり、予備費1118億円の使用を9月29日に閣議決定 食料品の消費税1%引き下げの準備に781億円、就業者負担軽減支援金の準備に327億円 残額は7171億円のとおり、引き下げの実施準備に781億1390万4千円が計上された。
