総務省は9月15日、令和8年台風第24号および前線による大雨で被害を受けた名古屋市に対し、11月に定例交付する予定だった普通交付税の一部1億6100万円を繰り上げて交付すると決定した。地方交付税法16条2項に基づく措置で、現金の交付は16日に行う。対象は愛知県名古屋市の1市のみだ。

交付の時期を前に倒して資金繰りを支える

普通交付税は、地方自治体の間の財源の偏りをならすために国が配る使い道の自由な財源で、通常は4月、6月、9月、11月の年4回に分けて交付される。災害で多額の支出が急に必要になった自治体は、復旧費を立て替える現金がその場で足りなくなる。そこで総務省は、11月分の一部を数か月前倒しで渡し、自治体の資金繰りが回るようにする。交付する額は11月定例交付額の30%と決まっており、名古屋市の1億6100万円から逆算すると、同市の11月定例交付額は約5億4000万円となる。

台風第24号と前線による大雨を理由とする繰上げ交付は、今回が初めてとなる。直前の2回は別の大雨が対象で、総務省は9月2日、8月27日からの大雨で被災した富山県の高岡市、氷見市、小矢部市、射水市と石川県の羽咋市、志賀町、宝達志水町、中能登町の8市町に計31億1000万円を決めた。翌3日には同じ大雨で福井県福井市に7億9100万円、永平寺町に2億7300万円の計10億6400万円を決めている。名古屋市の1億6100万円が北陸の各市町より小さいのは、もとになる普通交付税の交付額そのものが違うためで、被害の軽重を表す数字ではない。

1時間104.5ミリ、庄内川にレベル5の氾濫特別警報

国土交通省が9月11日午前8時時点でまとめた被害状況(第12報)によると、8日は西日本から東日本に停滞した前線の活動が活発になり、愛知県と岐阜県で線状降水帯が発生した。愛知県では8日の24時間雨量が200ミリを超え、9月のひと月分の平年の雨量に相当する量が1日で降った。特に8日夕方には、愛知県名古屋で1時間104.5ミリ、岐阜県多治見で93.0ミリを観測し、いずれも観測史上1位を更新している。

この大雨を受け、愛知県と岐阜県を流れる庄内川を対象に、8日午後6時20分から9日午前0時40分までレベル5の氾濫特別警報が発表された。支流の矢田川では水位が氾濫発生水位に到達したものの、国交省は調査の結果、川からあふれた氾濫ではなく、下水道などで排水しきれなかった内水による浸水と判断した。名古屋市が管理する2河川でも浸水が確認され、すでに解消している。市内の宮前ポンプ場では雨水用のポンプ6台のうち2台が浸水で機能を停止し、1台は応急復旧、もう1台は部品交換で対応する予定だ。

台風第24号と前線は、その前から各地に記録的な雨を降らせていた。鹿児島県の種子島・屋久島地方では4日夜から5日未明にかけて線状降水帯が相次いで発生し、5日の24時間雨量が450ミリを超えて観測史上1位を更新。7日には伊豆諸島北部の大島で550ミリ、新島で450ミリを超える24時間雨量を記録し、大島町、新島村、利島村にレベル5の土砂災害特別警報が出された。

半月で5回目の決定 熊本地震は616億円

繰上げ交付の決定は、この半月で5回目になる。総務省は8月31日、令和8年熊本地震で被災した熊本県と県内の10市9町1村の計21団体に616億円を、同じ日に7月17日から18日にかけての大雨で被害を受けた栃木県足利市に4億6500万円を、それぞれ繰り上げて交付すると決めた。いずれも9月2日に現金を渡している。9月に入ってからは北陸の8市町、福井県の2市町、そして名古屋市と続いた。額が21団体で616億円から1市で1億6100万円まで開くのは、対象の数と、それぞれの自治体が11月に受け取る普通交付税の大きさが違うためだ。

決定から現金交付までの日程も短い。8月31日決定分は2日後、9月2日と3日の決定分は翌日、今回も15日の決定に対して16日の交付と、いずれも数日以内に現金が届く運用になっている。

繰り上げて渡すのはあくまで11月に払う分の一部であり、自治体が年間に受け取る普通交付税の総額が増えるわけではない。名古屋市が11月に受け取る額は、今回前倒しした1億6100万円だけ少なくなる。