林芳正総務相は11日の閣議後記者会見で、選挙をめぐるインターネット上の偽・誤情報について「短時間で広範に流通・拡散し、国民生活や社会経済活動に重大な影響を及ぼし得る深刻な課題」との認識を示した。13日投開票の沖縄県知事選をめぐり、生成AIで作られたとみられる偽画像や、過去の発言を切り取った誤解を招く投稿が拡散しているとの指摘について問われ、答えた。

「個別の選挙にはコメントしない」としつつ

林氏はまず、個別の選挙に関するコメントは差し控えるとしたうえで、「民主主義の根幹たる選挙においては、表現の自由、政治活動の自由に配慮しつつ、選挙人の自由な意思による公正な選挙が確保されるということが重要」と述べた。

そのうえで、総務省がすでに取り組んでいる対応として、発信者情報開示請求の手続きを定めていること、大規模プラットフォーム事業者に削除対応の迅速化と運用状況の透明化を義務づける情報流通プラットフォーム対処法による制度的な対応、官民が連携したリテラシー向上の啓発、画像などの真偽判別を支援する技術の開発支援を挙げた。

情報流通プラットフォーム対処法は、2024年に成立した改正法で名称が変わった法律で、2025年4月に施行された。一定の利用者規模などの要件を満たす事業者を「大規模特定電気通信役務提供者」として指定し、誹謗中傷などの権利侵害情報への削除対応を迅速に行うことと、その運用状況を公表することを義務づけている。総務省は2025年3月に事業者向けのガイドラインを公表している。

改正法の3つの柱

選挙に的を絞った規制は、今年7月に議員立法で成立した公職選挙法と情報流通プラットフォーム対処法の改正法で新たに加わった。林氏は会見で、盛り込まれた内容として次の3点を挙げた。

一つ目は、選挙に関してインターネットなどを利用する者の責務を追加すること。二つ目は、AIを利用して作成された画像などが掲載された文書図画をインターネット上で頒布する者に表示義務を設けること。三つ目は、大規模プラットフォーム事業者に対し、選挙の公正に対する悪影響を軽減するための措置を義務づけることだ。

AI生成であることを示す表示を義務づける仕組みは、偽画像そのものを禁じるのではなく、受け手が「これはAIで作られたものだ」と判断できる材料を投稿側に付けさせる考え方である。表現の自由や政治活動の自由との衝突を避けながら、判断の手がかりを増やす設計といえる。

施行は来年3月1日、それまでは事業者の自主対応頼み

改正法の施行は来年3月1日で、選挙を対象にした新しい義務はそれまで発生しない。総務省は施行に向け、法内容の周知と、選挙運動に関する各党協議会での合意内容に基づく指針の策定を進めている。

裏を返せば、13日の沖縄県知事選を含め、施行前に行われる選挙では新しい表示義務も事業者への措置義務もかからない。林氏は「施行までの間におきましても、大規模プラットフォーム事業者において、本改正法の趣旨などを踏まえた適切な対応が図られることを期待しております」と述べ、法的な強制力がない段階での事業者側の自主的な取り組みに期待を示した。

沖縄県知事選は、無所属新人の古謝玄太氏が現職の玉城デニー氏を約14万7000票差で破って初当選した。基地問題という全国的な関心を集める争点を抱え、投票率も前回(令和4年)の57.92%から61.57%へ上がった。県選管の投票速報(最終確定)によると、当日有権者数1,165,704人のうち717,714人が投票した。注目度が高い選挙ほど偽情報が流れ込みやすい以上、施行までの半年近い空白をどう埋めるかは、制度の実効性を占う最初の試金石になる。