経済産業省は9月14日、11日に東京で開いた「LNG産消会議2026」の結果を公表した。会議では、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とマレーシア国営石油会社ペトロナスのペトロナスLNG社が、「緊急時におけるLNGの安定供給連携枠組み」で合意したと発表された。

緊急時のLNG確保へ、政府系機関が合意

LNG(液化天然ガス)は、天然ガスをマイナス162度まで冷やして液体にしたものだ。体積が大きく縮むため、パイプラインのない遠方へも専用船で運べる。日本の火力発電と都市ガスはこの輸入に支えられており、産出国から日本へ運ぶ経路が滞れば、電力とガスの供給に直結する。

JOGMECの発表によると、今回の枠組みは、電力およびガスの安定供給に支障が生じるおそれのある緊急時における日本のLNGの供給確保に資することを内容としたもので、日本とマレーシア双方のエネルギー安全保障の強化につながることが期待されるという。JOGMECは石油・天然ガスや金属鉱物の安定供給を担う政府系機関で、国家石油備蓄の管理も受け持つ。合意は2025年のLNG産消会議で公表した「戦略的LNG取決めに関する協力覚書」に基づく。発表は赤澤経済産業相、ペトロナスのダトゥック・アディフ・ズルキフリ最高経営責任者(CEO)、JOGMECの髙原理事長が並んで行った。

なぜマレーシアなのか 輸入の15.7%を占める2位の調達先

相手がマレーシアであることには理由がある。資源エネルギー庁「エネルギー動向」の2026速報版(財務省「日本貿易統計」を基に作成)によると、2024年度の日本のLNG輸入量は6588万トンで、国別の割合は豪州が38.4%で最も多く、マレーシアが15.7%で2位だった。以下、米国8.8%、ロシア8.6%、パプアニューギニア5.6%、インドネシア5.1%、オマーン5.0%、ブルネイ4.4%、カタール4.3%と続く。

マレーシアの位置づけは、日本のLNG調達の弱点を補う場所にある。同じ統計で中東からの輸入は10.6%にとどまり、非中東が89.4%を占める。石油と比べて中東依存が低いのがLNGの特徴だが、裏を返せば豪州1か国に4割近くを預けている。豪州や米国からの供給が止まる事態に備えるうえで、すでに輸入の6分の1近くを担うマレーシアと緊急時の取り決めを結ぶ意味は小さくない。

ピークは2004・2005年度の22.7% 量はピークの3分の2に減っている

資源エネルギー庁は、マレーシアからの輸入割合は2000年代半ばをピークに年々減っているとも記している。どれだけ減ったのかは、同庁が財務省「日本貿易統計」を基に作成した「LNG輸入量の推移(国別)」の2026速報版でたどれる。15.7%という数字は、長い下り坂の途中にある。

マレーシア産LNGの受け入れが始まったのは1982年度の10.9万トンで、翌1983年度には184.9万トンへ一気に増えた。1986年度には19.0%と2割に近づき、以後しばらく2割前後で推移する。割合が最も高かったのは2004年度と2005年度で、いずれも22.7%だった。量は1315.4万トンと1313.6万トンにのぼる。

マレーシアが日本の最大の輸入先だった時期もある。2010年度は1461.7万トンで20.7%、2011年度は1512.6万トンで18.2%と、2年続けて1位を占めた。2012年度に豪州が1705.7万トンで首位に立ち、以降は豪州が最大の調達先になっている。量そのものが最も多かったのは2015年度の1560.2万トンだ。

そこから先の落ち方は急だった。2017年度の1423.9万トン(17.0%)が、2018年度には996.0万トン(12.4%)まで減る。1年で3割近く少なくなった計算になる。量が最も少なかったのは2021年度の978.7万トンで、割合は13.7%だった。

2024年度の1033.6万トン・15.7%は、割合だけを見れば2000年代の水準に近づいて見える。ただし量はピークの3分の2にとどまる。割合が戻ったのは、分母にあたる日本のLNG輸入全体が縮んだ面が大きい。同じ統計で日本のLNG輸入量は2014年度の8907万トンが最も多く、2024年度は6588万トンまで減っている。10年で26%少ない。

