全国知事会は11日、新たに設けた「コンテンツ産業創出・振興プロジェクトチーム」の第1回会議をオンラインで開いた。リーダーは山本一太・群馬県知事が務め、41都道府県の知事や担当課長らが出席した。映画やアニメ、マンガ、ゲーム、音楽といったコンテンツ産業を地方の成長産業に育てるため、国に支援を求める提言をまとめる。
単独では限界、という問題意識から
プロジェクトチーム(PT)は、知事会が特定のテーマごとに設ける臨時の検討組織だ。今回の設置趣旨には、人口減少と地域経済の縮小が進むなか、地域に雇用や交流、消費を生む成長産業が要るという認識が書かれている。コンテンツ産業を選んだ理由として、世界的に需要の拡大が見込まれ、観光や飲食など他産業への波及効果が大きい点を挙げた。
知事会が強調するのは、各都道府県が単独で取り組む限界だ。設置趣旨は、制作拠点の整備や人材育成、海外展開、地域との連携について「各都道府県が個別に取り組むには限界があり、国の支援が不可欠である」と明記している。会議の事務局は群馬県が担う。
海外売上5.8兆円、鉄鋼や半導体を上回る規模に
チームが課題認識として示した数字は、この産業の位置づけが変わったことを物語る。日本発のコンテンツの海外売上高は、この10年で約3倍に伸び、2023年には約5.8兆円に達した。知事会の資料は、これが半導体産業や鉄鋼産業の輸出額を超え、自動車産業に次ぐ規模だと説明している。
国も政策の柱に据えている。「新たなクールジャパン戦略」はコンテンツ産業を「基幹産業」と位置づけ、2033年の海外売上高を20兆円とする目標を掲げた。政府は日本成長戦略本部の重点戦略分野の一つにコンテンツ産業を入れ、地域未来戦略本部では地域ごとの産業クラスター(同じ分野の企業が集まる集積地)づくりを進めている。国の成長戦略と地方の取り組みを一体で回す仕組みが要る、というのがチームの出発点だ。
補助金の要件、入国手続き 現場の詰まりを4つに整理
会議には、都道府県を対象にした調査の結果も示された。回答は42団体。現場が挙げた詰まりを、知事会は「作品」「人」「制作拠点」「環境」の4つに整理した。
「作品」では、国内外の大型作品を地方に呼び込むインセンティブ(誘致のための優遇措置)が足りないと指摘した。国の補助金は製作費などの対象要件が高く、該当する作品が限られるという。対応策として、要件の引き下げや、地方への作品誘致を後押しする支援制度の新設、聖地巡礼を含むロケ地のプロモーション強化を挙げている。
「人」では、ロケ支援などの専門人材が不足し、クリエイターの所得や就業環境にも課題があるとした。学ぶ場と働く場が地域内でつながらず、人材が流出しているとの回答も出た。「制作拠点」では、先端的・大規模なスタジオが地方にないことを問題視し、スタジオの地方立地への財政支援や税制優遇を求めた。
「環境」で挙がったのは、海外作品の受け入れだ。海外のロケ隊について、入国・在留手続きに他国と比べて時間がかかると指摘し、他国に並ぶ手続き期間の設定と、自治体やフィルムコミッションと連携した受け入れ体制の強化を求めている。
講演はジャパン・フィルムコミッション理事長
会議では、特定非営利活動法人ジャパン・フィルムコミッションの小室裕一理事長が「コンテンツに係る自治体施策の課題と対応~国の施策を踏まえて~」と題して講演した。フィルムコミッションは、映画やドラマの撮影誘致と現場調整を担う地域の窓口組織を指す。
チームの検討テーマは、コンテンツ産業の誘致支援、創出支援、人材育成支援、コンテンツを活用した地域活性化施策の支援の4つ。各都道府県の課題整理と取組事例の共有を進め、国への提言・要望につなげる。示された活動スケジュール案では、令和8年度から9年度にかけて会議を重ね、提言案を各都道府県に照会したうえで、知事会議で提言を決議する段取りが描かれている。
