農林水産省は11日、コメの販売会社「越後ファーム」(新潟県東蒲原郡阿賀町野村)に対し、袋詰め精米9商品の表示が食品表示法に違反していたとして、同法6条1項に基づき表示の是正を指示したと発表した。産地や品種が同一ではない原料玄米を使いながら、袋に「単一原料米」と表示していた。発覚したのは、北陸農政局が2026年2月3日から8月19日までの間に行った立入検査である。
「単一原料米」と書ける条件
玄米・精米の表示は、食品表示基準で細かく決められている。袋に「単一原料米」と書けるのは、原料となる玄米の産地・品種・産年がすべて同一で、その根拠を示す資料を事業者が保管している場合に限られる。根拠資料がなければ「同一の原料玄米」とはみなされず、この表示は使えない。あわせて、その産地・品種・産年を併記しなければならない。産地は国産なら都道府県名・市町村名などの地名、輸入品なら原産国名などを書く。
2021年7月の制度改正で、農産物検査による証明を受けていなくても、根拠資料を保管していれば産地・品種・産年を表示できるようになった。表示できる範囲が広がった代わりに、資料の保管が表示の前提としてはっきり位置づけられた形だ。
産地や品種、産年が異なるコメを混ぜた場合は「複数原料米」などと表示し、産地と使用割合を併記しなければならない。書き方も決まっていて、国産品は「国内産 △割」、輸入品は原産国ごとに「○○産 △割」と、使用割合の高い順に並べる。使用割合は原料玄米が製品に占める重量の割合を指す。買い手が袋の表示だけで中身を判断できるようにするための仕組みである。
使用割合が半分に満たない産地名・品種名は袋に書けない
もう一つ、見落としやすい決まりがある。食品表示基準23条2項2号は、使用割合が50パーセント未満の原料玄米について、その産地・品種・産年を表す言葉を容器包装に書いてはならないと定めている。例外は、使用割合の数字を、産地名や品種名のうち最も大きく書いてある文字と同じかそれ以上の大きさで添えている場合だけだ。
少ししか使っていない産地や品種の名前を袋の目立つところに置き、割合を小さく添えるか書かないままにする——という見せ方を塞ぐための規定である。今回の事案では、この規定に触れた商品があった。
対象は9商品・439袋
農水省によると、同社は使用した原料玄米が同一でないにもかかわらず、原料玄米欄に「単一原料米」と表示していた。産地と品種、または品種が同一でない場合にも単一の産地名・品種名を表示し、その使用割合を表示しないなど、事実と異なる表示をしていたという。食品表示基準19条(別表24「玄米及び精米」の原料玄米の項)、23条1項9号(品質を誤認させる表示)、23条2項2号の規定に違反すると判断した。
対象となったのは「新潟県十日町産循環有機栽培米こしひかり」ほか8商品。2025年12月10日から2026年4月17日までに、合わせて439袋・313.8キロが自社店舗などで一般消費者に売られた。
袋の数で最も多かったのは「新潟県十日町産循環有機栽培米こしひかり」の300グラム入りで、145袋・43.5キロ。農水省の一覧表には、この商品について、原料玄米欄の外に単一の産地名・品種名を表示していたにもかかわらず、その産地・品種の使用割合は50パーセント未満だったと記されている。
重さで見ると偏りは別のところにある。「新潟県奥阿賀産特別栽培 雪蔵今摺こしひかり」が精米日の違う2件に分かれて挙がっており、2キロ・3キロ・4.5キロ・5キロの袋で合わせて205.5キロ。全体313.8キロの3分の2近くが、この大袋である。残る7商品はすべて300グラム入りの小袋で、361袋・108.3キロだった。
違反の形は一通りではない。産地と品種の両方が同一でなかったものと、品種だけが同一でなかったものがあり、さらに原料玄米欄の外に書いた産地名・品種名について、使用割合が50パーセント未満だったものが含まれる。どの商品がどの形にあたるかは、公表された一覧表の表組みからは商品ごとに一対一で読み取れない。
発覚は北陸農政局の半年がかりの立入検査
きっかけは行政の検査だった。北陸農政局が2026年2月3日から8月19日までの間、食品表示法8条2項に基づいて同社に立入検査などを行い、精米の表示と帳簿を突き合わせて不適正表示を確認した。同条は、表示の適正を確保するために必要があると認めるとき、事業者に報告や帳簿・書類の提出を求め、職員が事業所に立ち入って検査・質問できると定めている。
越後ファームは2018年7月2日設立、資本金100万円。本店は新潟県東蒲原郡阿賀町野村で、事業内容には商品検査業務や農産物の生産・仕入れ・販売が並ぶ。
10月13日までに報告書
指示は5項目ある。販売する全食品の表示を直ちに点検し、不適正なものは是正してから販売すること。基準に従った表示がされていなかった原因を究明・分析すること。その結果を踏まえて食品表示の責任の所在を明確にし、相互チェック体制を強化・拡充するなどの再発防止対策を実施すること。全役員・全従業員に食品表示制度を啓発し遵守を徹底すること。そして、これらの措置をまとめた報告書を10月13日までに農林水産大臣宛てに提出すること。
原因の究明にあたっては、「消費者に対し正しい表示を行うという意識及び食品表示制度に対する認識の欠如」と「表示内容の確認及び管理体制の不備」を主な原因と考えられるとして、これらを含めて分析するよう求めている。行政が原因の見立てまで書き込んでいるのは、報告書で論点をすり替えさせないためだろう。
従わなければ命令、命令違反には罰金
食品表示法の「指示」は、行政が事業者に是正を促す最初の段階にあたる。指示や命令を出したときは公表しなければならない(7条)。今回の発表そのものが法律上の義務である。
指示を受けた事業者が正当な理由なく措置をとらなかった場合、農林水産大臣は内閣総理大臣に対し、措置をとるよう命ずることを要請できる(6条6項)。命令を出すのは内閣総理大臣で(同条5項)、実際には消費者庁が所管する。この命令に違反すると、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(20条)。法人に対しては1億円以下の罰金が科される(22条2号)。指示の段階では罰則はないが、従わなければ刑事罰のある命令へ進む構えになっている。
コメは産地や品種によって価格が異なり、袋の表示が取引や購入の判断材料になる。スーパーの精米価格は5キロ平均で3,000円を超える水準が続いており(スーパーの米、5kg平均3,160円 1年前より604円安く 卸値はなお前年比16%高)、産地と品種の表示が値段を左右する度合いはそれだけ大きい。
産地表示をめぐる行政処分は精米に限らない。地理的表示(GI)保護制度では、農水省が福井県越前町に対して措置命令を出している(ふるさと納税の返礼品に「越前がに」の不正表示 農水省が福井県越前町に措置命令 水がにを過半超え混ぜた商品を2020年9月から2026年4月まで掲載)。
表示のルールそのものも随時見直されており、栄養成分の機能を表示できる栄養機能食品では、2026年10月1日に成分量の上下限と機能の文言が改められた(栄養機能食品の表示ルール、10月1日に改正 亜鉛の上限は1日15ミリグラムから17ミリグラムへ 機能の文言も「必要な栄養素」から「助ける栄養素」に)。
