日本の国旗「日の丸」を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」を新たに設ける法案が、衆議院を通過した。自民党や日本維新の会などが議員立法として提出し、6月30日の衆院本会議で、自民・維新などの賛成多数により可決された。参議院に送られ、そこでの審議が焦点となっている。
法案の内容
法案は、「人に著しく不快、嫌悪の情を催させる方法で公然と」国旗を損壊、除去、汚損した者を罰すると定めている。罰則は、2年以下の拘禁刑か、20万円以下の罰金だ。
対象には、国旗を傷つける行為をインターネットでライブ配信する場合も含まれる。一方で、傷つける様子を撮影してあとからSNSで拡散する行為や、アニメや映画といった創作物での表現は、処罰の対象から外している。
なぜ今「国旗損壊罪」なのか
背景には、現行法の「不均衡」がある。いまの刑法には、外国の国旗などを傷つけて、その国を侮辱する罪(外国国章損壊罪)は定められている。しかし、自国である日本の国旗を傷つける行為を直接罰する規定はない。
推進する議員らは、他国の国旗は守られるのに、日本の国旗は守られないのはおかしいとして、この「ねじれ」を正し、国旗への敬意を法律で示す必要があると主張している。
「国旗を壊す」ことは表現なのか
法案をめぐっては、「表現の自由を狭める」との慎重論もある。ただ、国旗を傷つける行為は、意見を述べることそのものとは性質が異なる。日の丸は、多くの国民が共有し、長く大切にしてきた国の象徴だ。それを公然と焼いたり汚したりする行為は、もはや主張の表明というより、人々が抱く思いを踏みにじる「暴力」に近い。
そもそも、政治的な主張があるのなら、言葉で語り、文章で訴え、デモや選挙で意思を示す手段はいくらでもある。国旗を壊さなければ表現できない主張などない。抗議のために国旗を損壊する必要はない――というのが、この法案の根底にある考え方だ。
賛否も「言論」で交わすべきだ
もっとも、法案の中身には、なお詰めるべき点も残る。「著しく不快」の線引きをどう明確にし、乱用を防ぐ歯止めをどう設けるか、といった論点だ。
だが、そうした反対や異論もまた、国旗を壊すという行為ではなく、あくまで言論――国会での論戦や、社会での自由な討論――を通じて交わされるべきものだ。衆院本会議の採決では、全ての野党が欠席したうえ、法案を共同提出した会派の一部や、自民党の岩屋毅・前外相も加わらないという異例の展開となった。しかし、欠席という形で議論から降りるのではなく、正面から言葉で賛否をぶつけ合うことこそ、国会に求められる姿だろう。参議院での審議が、その試金石となる。