金融庁は9月30日、株式などの「高速取引行為」について、2026年1〜6月の動向をまとめた資料を公表した。高速取引を業として行うために登録が必要な「高速取引行為者」は、2026年6月末時点で52者。この半年のあいだに新たに1社が登録し、2者が廃業した。
資料によると、東京証券取引所に上場する株式(2026年6月末時点で4,437銘柄)では、2026年6月に出された新規の売買注文26億8800万件のうち、高速取引業者らによるものが22億4600万件で、全体の84%を占めた。取消注文は全体19億1600万件のうち17億3000万件で90%にのぼる。
高速取引行為とは プログラムが自動で注文を出す取引
高速取引行為は、金融商品取引法第2条第41項に定められた行為を指す。金融庁が公表している「高速取引行為者向けの監督指針」は、その中身を「金融商品に係る取引の発注や変更、取消し等をアルゴリズムを用いて高速かつ自動的に行う取引」と説明している。人間が画面を見て注文を出すのではなく、あらかじめ組んだプログラムが市場の値動きを読んで、1秒に何百回という速さで注文を出したり取り消したりする。
金融庁は資料の中で、高速取引業者らの取引を四つの戦略に分けている。売りと買いの両方の注文を市場に出し、ほかの投資家の取引相手になることで売値と買値の差額を稼ぐ「マーケットメイク戦略」、値動きが連動する複数の銘柄の価格差や、同じ商品の市場間の価格差に目をつけて裁定取引を行う「アービトラージ戦略」、近い将来の値動きを予測して利益を得る「ディレクショナル戦略」、そしてそのいずれにも当てはまらない「その他の戦略」である。
登録業者は2018年の6者から52者へ
高速取引への登録制は、2017年5月の金融商品取引法改正で導入され、2018年4月に施行された。金融庁が公表しているデータをたどると、制度が始まった2018年6月末の登録者数は6者にすぎなかったが、同年12月末には10者、2019年12月末には55者まで一気に増えた。その後は2021年12月末52者、2023年12月末51者、2025年12月末53者と、おおむね50者台前半で推移している。これまでの最多は55者で、2019年10月から2021年4月にかけて断続的にこの水準をつけたほか、直近では2025年6月にも並んだ。
金融庁がこの数字を半年ごとに公表するようになったのは2021年6月30日からで、2023年12月末時点までは3か月ごとに更新していた。
出した注文の大半は取り消される
今回の資料で目を引くのは、注文の数と、実際に売買が成立した数との差である。2026年6月、東証の株式で高速取引業者らが出した新規注文は22億4600万件だったのに対し、同じ月に出した取消注文は17億3000万件、売買が成立した約定件数は1億4200万件だった。約定件数に占める高速取引業者らの割合は39%で、注文件数の84%とは大きく開く。売買代金で見た割合も38%である。
売買代金に占める割合は、数え始めた2019年11月が36%、新型コロナウイルスで相場が荒れた2020年3月に43%まで上がり、直近では2025年6月の32%が最も低い。おおむね3割台後半で動いており、注文件数ほど大きくは振れていない。
注文がどこから出ているかも分かる。取引所の売買システムのすぐ近くに自分のサーバーを置く「コロケーション」を経由した高速取引業者らの注文が、2026年6月の注文件数全体の84%を占めた。コロケーションを使わない高速取引業者らの注文は1%に満たない。速さを争う取引であるため、物理的な距離まで詰めていることが数字に表れている。
先物やオプションでは比重がさらに大きい
大阪取引所で売買される先物・オプション(有価証券オプションを除く。2026年6月末時点で55商品)では、高速取引の比重は株式より大きい。2026年6月の新規注文は全体40億5500万件のうち40億2400万件が高速取引業者らのもので99%、取消注文は40億1900万件のうち40億100万件でほぼ全てを占めた。約定件数でも69%、売買代金では41%だった。
商品ごとの差は大きい。2026年1〜6月の売買代金に占める割合は、長期国債先物(現金決済型ミニ)が98%と最も高く、ミニTOPIX先物78%、日経225マイクロ先物72%、金ミニ先物65%、日経225mini 62%と続く。一方で米ドル/日本円先物は11%、TOPIXオプションは7%、東証REIT指数先物は3%にとどまり、TONA3か月金利先物やとうもろこし先物のように高速取引業者らの売買代金が0%の商品もある。取引の量が多く値動きの速い商品に集中している。
金融庁が数え続ける理由
金融庁が高速取引の実態をこうして定期的に数えているのは、この取引に利点と懸念の両方が指摘されているためだ。監督指針は、高速取引の存在によって市場に流動性が供給されているという指摘や、流動性が厚くなることで売値と買値の差が縮まり一般の投資家にも恩恵が及んでいるという指摘があるとしたうえで、市場の安定性や効率性、投資家間の公平性、中長期的な企業価値に基づく価格形成、システムの脆弱性などについてさまざまな懸念が示されたと記している。登録制はこうした懸念を踏まえて導入されたものだ。
高速取引行為者は、この監督指針に基づいて金融庁の監督を受ける。監督指針は随時改正されており、金融機関のシステム障害報告をめぐっては金融機関の障害報告、10月1日から共通様式へ サイバー攻撃によらないシステム障害も同じ用紙で 監督指針など17本を一括改正のとおり、2026年10月1日から報告様式が統一された。金融庁は2026事務年度の金融行政方針でも市場のリスクの集中に目を配る姿勢を示しており、金融庁、データセンター向け融資を重点監視へ 2026事務年度の金融行政方針 国内不動産・大口与信と並べ集中リスクを点検で示した重点分野と同じく、どこに取引が偏っているかを継続して把握する構えだ。
次の更新は2026年7〜12月分となる見込みで、資料のもとになった数値は金融庁がCSV形式でも公開している。
