政府は11日の閣議で、経済安全保障推進法に基づく基本方針と、分野ごとの基本指針5本を一括して決定・変更した。このうち「特定海外事業促進基本指針」と「調査研究基本指針」は今回が初めての決定で、6月に成立した改正法が新設した2つの制度を動かす土台となる。改正法の施行期日を定める政令も併せて決めた。
方針1本と指針5本を同じ日に
内閣府によると、今回決まったのは、制度全体の土台となる「基本方針」の一部変更と、「安定供給確保基本指針」(半導体や医薬品などの特定重要物資)、「特定社会基盤役務基本指針」(電力・通信など基幹インフラ)、「特定重要技術研究開発基本指針」の3本の一部変更、そして新規の「特定海外事業促進基本指針」「調査研究基本指針」の計6文書だ。
同法の基本指針は全部で6本あるが、特許の出願非公開に関する指針だけは2023年4月の決定のまま据え置かれた。改正法の施行を控え、運用の枠組みを1回の閣議でまとめて整えた形だ。
海外の港湾や通信設備、JBICが出融資
改正法は、同法に「第5章の2 特定海外事業の促進」を新たに設けた。条文によると、対象は海外で行う3種類の事業だ。(1)港湾など国際的な物資輸送に必要な施設・設備の整備や運用で、日本の国民生活や経済活動にとって重要な国際輸送網の強靱(きょうじん)化が図られるもの(2)日本国内の電力・通信といった基幹インフラ役務の提供に使われる設備のうち、海外に置かれるものの整備・運用で、供給能力の維持・強化や海外依存の低減につながるもの(3)基幹インフラの安定提供に重要な技術を使う施設・設備の整備・運用で、その事業がなければ将来その技術を海外に頼らざるを得なくなるおそれがあるもの――である。
事業者は目標、実施体制、必要な資金額と調達方法、情報管理の体制などを書いた計画をつくり、主務大臣の認定を受ける。認定されると、JBICが資金の貸し付け、貸付債権の譲り受け、債務保証、公社債などの取得、出資を行う。認定の要件には「特定海外事業に関する情報を適切に管理するための体制が整備されていること」が明記され、資金支援と情報管理をひとまとめにしたのが特徴だ。この章の主務大臣は内閣総理大臣と財務大臣と定められている。
条文は、対象となる事業を「日本の国民生活・経済活動にとって重要」「海外依存の低減」といった要件で絞り込んでいる。海外でのインフラ整備を一般に支援する制度ではなく、日本向けの物流や通信が途絶えるリスクを減らすという目的に用途を限定した建て付けになっている。
調査研究は経産研に 委託先に4つの要件
もう1本の新指針が支えるのは、政府自身の調べる力だ。改正法は、首相が経済安全保障に関する調査研究を行うと定め、独立行政法人経済産業研究所に業務の一部を行わせることができるとした。さらに、専門的な能力、内外の情報を集めて整理・保管する能力、内外の関係機関と連携する能力、情報の安全管理を的確に実施する能力――の4つの基準を満たす法人に、調査研究の一部を委託できる。関係省庁は、委託先の求めに応じて必要な情報や資料を提供できる。委託先の役職員らには守秘義務が課され、正当な理由なく秘密を漏らしたり盗用したりすることを禁じている。
施行日は政令の公布で確定
改正法(令和8年法律第38号)は6月10日に成立し、17日に公布された。施行は一度ではなく、公布日から2027年末までの間で段階的に行われる区分が設けられている。11日の閣議では、この施行日を定める政令のほか、内閣府本府組織令とJBIC法施行令の改正も決めており、具体的な施行日は政令が公布された時点で確定する。
