国民生活センターは9月14日、消費者トラブルに遭った人の解決を支援する専用サイト「消費者トラブル解決ナビ」を開設した。よくある質問(FAQ)の形式でトラブル解決の方法やヒントを調べられるようにするとともに、自主解決が難しい場合には全国の消費生活相談窓口を案内する。URLは https://www.consumer.go.jp/pio 。

「自分で調べる」と「窓口へつなぐ」の二本立て

サイトの役割は二つある。一つは自主解決の支援で、トラブルに遭った人が解決のための方法やヒントをFAQで調べられるようにする。もう一つは相談窓口の案内で、自分では解決が難しい場合に、全国の消費生活センターなどの相談窓口を紹介する。

このうち、Webフォームで相談を受け付けている窓口については、サイトから直接相談を申し込める。電話をかけて口頭で説明する従来の入り口に加え、文字で書いて送る経路が用意された形になる。

同センターは個別の注意喚起でもこのサイトを案内しており、10月7日に公表したパーソナルトレーニングの相談、2025年度1457件で過去5年最多 エステも勧誘、国民生活センターが注意の資料でも、FAQページの利用を呼びかけている。

同センターは、今後サイトの利用状況や利用者から寄せられる意見を参考にしながら、内容の充実に取り組むとしている。

相談窓口はどこにあるのか

消費生活センターは、商品やサービスの契約をめぐる苦情・相談を受け付ける行政の窓口で、都道府県と市区町村が設置している。専門の相談員が事業者との交渉の助言をしたり、必要に応じて事業者との間に入って解決をあっせんしたりする。

どこに電話すればよいか分からないときの入り口が、消費者庁が案内する全国共通番号「消費者ホットライン188(いやや)」だ。郵便番号などを入力すると、近くの市区町村または都道府県の消費生活相談窓口につながる。相談そのものは無料だが、窓口につながった時点からナビダイヤルの通話料が発生する。消費者庁は、携帯電話の通話料定額プランの対象外になること、窓口へ直接かけたほうが安くなる場合があることを明記しており、接続前に「○○秒ごとにおよそ○○円でご利用いただけます」という料金のガイダンスが流れる仕組みだとしている。

土日祝日に市区町村や都道府県の窓口が開所していない場合は国民生活センターが相談を補完し、施設点検日と年末年始を除いて原則毎日利用できる。話中でつながらないときは、同センターの「バックアップ相談」も使える。ただしこの番号は窓口を案内するものであって、消費者庁につながるわけではない。今回のサイトは、この電話の入り口と並ぶ「もう一つの入り口」を、より手前の「調べる」段階から用意したものといえる。

相談は年100万件台に戻った

背景には、相談の多さがある。同センターが全国の消費生活センターの相談情報を集めるPIO-NETによると、2025年度に寄せられた相談は100.6万件で、前年度の91.3万件から約9万件増えた。

内訳をみると、販売購入形態では通信販売が38.0%と最も多く、前年度から約4.6万件増えた。契約当事者の年代では70歳以上が25.6%を占める。相談1件あたりの平均契約購入金額は88万円、実際に支払ってしまった額の平均は50万円で、合計はそれぞれ4776億円、2087億円にのぼる。品目別では賃貸アパート・マンション、他の役務サービスがそれぞれ約8千件、紳士・婦人洋服が約7千件増えた。

この集計は、2026年5月末日までにPIO-NETに登録された苦情相談を対象としている。PIO-NETは国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインで結び、相談情報を蓄積しているデータベースである。

同センターは公式サイトで、2026年9月11日午後6時をもって、それまで公開してきた「消費生活相談データベース」の運用を終了したと告知している。新しいサイトが開いた9月14日の3日前にあたる。相談事例を検索して見せる旧来の仕組みを閉じ、FAQで答えを示す仕組みへ入れ替えた形になる。

100万件超えは18年ぶり ただし2004年度のピークとは中身が違う

100.6万件という数字は、正確には100万6377件だ。年度別の総件数をさかのぼると、100万件を超えたのは2007年度の105万837件以来、18年ぶりになる。2008年度に94万1058件へ落ちたあとは、2021年度の84万8015件を底に80万件台後半から90万件台で推移してきた。2022年度は89万9301件、2023年度は89万3524件、2024年度は91万3355件で、ここから一気に9万件増えた2025年度は直近10年のなかで突出している。

ここ10年で100万件に最も近づいたのは2018年度の99万6815件で、3185件届かなかった。翌2019年度は93万9656件、2020年度は94万2696件と下がり、2021年度には84万8015件まで落ちた。

ただし年度をまたいだ比較には断りがいる。国民生活センターは同じ資料の注記で、PIO-NETの件数は2008年度以降、消費生活センター等からの経由相談を含んでいないと明記している。2007年度以前の数字は集計の範囲がこれより広い。「18年ぶりの100万件超え」は、同じ物差しで並べた比較ではない。

ただし過去最多だった2004年度の191万9674件とは、中身が大きく異なる。当時は身に覚えのない請求はがきを大量に送りつける「架空請求」が相談の山をつくっていた。2025年度の架空請求に関する相談は約8500件で、100万件のうち1%に満たない。件数の水準は当時の半分ほどに戻っただけで、増えている相談の中身は入れ替わっている。ハガキによる架空請求はなくなったわけではなく、2026年10月には同センターの名をかたる「最終確認通知書」のハガキについて注意喚起が出た(国民生活センターかたる「最終確認通知書」ハガキに注意 訴訟・差し押さえで電話促す)。

