内閣府は9月11日、令和9年度予算の概算要求に盛り込まれたAI関連予算を公表した。各府省の要求額を足し上げた総額は2兆9392億円で、令和8年度の当初予算5027億円の5.8倍にあたる。これとは別に、金額を示さず項目だけを立てる「事項要求」が26件ある。
概算要求は、各府省が翌年度に使いたい予算を8月末までに財務省へ示す見積もりで、そのまま通るものではない。年末の予算編成で査定を受け、政府案として閣議決定される段階では削られるのが通例だ。今回の数字は、政府がAIにどれだけ金を張ろうとしているかを示す出発点にあたる。
施策の数も2倍以上に増えた
内閣府の資料によると、令和9年度の要求は新規132件・継続193件の計325件。令和8年度の当初予算に計上された新規20件・継続129件の計149件から2倍以上に増えた。新規が132件と、前年度の6倍を超えて積み上がっているのが特徴だ。
要求の根拠は、令和8年7月14日に閣議決定された第Ⅱ期の「人工知能基本計画」と、同じ7月に閣議決定された「日本成長戦略」。資料は、特定の業種・業務に特化した「バーティカルAI」と、ロボットなど現実世界で動く機械を制御する「フィジカルAI」の開発・活用を進め、日本全体の「AIトランスフォーメーション(AX)」を実現すると位置づけている。
最大は経産省の基盤モデル開発8964億円
金額が示された施策のうち最も大きいのは、経済産業省の「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデルの開発」で約8964億円。マルチモーダルとは、文章だけでなく画像や音声、センサーの信号など複数の種類のデータをまとめて扱えることを指す。要求総額のおよそ3割を、この1本が占める。
次いで大きいのが文部科学省の「AI for Scienceによる科学研究の革新」の約3789億円、中小企業などを対象にAI導入や業務効率化を支援する経産省の新規施策の約3746億円。以下、経産省の「AIロボティクスの中核拠点(Center of Excellence)の創設」が約1333億円、内閣府のバーティカルAI導入促進が約1009億円、文科省の学校現場でのAI活用環境整備が約884億円と続く。
総務省はAIの信頼性を評価する「能動的評価基盤」の研究開発に約460億円、次世代情報通信基盤の研究開発に450億円を求めた。国土交通省は気象分野のAI技術開発に約305億円、厚生労働省は創薬・医療分野の研究開発基盤「AI for Health」に約153億円を新規で要求している。
金額を出さない「事項要求」が26件
一方、26件は金額を伴わない事項要求として出された。事項要求は、制度設計や事業規模が固まっていない段階で「この項目はやる」とだけ立てておき、金額は年末の編成過程で詰める方式をいう。
事項要求に回ったのは、政府職員18万人が使う生成AI環境「ガバメントAI源内」の整備・運用(デジタル庁)、生成AIの計算資源を高度化する「GENIAC」(経産省)、防衛分野の意思決定をAIで迅速化する事業(防衛省)、政府全体のサイバーセキュリティ対策「Project YATA-Shield」(内閣官房)など、いずれも規模の読みにくい大型の案件だ。つまり、総額2兆9392億円には、これら26件の金額がまだ入っていない。
当初予算は10年で8.7倍
政府のAI関連予算は、当初予算ベースで平成29年度の576億円から令和8年度の5027億円まで、10年で8.7倍に増えた。伸びが急になったのは直近2年で、令和7年度の1969億円から令和8年度は2.5倍になっている。
補正予算を含めた年度ごとの合計はより大きく振れており、令和7年度は当初1969億円に補正4380億円が加わって6349億円に達した。令和2年度の4303億円、令和5年度の4317億円も、大半は補正予算による上積みだった。AI関連予算は年度途中の補正で膨らむ傾向が続いており、令和8年度の5027億円もこの先の補正で上振れする可能性がある。
査定を経てどこまで残るかは年末まで分からないが、当初予算がすでに5000億円台に乗った上での2兆9392億円という要求は、これまでの延長線上にはない水準になる。
