13日投開票の沖縄県知事選で初当選した無所属新人の古謝玄太氏(42)は、公式サイトに掲げた政策で「普天間飛行場の危険性除去のため、既に工事が進んでいる辺野古移設を容認し、普天間飛行場を含む嘉手納より南の米軍基地の返還・跡地利用を着実に進めます」と明記している。県選挙管理委員会が14日未明に確定させた開票結果では、古謝氏の42万3124票に対し、3期目を目指した玉城デニー氏(66)は27万6060票で、票差は14万7064票だった。玉城氏は移設反対を「県民の民意」と位置づけて県政の柱に据えてきたが、県民が選んだのは移設を容認する候補であり、沖縄県の基地政策は方向が変わることになる。

「沖縄をまもる」の項目に位置づけ

古謝氏の政策は「県民所得倍増」「支援予算倍増」「観光消費倍増」の三つを「県民の皆様との3つの約束」として前面に置き、その上で「沖縄をまもる」「沖縄をひらく」「沖縄をつなぐ」の3本を柱に据える構成になっている。辺野古移設への言及は、このうち「沖縄をまもる」の中に置かれている。

同じ項目では「歴史的な物価高による生活苦、健康寿命の悪化、自然災害のリスク、安全保障環境の厳しさなど、今沖縄が直面している、そして今後想定されるあらゆる危機から沖縄をまもります」として、安全保障環境を生活や災害と並ぶ「危機」の一つに挙げている。物価高対策としてのクーポン給付や、医療・介護・福祉の連携による健康長寿の回復も同じ項目に並ぶ。

基地に関する記述は、選挙戦で繰り返し訴えた「倍増」の3項目には含まれていない。古謝氏は経済政策を前面に押し出し、基地問題は「まもる」の一項目として扱う形をとった。

「民意を守り抜く」と掲げた玉城氏に、県民が示した民意は移設容認だった

一方の玉城氏は、公式サイトの2026年政策で「平和こそ命とくらしの原点」という区分に35項目を置き、その冒頭に「普天間飛行場の早期運用停止・閉鎖・返還、日米地位協定改定」を掲げていた。具体策として「辺野古新基地建設反対の県民の民意を守り抜く」「普天間飛行場の早期運用停止・閉鎖・撤去を政府に強く求める」と記し、日米両政府と県が参加する三者協議の場の設置や、日米地位協定の抜本的な見直しも求めていた。

さらに南西諸島への自衛隊増強や長距離ミサイル配備に反対する項目、那覇軍港の「先行返還」を求める項目も立てていた。基地政策を県政の中心に置く玉城氏と、経済を中心に置いて移設を容認する古謝氏とで、公約の組み立て方そのものが対照的だった。

玉城氏は移設に反対する根拠を一貫して「県民の民意」に置いてきた。その民意を問う場となった13日の知事選で、県民が選んだのは移設容認を政策に明記した古謝氏だった。

県選挙管理委員会の確定結果によると、古謝氏の得票は42万3124票、玉城氏は27万6060票で、その差は14万7064票にのぼる。有効投票に占める割合は古謝氏が59.4%、玉城氏が38.8%で、その開きは20以上ある。投票率は61.57%で、前回2022年の57.92%から上がっている。投票に行く県民が前回より増えたうえでの大差であり、辺野古移設について県民が最も新しく示した意思は、容認の側だった。

2019年2月の県民投票では埋め立てに反対する票が71.7%を占めた。それから7年、知事を選ぶ投票で示された結果はこれと逆を向いている。県はこの県民投票を根拠に国へ移設反対を求めてきたが、その根拠となる民意そのものが、今回の知事選で更新された形になる。

県と国の訴訟はすでにすべて決着している

知事が代わっても、県が移設を止められる場面は多くない。県が公表している争訟の一覧によると、県と国が争ってきた訴訟はいずれも終結している。

埋め立て工事の設計変更を県が承認しなかったことをめぐる代執行訴訟は、2024年3月1日の最高裁不受理決定で終結した。同じ不承認処分を争った抗告訴訟も2025年1月17日の最高裁不受理決定で終わっている。2018年の埋立承認撤回に関する訴訟や、サンゴの特別採捕許可をめぐる訴訟も、すでに決着済みだ。

代執行とは、知事が法令上行うべき処分を行わない場合に、国の大臣が代わってその処分をする仕組みを指す。県によると、2023年12月20日に福岡高裁那覇支部が県に承認を命じる判決を出し、県が応じなかったため、同月28日に国土交通大臣が代執行で承認処分を行った。これにより設計変更が承認され、工事が進む前提が整った経緯がある。知事の権限で工事を差し止める余地は、この一連の手続きを経て大きく狭まっている。

1996年の返還合意から30年

県がまとめた経緯によると、普天間飛行場の全面返還が日米間で合意されたのは1996年4月のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)中間報告で、「5〜7年以内」の返還がうたわれていた。1999年11月に県がキャンプ・シュワブ沿岸域を移設候補地として公表し、2013年12月27日に当時の仲井眞弘多知事が埋め立てを承認した。

その後、2014年11月に「移設阻止」を公約に掲げた翁長雄志氏が知事に当選し、2015年10月13日に承認を取り消した。2019年2月24日には県民投票が行われ、埋め立てに反対する票が71.7%を占めた。2021年11月25日には県が国の設計変更申請を不承認とし、これが前述の代執行につながった。合意から30年を経ても普天間飛行場は返還されておらず、辺野古の工事も続いている。

焦点は政府との距離の取り方へ

古謝氏は「沖縄をつなぐ」の項目で、県政と県民、経済界、市町村、中央政府をつなぐと掲げ、「沖縄振興と基地負担軽減を政府全体の最優先課題として位置付けるため、『沖縄政策協議会』を早期に再開します」と明記している。沖縄政策協議会は、沖縄振興策を政府と県が協議する閣僚級の場として設けられたものだ。

古謝氏が政策資料で示した危機感の根拠の一つが、沖縄振興予算のうち施設整備に充てるハード交付金の減少だ。内閣府の資料をもとに、ピーク時の2014年の約932億円から現在は約390億円と、半分以下に落ち込んでいると指摘している。一人当たり県民所得についても、令和5年度県民経済計算で231.5万円と示し、これを500万円に引き上げるとしている。

古謝氏には自民党が8月7日に推薦を決め、参政党は7月23日に政策協定を結んで推薦した。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は13日、「我が党が推薦した古謝げんた氏が見事当選を果たした」とする談話を発表し、結果を「県民の皆様の期待の表れであると受け止めている」と述べている。移設を容認する知事と政府が、振興策と基地負担の軽減をどう組み合わせるかが次の焦点になる。

投票率は61.57% 6人が立候補

県選挙管理委員会が14日午前1時10分に確定させた開票結果によると、知事選には6人が立候補し、得票は古謝氏が42万3124票、玉城氏が27万6060票、カネシマシュン氏が4657票、ヒガタカシ氏が3542票、屋良朝助氏が2467票、すえよしまさひろ氏が2270票だった。有効投票は71万2120票、無効投票は5584票で、投票総数は71万7704票。開票率は100%となっている。

投票結果は13日午後10時55分に確定しており、選挙当日の有権者数は116万5704人、投票者数は71万7714人、投票率は61.57%だった。市部の投票率が60.67%、郡部が64.63%で、郡部が市部を上回った。市町村別では渡嘉敷村の90.70%が最も高く、宮古島市の52.71%が最も低い。移設先を抱える名護市は64.89%で、前回の65.96%をわずかに下回った。