農林水産省は11日、国産の農畜水産物に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)の令和7年度の実態調査と試験研究の結果を公表した。令和6年度分と合わせた37品目から取り込むPFOSとPFOAの量は、平均的な食生活では国が定める耐容一日摂取量の1%に満たなかった。PFASを比較的高い濃度で含む農地の土壌で野菜を育てても、食べる部分への移行は限定的だった。
平均的な食生活で耐容量の0.65%と0.45%
調査は、国内で流通している農畜水産物29品目を対象に、PFOS、PFOA、PFHxS、PFNAの4種類のPFASの含有実態を調べた。内訳は農産物13品目(小麦、大豆、ダイコン、ニンジン、サトイモ、ホウレンソウ、ハクサイ、ブロッコリー、タマネギ、キュウリ、ナス、リンゴ、ミカン)、畜産物5品目(牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳)、水産物11品目(マサバ、マダイ、ギンザケ、クロマグロ、ブリ、ニジマス、マゴイ、アユ、ホタテガイ、マガキ、ワカメ加工品)である。
農産物13品目は、4種類のPFASのすべての試料が定量下限値未満か、検出されても低い濃度だった。畜産物5品目も多くの試料が同様だったが、定量下限値以上が検出された分子種では品目によって濃度に大きな幅が見られた。水産物11品目では4種類のいずれかが検出され、こちらも品目ごとの幅が大きかった。
農水省は令和6年度と7年度に調べた計37品目について、各品目の濃度の中央値と一日当たりの平均消費量から摂取量を計算した。この37品目は、消費量で食品全体の約5割、生産量ベースでは約8割を占める。その結果、平均的な食生活では一日当たり体重1キロあたりPFOSが0.13ナノグラム、PFOAが0.09ナノグラムとなった。内閣府食品安全委員会が定める耐容一日摂取量(TDI、いずれも20ナノグラム)に対し、それぞれ0.65%、0.45%にあたる。
調査した品目すべてについて、最も濃度が高かったものだけを一生食べ続けるという極端な仮定を置いた場合でも、PFOSで1.5ナノグラム(TDIの7.6%)、PFOAで0.45ナノグラム(同2.2%)にとどまった。
地下水から検出された5地域の農産物も低濃度
農水省は、自治体や農業者の協力を得て、河川水や地下水からPFOSとPFOAの合計が指針値(1リットル当たり50ナノグラム)を超えて検出された5地域の農産物も調べた。ニンジンやホウレンソウなどが対象で、すべての試料のPFOS、PFOA、PFHxS、PFNAは定量下限値未満か、検出されても低い濃度だった。
あわせて実施した試験研究では、指針値を超える濃度が検出された河川水・地下水から水を引いている農地で、バレイショ、キャベツ、ダイコン、ニンジン、ホウレンソウを栽培した。土壌中のPFAS濃度が比較的高く、土の性質も異なる2つのほ場で試験したにもかかわらず、食べる部分のPFOS・PFOA濃度は一般の流通品と同程度の水準だった。農水省は「農地土壌から農産物への移行、蓄積は限定的」と結論づけている。
そもそもPFASとは何か
PFASは、炭素の鎖にフッ素原子が結びついた構造を持つ有機フッ素化合物の総称で、1万種類以上あるとされる。水や油をはじき熱に強いため、泡消火剤やフライパンの表面加工、防水加工などに幅広く使われてきた。一方で自然界で分解されにくく「永遠の化学物質」とも呼ばれ、代表的なPFOSとPFOAは国内でも製造・輸入が原則禁止されている。
各地の河川水や地下水から検出される例が相次いだことで、飲み水だけでなく食品を通じた摂取への関心が高まった。今回の調査は、その食品側の実態を数字で押さえるために続けられているものだ。
食品安全委員会は令和6年6月、みずから選んだテーマとして評価を行い、PFOSとPFOAのTDIをそれぞれ体重1キロ当たり20ナノグラムと定めた。米国や欧州は人を対象にした疫学研究の結果を根拠にしているが、同委員会は結果の一貫性に課題があるとして、動物試験に基づく設定が妥当と判断した経緯がある。国際的に評価がそろっているわけではない点は、数字を読むうえでの前提になる。
令和8年度は調査品目を広げる
農水省は令和8年度も、国内で生産量が多い未調査の品目に対象を広げて含有実態の調査を続ける。特異的に高い値が出た試料については、蓄積の要因などを調べる。農産物への移行・蓄積に関する試験研究も継続する。
消費者向けには、令和6年度と7年度の結果から、通常の食生活での国産農畜水産物からのPFOS・PFOAの摂取量はTDIと比べて十分に少ない水準にあるとしたうえで、「国内の様々な産地で収穫、水揚げされた様々な品目をバランスよく食べることが重要」との見解を示した。PFASが農畜水産物に及ぼす影響はまだ知見が十分ではないとして、調査結果の公表を通じた情報発信を続けるとしている。
