中部電力は9月10日、家庭向けなどの電気料金のもとになる原価の算定に誤りがあり、2024年4月分から料金を過大に受け取っていたと発表した。返金の総額は12億円程度になる見込みだ。経済産業省は同日、小売事業を担う中部電力ミライズに対し、電気事業法に基づいて事実関係などの報告を求めた。
3年分の原価を27億円多く見積もった
誤りがあったのは、2024年2月6日に国へ提出した「特定小売供給約款」の変更届出だ。特定小売供給約款は、電力自由化のあとも規制が残る家庭向けの料金メニューで、定額電灯や従量電灯A・B・Cなど計11種別がこれにあたる。
このとき同社は、2024年4月に導入された「発電側課金」に伴って3年分の原価がどれだけ変わるかを見積もった。発電側課金は、送配電網の費用の一部を電気を送り出す発電側にも求める制度だ。同社の算定は3年合計で「+501億円」だったが、正しくは「+474億円」で、27億円を多く見込んでいた。原因は「月間割引額の年額換算漏れなど」だという。
原価が過大なら、そこから導かれる料金単価も高くなる。多く見積もった27億円のうち、実際に利用者から受け取りすぎた分が12億円程度にあたる。
1件あたりは月10円、最大152円
対象は、2024年4月1日以降に特定小売供給約款で契約している利用者で、2026年8月時点の契約口数は500.9万件にのぼる。
1件あたりの精算額は月額で最大152円、最小0円、家庭の平均モデルで10円だと同社は示した。金額としては小さいが、期間は長い。家庭の平均モデルの月10円が2024年4月から2026年8月までの29か月続いたとすれば、1件あたりの返金は約290円になる計算だ。
同社は「誤った原価に基づく料金単価を速やかに正しい料金単価に是正し、過大にご負担いただいた電気料金をご返還するための対応を可能な限り早期に実施」するとしている。返金の具体的な方法は、中部電力ミライズが決まりしだい改めて公表する。
2024年1月に気づきながら、2年半動かなかった
今回の発表で重いのは、誤りを2年以上放置していた点だ。同社の説明によると、2024年1月には社内で原価に一部の算定誤りがあることが発覚していた。ところが「重大な誤りであると役職者が認識できず、是正に向けた対応が取られなかった」。
誤りが表に出たのは2026年6月だった。将来の約款変更届出に向けて当時の原価算定を見直していて、ようやく気づいたという。
同社は原因として、算定者・審査者の知識や経験が不足し、制度への理解も十分でなく審査機能が働かなかったこと、そして「お客さまにご迷惑をおかけすることに対する意識の低さ」と重大事象が起きたときの判断ルールの不備を挙げている。再発防止策としては、業務に精通した要員の応援などで体制を質・量の両面で担保し、影響額や影響範囲にかかわらず主管部門長への報告を必須にする。
国が電気事業法に基づき報告を要求
経済産業省の動きは速かった。中部電力ミライズは9月10日、経済産業大臣から電気事業法第106条第3項に基づく報告徴収を受けたと発表している。報告徴収は、国が電気事業者に業務の状況について報告を求める行政上の手続きだ。
求められたのは、本事案に関する事実関係および経緯、需要家への対応方針および対応状況、本事案の原因および実効的な再発防止策の3点。同社は「本事案により、お客さまをはじめとする関係者の皆さまにご迷惑をおかけすることを深くお詫び申し上げます」とし、「今後、報告徴収に適切に対応してまいります」とコメントした。
利用者にとっての次の節目は、返金の方法と時期がいつ示されるかだ。中部電力ミライズが具体策を決めしだい公表する。
