金融庁は9月25日、「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」を立ち上げると発表した。AIやブロックチェーンなどの技術が進んで金融取引の仕組みが変わる中、ブロックチェーン技術を基盤とする「オンチェーン金融」の社会実装と、金融機関などでのAIの健全な利活用を進めるため、関係省庁とともに横断的に検討する場とする。第1回は9月30日14時から15時まで、中央合同庁舎第7号館13階の共用第1特別会議室で開く。担当は資産運用・保険監督局の暗号資産・ステーブルコイン課デジタル決済企画室。

議事は「関係省庁等報告」と「討議」

初会合の議事は開会、関係省庁等報告、討議、閉会の4つで、金融庁は一般傍聴を受け付けないとしている。議事概要は会議後に金融庁のウェブサイトで公表する。

フォーラムの下には2つの研究会を置く。1つは「環境整備に係る研究会」(デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会)で、さまざまな資産のトークン化、ステーブルコイン、DEX・DeFiやウォレット提供業者について、制度の在り方を点検・検討する。DEXは分散型取引所、DeFiは分散型金融の略で、いずれも運営主体を置かずにプログラムで取引を成立させる仕組みを指す。

もう1つが「AI等の健全な利活用に係る研究会」(AI等の健全な利活用の推進に関する研究会)で、金融機関におけるAI等の健全な利活用、AIの浸透に応じた市場・金融機関の監督の在り方、量子コンピュータによる危殆化リスクの把握を扱う。危殆化リスクとは、計算能力の向上で現在の暗号が破られ、安全性が損なわれることを指す。ブロックチェーンは暗号技術で取引の正しさを担保しているため、暗号が破られると基盤そのものが揺らぐ。

「AIが自ら買う」時代の決済を想定

フォーラムの根拠は、金融庁が7月21日に公表した「成長投資を促進するための金融戦略」である。この文書は、AIエージェントが自律的に経済活動を遂行する「エージェンティックコマース」の時代には、商取引が言語や時差に関係なく行われるようになり、決済もこれに対応することが求められると指摘した。人が画面を操作して支払うのではなく、AIが人の代わりに発注し支払う場面を想定している。AIに取引を任せる場面をめぐっては、民間でもビザ・マスターカードとアント、AIエージェントの身元確認で協業 代行して買うAIを見分ける共通ルールへ 2030年に最大5兆ドル取引の予測のように、代行するAIを見分ける仕組みづくりが進んでいる。

金融戦略は、日本の決済基盤がこうした変化に対応できない場合、海外の決済基盤への依存が強まり、日本の競争力低下や経済安全保障上のリスクを高めるおそれがあるとした。そのうえでAI時代の決済に必要な要素として、「24時間365日連続稼働」「商流・物流と繋がるプログラマビリティ」「決済基盤として信頼される安定性・安全性」の3つを挙げ、オンチェーン金融の推進と既存の金融インフラ(オフチェーン金融)とのベストミックスが鍵になるとしている。プログラマビリティは、条件を満たしたときに自動で送金するなど、決済に処理の手順を組み込めることを指す。

AIの高度化と不正防止に向けては、本人の真正性を担保する基盤の在り方も検討課題に挙がった。具体例として、VC(verifiable credential=検証可能な資格証明)の利用可能性が示されている。AIが取引に関わるときの責任分担については、経産省、AI契約の「現場で困っている事例」を募集 10月30日まで 誤出力の責任やAIエージェントの取引も論点にのとおり、経済産業省も契約実務の面から事例集めを始めている。

日銀・デジタル庁・財務省の宿題も並ぶ

フォーラムは関係省庁等の取り組み状況をフォローアップする役割も担う。金融戦略は、日本銀行が日銀当座預金のオンチェーン対応について年内に論点整理と実現への道筋の検討状況を取りまとめること、デジタル庁がステーブルコインやトークン化預金を公金給付に活用できるか検討を進めること、内閣官房デジタル行財政改革会議事務局がステーブルコインを金銭に準じて使えるかについて諸法令の取扱いを整理・明確化すること、財務省が国債等のトークン化対応と元利払いのオンチェーン決済を検討することを、それぞれ挙げている。業界団体には、トークン化預金などが物流・商流とデータ連携する時代の銀行業務の在り方を検討するよう求めた。

国際面では、円建てステーブルコインが海外でも使われるために他通貨建てとの互換性確保が重要だとして、価値の保全や償還ルールをめぐる各国の規制・監督のイコールフッティング確立に向けた当局間対話を行うとした。クロスボーダー送金の高度化については、アジアとの官民政策対話の枠組みを新たに設ける。実証面では、既存の決済高度化プロジェクト(PIP)で実証実験の支援を続けながら、オンチェーン決済の活用場面を貿易決済などへ広げる。

金融戦略は、フォーラムでの検討を経てまず2027年初に中間整理をまとめるとしている。あわせて、金融庁が民間の資金決済全体の在り方について主導的な役割を果たせるよう、組織の拡充も検討するとした。