国民生活センターは9月16日、2025年度に全国の消費生活センターなどへ寄せられた相談のうち、契約した本人が65歳以上だったものが33万497件だったと発表した。前年度の30万4674件から約2万5800件増えている。相談全体に占める割合は37.7%で、4割近くを高齢者が占める状態が続く。ただしこの割合は2024年度の38.6%より低く、資料が示す2021年度以降では初めて前年度を下回った。件数は増えながら構成比は下がっており、65歳未満の相談の伸びがそれを上回ったことになる。

4年で7万8千件あまり増えた

数字は、同センターと全国の消費生活センターをつなぐデータベース「PIO-NET(パイオネット)」に2026年7月31日までに登録された分を集計したものだ。年度ごとの推移を見ると、2021年度が25万1848件、2022年度が26万8879件、2023年度が27万7636件、2024年度が30万4674件と増え続けてきた。2021年度と2025年度を比べると7万8千件あまり多い。相談全体に占める割合は2021年度が34.1%、2022年度が34.2%、2023年度が35.8%、2024年度が38.6%と上がったあと、2025年度は37.7%へ下がった。この割合は年齢の不明・無回答を除いて計算されている。

商品・サービス別では「商品一般」が4万1391件で最も多く、全体の12.5%を占めた。これは不審な電話や身に覚えのない請求をまとめた区分で、警察や実在する通信会社、宅配業者など、さまざまな組織の名がかたられている。2位の化粧品2万8647件、3位の健康食品1万9507件は主に定期購入をめぐるもので、1回だけのお試しのつもりで注文したら定期購入になっていた、という訴えが多い。

4位の「他の役務サービス」は1万3767件で、前年度の1万522件から増えた。パソコンから警告音が鳴り、慌ててサポートセンターに問い合わせたら遠隔操作されたというサポート詐欺や、有料の質問サイト、給湯器の点検などが含まれる。上位20位には、分電盤の点検をめぐる「電気設備」3796件、交換工事をめぐる「電気工事」3060件、訪問買い取りをめぐる「アクセサリー」2684件が新たに入った。分電盤の点検商法は同センターが同じ日に別途注意喚起を出しており、相談は2022年度14件、2023年度39件、2024年度1290件を経て2025年度は6545件へ増えた(分電盤の「点検商法」相談が6,545件 1年で1,290件から5倍に 契約者の8割超が70歳以上、平均約18万円)。2026年度も7月31日までに2223件が登録され、前年の同じ時期の1312件を上回っている。2024年度は南関東で目立っていた相談が、2025年度には北関東や九州北部を含め各地へ広がった。

高齢者に限らない相談全体の動きと、取り締まりの現状は消費者トラブルの全体像 相談は18年ぶり100万件超、入口はネットとSNSへで整理した。

65歳から69歳は化粧品、85歳以上は新聞と電気工事

同じ「高齢者」でも、何でもめているかは年齢で入れ替わる。年齢区分ごとの上位10位を見ると、65歳から69歳だけは化粧品8840件が1位で、「商品一般」7467件が2位につく。70歳から74歳以上はどの区分も「商品一般」が1位になり、件数は70歳から74歳が9449件、75歳から79歳が1万75件、80歳から84歳が8300件、85歳以上が6100件だった。

化粧品の件数は年齢が上がるほど減っていく。65歳から69歳の8840件に対し、70歳から74歳は8441件、75歳から79歳は6855件、80歳から84歳は3044件で、85歳以上は1467件の5位まで下がる。健康食品は65歳から69歳の4180件、70歳から74歳の4562件、75歳から79歳の4651件と増えたあと、80歳から84歳は3366件、85歳以上は2748件へ減る。件数は減っても順位はこの2区分で2位に上がる。同センターはどの年齢区分でも「商品一般」「化粧品」「健康食品」が上位だとしている。

