政府は9月15日、首相官邸で第13回人身取引対策推進会議を開き、「人身取引対策行動計画2026」の案と、2025年の取り組み状況をまとめた年次報告の案を議論した。会議をまとめた木原官房長官は、人身取引について「重大な人権侵害であり、人道的な観点からも迅速・的確な対応が必要となってまいります」と述べ、関係閣僚に対策の推進を求めた。行動計画は2022年に定めた前回計画の改定にあたり、決定は犯罪対策閣僚会議が行う。

保護された78人のうち66人が日本人

内閣官房が示した年次報告案によると、2025年に人身取引の被害者として保護されたのは78人で、前年の66人から12人増えた。国籍別では日本人が66人、外国人が12人。性別は女性が69人、男性が9人で、年齢では18歳未満の児童が53人と全体の3分の2を占めた。

木原長官は「近年、日本人が人身取引の被害者となる事案の事例や割合が増えております」と指摘した。人身取引と聞いて連想されやすい「外国から連れてこられた外国人」という構図は、数字の上ではすでに主流ではない。政府が計画案で性的搾取への対策を厚くしたのは、この変化を受けたものだ。

検挙は97件から142件へ

被疑者の摘発も増えている。2025年の検挙は142件で、前年の97件から45件増えた。検挙人員は78人で、前年の58人から20人増。国籍は日本人が77人、外国人が1人だった。このうち62人が起訴され、47人の有罪が確定し、13人は公判が続いている。2人は家庭裁判所に送致された。

悪質ホストクラブと売買春の規制

行動計画2026案は、性的搾取を目的とした人身取引を防ぐ柱として、悪質ホストクラブ対策の推進と、いわゆるアダルトビデオ出演被害の防止・救済を掲げた。木原長官は悪質ホストクラブを「人身取引事案を惹起することもある」と位置づけている。ホストクラブをめぐっては、罰則を強化した改正風俗営業法が2025年6月に施行され、年次報告案はその厳格な運用を進めたとしている。

計画案はさらに踏み込み、罰則強化の検討として「近時の社会情勢等を踏まえた売買春に係る規制の在り方について必要な検討を進める」と明記した。日本の売買春規制の中心にあるのは1956年に制定された売春防止法で、その枠組みに手を入れる可能性を政府文書が示した形になる。児童が被害者となる人身取引を防ぐため、児童福祉法の関係規定を重くする可能性も検討対象に挙げた。

外国人の受け入れ制度も対象

労働搾取を目的とした人身取引の防止では、特定技能制度のさらなる適正化と、技能実習制度に代わる育成就労制度の創設を並べた。育成就労は2027年4月の運用開始が予定されており、監理支援機関の許可要件や、外国人が母国の送出機関に支払う費用の上限を定める省令が2025年9月に公布されている。送出国との二国間取決めは2025年にフィジーが加わり、17か国となった。

入国管理では電子査証の導入拡大と旅券の偽変造対策の強化、被害の掘り起こしでは外国人がSNSを使って相談できる窓口の設置、被害者支援では男性被害者に対する一時保護・援助の拡充を盛り込んだ。木原長官は関係大臣に対し、実態把握の徹底、入国・在留管理を通じた防止、被害者の認知と保護、国内外での取り締まりの徹底、アジア諸国との連携強化に「万全を期し、政府一体となった人身取引対策を更に推進していただくようにお願いをいたします」と求めた。