公正取引委員会は9月18日、沖電気工業(OKI)と日立製作所、日立チャネルソリューションズによるATM・営業店端末事業の統合について、排除措置命令を行わない旨を3社に通知した。審査の結果、ATMの主要部品では統合後のシェアが100%になり、独占状態が生まれると認定したうえで、3社が申し出た供給確約などの措置を講じることを前提に容認した。

部品から完成品まで、13の市場を切り出して審査

統合は、OKIがATMを含む自動化機器の開発・生産事業を吸収分割で日立チャネルソリューションズに承継させ、その後OKIが同社の株式の一部を取得して合弁会社にする、という二段構えの計画だ。合弁会社への出資比率はOKIが60%、日立製作所が40%になる。公取委が計画の届出を受理したのは8月20日で、第1次審査のまま1か月で結論を出した。

公取委は、ATMを「完成品」の一つの市場として見るのではなく、部品から順に切り分けて審査した。まずATMを構成するモジュールとして、紙幣入出金部、硬貨入出金部、通帳記帳部、カードリーダープリンタ、電源ユニットの5品目。次にそれらを組み立てて筐体に収めたATMハードウエア。さらに金融機関ごとの仕様に沿ったソフトウェアを載せたATM完成品。加えて、設置後のATMを遠隔で見張るATMの監視受託業も別の市場とした。銀行の窓口職員が使う営業店端末についても、制御装置・通帳伝票プリンタ・イメージスキャナの3品目と営業店端末システムを市場として画定している。いずれも地理的範囲は日本全国とした。

こうして切り出した市場ごとに、公取委は3つの型で影響を調べた。同じ商品を作る者どうしが一つになる「水平型」、部品の供給元と組み立て先のように取引の川上と川下の関係にある「垂直型」、そして製造と監視サービスのように隣り合う分野を抱え込む「混合型」である。

紙幣入出金部は他に作り手がいなくなる

水平型の審査で数字が突出したのが、紙幣入出金部と通帳記帳部だった。統合後の合算市場シェアは、いずれも100%。ほかに作る事業者がいなくなり、当事会社グループの独占になる。ATM完成品も合算で約65%に達し、公取委は「最も市場シェアが高い競争事業者との間のシェアの格差も大きい」と指摘した。営業店端末システムは約40%となる。

残るモジュールやATMハードウエアのシェアは「不明」としたが、競争する事業者の数が少ないうえ、その競争事業者自身がOKIや日立チャネルソリューションズからモジュールを買っている、という関係に公取委は着目した。仕入れ先が競争相手になる以上、値下げ圧力をかける力は働きにくい。

垂直型では「投入物閉鎖」への懸念を挙げた。モジュールはいったんATMハードウエアに組み込むと他社製に替えるのに相当の費用がかかり、供給を断たれた側は事業を続けられなくなる。混合型については、統合後にATMハードウエアを供給する主要メーカーが当事会社グループだけになるため、ATM監視サービスに必要な協力を拒めば、他の監視業者が市場から締め出されかねないとした。公取委はこれらすべてについて「競争を実質的に制限することとなるおそれが認められる」と結論づけている。

5年間、監視役を置いて履行を見張る

そこで3社が申し出たのが問題解消措置だ。柱は4つある。第一に、合弁会社の中で販売競争を保つため、価格などの競争機微情報へのアクセス制限や人事異動の制限を設ける。第二に、モジュール、ATMハードウエア、営業店端末の各デバイスについて、既存の取引先に正当な理由なく供給を拒まない「供給確約措置」を取る。第三に、ATM監視受託業者に必要な情報を開示する支援措置を講じる。

第四が履行の担保で、監視受託者(モニタリングトラスティ)を選び、これらの措置が守られているかを継続して監視させ、公取委へ定期的に報告させる。供給確約から監視までの措置は統合の実行日から5年間続き、4年が過ぎた時点で、さらに継続するかどうかを公取委と協議する。公取委は「これらの措置が講じられることを前提とすれば、競争を実質的に制限することとなるとはいえない」と判断した。

企業結合の審査では、問題があると認めた場合に事業の一部を他社へ譲り渡させる構造的措置を求めることが多い。今回はそれではなく、行動を縛る措置で決着した形になる。

背景にキャッシュレス化、ATMの役割が変わる

3社が統合の合意を発表したのは2026年3月26日で、10月1日からの合弁会社としての事業開始をめざしている。発表資料では、統合の背景に「キャッシュレス決済の普及や少子高齢化といった社会構造の変化」を挙げ、金融機関がATMや店舗のあり方を見直していると説明した。ATMも現金の出し入れだけでなく、QRコード決済との連携によるカードレス取引や公共料金の支払いに役割が広がり、機能の高度化が求められているという。

経済産業省が3月31日に公表した集計では、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%、金額にして162.7兆円だった。内訳はクレジットカードが134.6兆円、コード決済が16.6兆円、電子マネーが6.0兆円、デビットカードが5.5兆円。政府は2030年までに国内指標で65%という中間目標を掲げ、将来的には80%をめざす。現金を扱う機械の市場が細っていくことは、両社にとって前提になっている。

OKIの2025年3月期の連結売上高は4525億円で、このうち分割してATM事業に移す部門の売上高は803億円。日立チャネルソリューションズの従業員数は944人(2025年10月1日時点)で、ATMをはじめとする金融オートメーションの製品・サービスを100を超える国と地域に供給してきた。両社は統合後、ASEANやインド周辺国、北米、中東・アフリカへ販路を広げる方針を示している。なお、ATM関連機器・サービスの販売は統合後もOKI、日立製作所と各販売会社がそれぞれ担い、合弁会社に一本化しない。