頼り先の豪州も頭打ちになっている。豪州産LNGの受け入れは1989年度の134.1万トン(4.1%)に始まり、2022年度に3029.8万トンで42.9%まで高まったが、2023年度は2661.2万トンで41.0%、2024年度は2530.6万トンで38.4%と2年続けて下がった。

つまり今回の合意は、長期的には比率を落としてきた調達先と、緊急時に限って結びつきを強める形になる。平常時の取引量を取り戻す話ではなく、豪州と米国に寄った調達が止まったときの逃げ道を1本増やす取り決めだと読める。

日本は天然ガスの97.9%を輸入、その全量がLNG

前提として、日本は天然ガスをほぼ全量輸入でまかなっている。資源エネルギー庁によると、2023年度の天然ガスの輸入割合は97.9%で、輸入分は全量がLNGとして運び込まれた。新潟県や千葉県、北海道などで採れる国産天然ガスは2.1%にすぎない。

用途別では、2023年度の天然ガス消費の57.1%が電力用、36.9%が都市ガス用だった。一次エネルギー供給に占める天然ガスの割合は2014年度の24.5%をピークに、2023年度は20.6%となっている。LNGの供給が細れば、発電と都市ガスの両方が同時に影響を受ける構造にある。日本は2022年まで世界最大のLNG輸入国だったが、2023年は輸入を急拡大した中国に次ぐ2位となった。

「供給源の多角化」「緊急時の備え」を大臣が発信

赤澤経済産業相は閣僚級セッションの冒頭で、中東情勢を踏まえたエネルギー安定供給確保の教訓を念頭に、「供給源の多角化」「市場の多角化・拡大」「緊急時の備え」の3点の重要性を訴えた。

会議は今回で15回目、経産省と国際エネルギー機関(IEA)の共催は4度目になる。テーマは「将来に向けたLNGの推進『強靭性と信頼性』」で、対面の参加者は約340人、参加国は20か国にのぼった。両者がまとめた共同議長サマリーは、最近の中東における危機が「エネルギー安全保障が依然としてエネルギー政策の中心的な柱であること」を改めて示したとし、市場流動性の向上、供給源の多角化と投資の確保、供給途絶への対応能力の向上、メタン排出の管理を含む温室効果ガス削減の4点を重要な措置として挙げた。

原油の側では、首相が次の臨時国会に原油調達多角化の法案、臨時国会に提出へ 高市首相が会見で表明 原油輸入の94.7%が中東から、ホルムズ海峡は「自由で安全な航行が困難」と表明しており、多角化を法律の形で進める動きも出ている。

供給源をめぐる環境は動いている。ロシアは2024年度のLNG輸入の8.6%を占めるが、米国では対ロシア制裁法が成立し、ロシア産ガスの購入に関税を課す枠組みが整えられた。日本とマレーシアの間では、日銀が第三次の通貨スワップ契約を結ぶなど、エネルギー以外の分野でも実務的な結びつきが重ねられている。

モンテネグロとも覚書、IEA事務局長とも会談

会議に合わせ、日本政府とモンテネグロ政府はエネルギー分野の協力覚書を結んだ。LNG受入基地の整備の検討、LNGサプライチェーンの構築、天然ガスインフラの整備、ガス火力発電、エネルギー安全保障の強化に加え、高効率発電技術や送配電インフラなど電力分野での協力も対象に含む。赤澤経済産業相はモンテネグロのアドミル・シャフマノヴィッチ・エネルギー鉱業相と会談し、両国の経済協力を深める重要性を確認した。

赤澤経済産業相は14日にはIEAのファティ・ビロル事務局長とも会談している。経産省によると、大臣は中東情勢を受けた「パワー・アジア」「パワーGX」の取り組みを説明し、国際エネルギー市場の安定化に向けたIEAの指導力に期待を示した。ビロル事務局長からは、アジアにおける日本の指導力への謝意と評価が示されたという。共同議長サマリーの全文は、LNG産消会議2026のウェブサイトで公表されている。