金融庁は9月16日、金融審議会に新設した「成長企業への資金供給の在り方等に関するワーキング・グループ」の第1回会合を開いた。企業向けの融資に一律にかかっている貸金業法の規制を、借り手や貸付けの性質に応じて緩められないかを検討する。日本で銀行免許を持たない外国銀行が、大型M&A(企業の合併・買収)に伴うシンジケートローン(協調融資)に加われるようにする制度が柱の一つになる。政府は次期通常国会への法案提出を目指している。

大臣が求めたのは「規制の柔構造化」

諮問は8月31日付で、金融担当相の片山さつき氏から金融審議会会長の神作裕之・学習院大教授に出された。金融庁設置法第7条第1項第1号に基づくもので、文面は「事業者向け貸付けに係る貸金業の規制の柔構造化等について検討を行うこと」と記している。7月21日に閣議決定した「日本成長戦略」が掲げる17の戦略分野への成長投資と、日本企業の事業再構築・再編を支える資金の循環をつくるのが狙いだという。

「柔構造化」とは、一律にかけている規制を、借り手の属性や貸付けの態様に応じて強弱を付ける形に組み替えることを指す。現行の貸金業法は個人向けか事業者向けかを問わず、参入・与信・書面交付の各規制をほぼ同じようにかけている。

座長には山本和彦・中央大法務研究科教授が就いた。委員は弁護士や大学教授、金融機関の実務家ら13人。日本貸金業協会、全国銀行協会、国際銀行協会、Fintech協会、日本プライベート・エクイティ協会、日本労働組合総連合会、消費者庁、法務省がオブザーバーとして加わる。初回は全銀協と国際銀行協会からヒアリングを行った。

免許のない外国銀行を協調融資に呼び込めるか

事務局が示した検討の具体例は三つある。

一つ目は、事業再編に取り組む大企業への貸付けなど、いわば「プロ向け」と言うべき貸付けについて、現行の規制が貸し手・借り手双方の実務に見合っているかという論点だ。二つ目が、海外企業との大型M&Aに伴う外貨建ての資金需要に応えるため、日本で銀行免許を持たない外国銀行などをシンジケートローンに参加させる制度である。三つ目は、ノンバンクが社債で資金を調達する際に資本金10億円以上などを求めるノンバンク社債法の要件の在り方となる。

シンジケートローンは、幹事役(アレンジャー)の金融機関が借り手と金利や返済期間を決め、参加する貸し手を募る融資形態だ。参加した貸し手は融資の実行にだけ加わり、その後の元利金の受け払いは幹事役が各貸し手の代理人としてまとめて行う。役割は契約上も明確になっている。

ところが日本で貸付けを業として行うには貸金業の登録が要る。登録には営業所等を置くことが前提で、最低純資産5,000万円以上、貸付業務に3年以上携わった経験を持つ役員の配置、営業所ごとに貸付業務1年以上の経験者を常勤で1人以上置くこと、3年ごとの登録更新といった条件が課される。国内に拠点を持たず、融資の実行だけに加わろうとする海外の銀行や機関投資家には重い。金融庁は日本市場に関心を持ちながら国内営業拠点を置いていない外国勢を、この枠組みに呼び込みたい考えだ。

ノンバンクの事業者向け残高は米国の28分の1

日本の企業向け融資は、銀行など預金取扱金融機関に大きく偏っている。金融庁が日本銀行の統計などからまとめたところでは、預金取扱金融機関の非金融法人企業向け貸付残高は2012年の249兆円から増え続け、2025年は413兆円になった。これに対し貸金業者の事業者向け貸出残高(関係会社向けを除く)は2012年の5兆円から2025年の8兆円と、ほぼ横ばいで推移している。

比較対象に挙がったのが米国のプライベートクレジットだ。銀行を介さずファンドなどが企業へ直接融資する市場を指し、米連邦準備制度理事会(FRB)の集計では残高が2025年に1兆4,490億ドルに達した。1ドル=155円で換算すると約225兆円で、日本の貸金業者の事業者向け残高のおよそ28倍にあたる。

資金需要の側は膨らんでいる。レコフデータの集計を基に金融庁がまとめた数字では、2025年の日本企業のM&Aは5,115件で前年比8.8%増、金額は37.9兆円で86.7%増と、件数・金額ともに過去最高を更新した。日本企業同士の案件は4,086件・13.6兆円、日本企業による外国企業の買収は657件・18.2兆円である。大型の買収では、通常の融資(シニアローン)に加えて劣後ローンなどのメザニン、出資を組み合わせる必要があり、資金の出し手を銀行だけでまかないきれなくなっている。

消費者向けの枠組みには手を付けない

貸金業法は2006年の改正で、個人の借入総額を年収などの3分の1までに抑える総量規制と、上限金利の引き下げが導入された経緯を持つ。多重債務の抑制には効いており、貸金業者から3件以上の借り入れがある人は2007年3月末の443万人から2025年3月末の147万人へ減った。業者への行政処分件数も2005年度の1,596件から2024年度は4件になっている。

今回の検討はこの消費者向けの枠組みには手を付けず、事業者向けの貸付けに限る。多重債務対策は、金融庁が別に設けている「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」で引き続き議論する。

あわせて、契約の締結前後に書面を交付する義務や、営業所ごとに貸付条件を掲示する義務といった、紙と店舗を前提にした規制も見直しの対象になる。日本貸金業協会が大手消費者金融4社に2026年3月時点で聞き取ったところ、消費者向け貸付けでウェブだけで完結する契約は96.4%を占め、そのすべてで電子的な方法による情報提供が行われていた。

政府は7月21日に決めた「成長投資を促進するための金融戦略」で、これらの制度について検討し、次期通常国会への法案提出を目指すと明記している。