2025年度に増えたのは、賃貸アパート・マンション(約8千件増)、他の役務サービス(約8千件増)、紳士・婦人洋服(約7千件増)だ。国民生活センターはそれぞれ、退去時の原状回復をめぐるトラブル、分電盤やガス給湯器の点検を装う勧誘や有料質問サイトの解約、インターネット通販で購入後に事業者と連絡が取れなくなる相談を例に挙げている。分電盤の点検商法をめぐる相談は1年で1290件から6545件へ5倍に増えており、契約者の8割超が70歳以上だった。

このほか「インターネット接続回線」と「エステティックサービス」の増加も目立ったという。前者は電話勧誘で光回線の利用料金が安くなると言われて契約したが解約したいという相談、後者は契約したエステサロンが破産したのに請求が続いているという相談である。

販売方法・手口別では1位が「インターネット通販」、2位が「定期購入」で、いずれも化粧品や健康食品の定期購入契約に関わる相談が多い。3位の「電話勧誘販売」はインターネット接続回線、4位の「家庭訪販」は修理サービスに関する相談が多い。5位の「かたり商法(身分詐称)」では、国の機関や大手電話会社など有名企業をかたる不審な電話の相談が、6位の「代引配達」ではインターネット通販で購入した商品に関する相談が目立つ。訪問販売のトラブルでも、きっかけが飛び込み訪問からネット広告経由へ移っていることが消費者庁の分析で示されている。

70歳以上が4分の1 「本人以外が相談する」層でもある

契約当事者の年代別で70歳以上が最も多いのは今に始まったことではない。年度別の割合をみると、2016年度は19.6%だったのが2018年度に24.6%へ上がり、2024年度は26.2%、2025年度は25.6%と、ここ数年は4分の1前後で高止まりしている。同じ2025年度の20歳代は9.2%、30歳代は9.0%、40歳代は11.0%だった。

高齢層の相談そのものも増えている。65歳以上の消費生活相談は2025年度に33万497件で、前年度から2万5800件増えた。

国民生活センターは、契約当事者が20歳代以下と70歳以上の相談では、当事者とは別の人が相談する割合が高いとしている。つまりこの層は、本人が窓口にたどり着けず、家族や周囲が代わりに連絡している比率が高い。今回のサイトがFAQで「まず自分で調べる」経路を用意したことは、代わりに調べる家族にとっての入り口にもなる。

金額の面でも負担は軽くない。2025年度の契約購入金額は合計4776億円、1件あたり平均88万円で、実際に支払ってしまった既支払金額は合計2087億円、平均50万円。いずれも2024年度より増えている。

5年越しの計画の一片 試行版は2023年4月に出ていた

今回のサイトは単独の思いつきではない。消費者庁と国民生活センターは2021年5月から、学識経験者・実務家・相談現場の有識者による「消費生活相談デジタル化アドバイザリーボード」を共催で開いてきた。コロナ禍で相談員が出勤しにくくなったことや、対面・電話以外での相談ニーズの高まりを受けた検討である。同年9月に中間的とりまとめを出し、2022年6月に「消費生活相談デジタル・トランスフォーメーション(DX)アクションプラン2022」を、2023年7月にその改訂版となるアクションプラン2023をまとめて全国の自治体と共有した。

アクションプラン2023は、消費者の利便性向上として二つ、相談現場の支援として二つ、合わせて4本の柱を立てている。①消費者向けFAQ(自己解決支援)②相談手法のマルチチャネル化③ナレッジ(相談員向けFAQ)の整備④相談データの利活用である。今回開設された「消費者トラブル解決ナビ」は、このうち①にあたる。

同プランが①の「現状」として書いたのは、「解決方法をWebで調べても見つからない」「消費者庁、国民生活センター、各自治体のホームページに注意喚起があるが、どれを見ればよいかわからない」という2点だった。②については「メール相談を実施している自治体は拡大途上」「相談件数の多い自治体では、電話が混雑している」と書き、DX後の姿としてポータルサイトに全国共通のWebフォームを整備し、メール相談や相談の予約を受け付けると記していた。今回のサイトでWebフォームからの申し込みが一部の窓口に限られているのは、この②がまだ途上にあるということでもある。

準備は段階を踏んでいる。2021年12月から2022年3月にかけて、国民生活センターと8自治体で相談員向けの入力画面などを検証するプロトタイプを試行し、2023年度は14自治体へ広げて業務全体の検証に入った。コンテンツの側では、アクションプラン2023が「2023年4月より、先行的な実証実験として、『消費者トラブルFAQサイト』を国民生活センターにて開設」と記している。消費者向けFAQの試行版は3年以上前から動いていたことになり、今回はそれを専用サイトとして立て直した位置づけになる。

成果の測り方は2030年度まで決めてある

アクションプラン2023は、2030年度までの主要成功要因(KPI)も定めている。自己解決の促進については「FAQアクセス数」(消費生活ポータルサイトのFAQの訪問者数)と「FAQ優位評価件数」(FAQが役立ったと評価された件数)をいずれも増加させることを目標に置いた。相談員向けのナレッジについても同じようにアクセス数と優位評価件数を置き、「相談対応苦情化件数」(満足や感謝が得られず苦情になった件数)は減少を目標としている。

目標値そのものは、DXを始めた年度の開始後6か月間に計測した値を参考に基準値を決める方針で、プランの時点では数字が入っていない。別に目標値を置かないモニタリング指標として、相談件数、総契約額、あっせん率、FAQ経由相談率、平均通話時間、平均通話保留時間、平均相談処理時間、予約相談率の8項目を並べている。

このうち「FAQ経由相談率」は、今回のサイトの効き方を最も素直に表す指標だろう。FAQで調べた人のうち、どれだけが結局は窓口に相談したか。自己解決が進めばこの比率は下がり、逆にFAQが窓口への案内として機能していれば上がる。どちらを良しとするかはプランに書かれていない。開設から3週間あまりが過ぎた時点で、利用状況の公表はまだない。