金融庁は9月18日、投資信託と外貨建保険の「共通KPI(主要業績評価指標)」の分析結果を公表した。2026年3月末を基準日として報告のあった金融事業者244者を単純平均すると、投資信託を保有する顧客のうち、買ったとき以降の運用損益がプラス(0%以上)だった人の割合は85.5%だった。2025年3月末を基準日とした前回は243者の平均で71.5%で、7割強から9割弱の水準へ上がった。

共通KPIは、金融事業者が顧客の立場に立った商品販売をしているかを利用者が比べられるようにするため、金融庁が統一した定義で公表を求めている指標だ。今回の分析で使う「運用損益別顧客比率」は、基準日に投資信託を持っている一人ひとりについて、買ったとき以降の損益を計算し、全顧客を100%としたときの分布を示す。含み益と、すでに受け取った分配金や売却代金を合わせ、買い付けにかかった手数料込みの金額を差し引いて算出する。

すべての業態で上がり、差も縮まった

業態別に見ると、主要行等(15者)は78.3%から87.0%、地域銀行(90者)は72.5%から86.3%、信用金庫などの協同組織金融機関等(47者)は67.4%から87.8%、証券会社(71者)は70.1%から82.0%、運用会社が自ら売る投資運用業者(7者)は81.2%から89.9%、保険会社やIFA(独立系金融アドバイザー)などその他(14者)は74.1%から87.3%へ、いずれも上昇した。

注目されるのは、業態ごとの開きが小さくなったことだ。2025年3月末基準では最も低い協同組織金融機関等の67.4%と最も高い投資運用業者の81.2%で差があったが、2026年3月末基準では最も低い証券会社の82.0%と最も高い投資運用業者の89.9%になった。金融庁は分析資料に、参考として日経平均株価やS&P500などの主要株価指数、主要国の長期金利、為替相場の推移を並べている。

会社ごとの開きは残る

平均が9割に近づいた一方、個社ごとの数字にはなお幅がある。主要行等ではみずほ信託銀行が95.9%で最も高く、三井住友信託銀行が91.7%、りそな銀行と三井住友銀行が91.2%と続く。地域銀行ではきらぼし銀行の96.2%が最も高い。自社で直接販売する投資運用業者は上位が目立ち、コモンズ投信が98.5%、鎌倉投信が98.3%、セゾン投信が97.6%だった。

これに対し、証券会社では香川証券と京銀証券が56.9%、ぐんぎん証券が60.2%と、全業態平均の85.5%を大きく下回る先もある。金融庁は資料の注記で、この比率は各社が投資信託を取り扱い始めた時期や顧客数、顧客が持つ銘柄によって変わりうるとし、取り扱いを始めて間もない場合や顧客数が極端に少ない場合には数字が大きく振れることがあると断っている。会社の優劣をそのまま示す数字ではない。

リターンは下がり、コストの下げ幅を上回った

もう一つの指標である預り残高上位20銘柄の分析では、様子が異なる。金融庁によると、2026年3月末時点は前年に比べて過去5年間のリターンが低下し、コストは小幅に下がり、リスクは小幅に上がった。リターンの低下幅がコストの低下幅を上回ったため、コストに対するリターンの比率も、値動きの大きさに対するリターンの比率も、ともに下がった。ここでのコストは販売手数料率(税込)の5分の1と信託報酬率(税込)を足したもの、リスクは過去5年間の月次の値動きのばらつきを年率に直したものを指す。

外貨建保険についても同じ日に分析が公表された。運用損益がプラスの顧客の割合は、2025年3月末基準の155者平均で65.0%、2026年3月末基準の140者平均で84.7%だった。業態別では主要行等が68.5%から88.7%、地域銀行が64.5%から84.1%、証券会社が62.1%から79.3%に上がっている。

あわせて公表された「金融事業者リスト」には、顧客本位の業務運営に関する原則を採択して取組方針を公表した1,476者が載った。このうち979者が今回追加または更新された事業者で、次回の掲載希望の受け付けは2027年1月8日午後5時が締め切りとなる。