入れ替わりに現れるのが、電話と訪問にひもづく区分だ。「他の電報・固定電話サービス」は75歳から79歳で1719件の8位に入り、80歳から84歳は1910件の6位、85歳以上は1796件の4位まで上がる。85歳以上の上位10位には、ほかの年齢区分には入らない電気設備1145件(7位)、新聞1120件(8位)、電気工事984件(10位)が並ぶ。同センターは、85歳以上になるとインターネット接続回線の相談の順位が下がり、代わりに電気設備・新聞・電気工事が上位に現れると説明している。インターネット接続回線は65歳から69歳で2087件、75歳から79歳で2887件と上位5〜6位に入るが、85歳以上では10位以内から消える。資料は電気設備と電気工事を分電盤などの交換工事に関する相談と説明しており、分電盤の点検商法が最高齢層で目立っていることと重なる。

逆に、65歳から69歳の上位10位には賃貸アパート・マンション1283件が入り、紳士・婦人洋服は65歳から69歳の1999件と70歳から74歳の1553件にとどまる。「フリーローン・借金」も65歳から69歳の1184件、70歳から74歳の1156件までで、75歳以上の上位10位からは消える。住まいや衣類、借金をめぐる相談は65歳代に、点検や固定電話をめぐる相談は85歳以上に寄っている。同じ注意喚起を高齢者全体へ一律に配っても届きにくいことを、この並びが示している。

85歳を超えると訪問販売が通信販売を上回る

年齢が上がるにつれ、トラブルの入り口そのものが入れ替わる。年齢区分別の相談件数は65歳から69歳が7万1509件、70歳から74歳が7万7986件、75歳から79歳が7万9406件、80歳から84歳が5万7327件、85歳以上が4万4269件だった。

このうち通信販売は、65歳から69歳では3万4646件で全体の48.4%を占めるが、年齢が上がるほど割合が下がり、85歳以上では8242件の18.6%まで落ちる。逆に訪問販売は65歳から69歳が4478件の6.3%にとどまるのに対し、80歳から84歳は8923件の15.6%、85歳以上は9504件の21.5%となり、85歳以上では通信販売を抜いて最も多い形態になる。電話勧誘販売も6.5%から9.9%へ、自宅で品物を買い取らせる訪問購入も0.8%から2.7%へと、年齢とともに割合が上がっていく。

同センターは、年齢が上がるとともに在宅時間が長くなって訪問による勧誘を受けやすくなること、インターネット通販を使う機会が85歳以上では少ないことを理由に挙げた。参考までに65歳未満では通信販売が23万2599件の42.5%、訪問販売は3万3075件の6.0%で、高齢層とは対照的な構図となっている。

「点検商法」「かたり商法」は高齢層に特有

販売方法・手口別で見ると、65歳以上の上位はインターネット通販6万9399件、定期購入4万6958件、家庭訪販2万8205件、電話勧誘販売2万2547件、身分を偽る「かたり商法」1万9447件、点検商法1万4167件の順だった。

65歳未満の上位10位には点検商法もテレビショッピングも入らず、代わりにサイドビジネス商法1万2040件、偽サイト1万200件、利殖商法6616件が並ぶ。高齢層にだけ10位以内に現れるものに「適合性」4056件がある。消費者の知識や経験、財産の状況、購入の目的に照らして不適当な勧誘・契約と思われる相談を指す区分で、判断する力が弱っている人に不相応な契約を結ばせる事案がこの数だけ相談として上がっている。

金額の面では、65歳以上の平均契約購入金額が約73万円で、65歳未満の約94万円より低い。ただし実際に支払った金額の平均は65歳以上が約51万円、65歳未満が約50万円とほぼ変わらない。契約金額は1万円未満が35.8%、1万円以上5万円未満が30.1%と、5万円未満が6割を超える。既に支払った金額も1万円未満が68.8%を占め、65歳未満の54.1%より高い。少額の相談が数のうえでは大半を占める一方、一部の高額契約が平均を押し上げている。

相談は家族や介護職員からでもできる

同センターは、高齢者のトラブルを防ぐには周囲が日頃から生活や言動、態度を見守り、変化にいち早く気づくことが重要だとしている。相談は本人でなくても、家族やホームヘルパー、地域包括支援センターの職員からでも受け付ける。最寄りの窓口につながる全国共通の電話番号として、消費者ホットライン「188(いやや)」が用意されている。

見守る側の人手そのものも細っている。一人暮らしの世帯が2368万9024で全体の41.4% 5年で253万7982増 1世帯当たりは2.10人に 核家族は2010年以降で初の減少では、65歳以上の世帯員がいる一般世帯の34.7%が単独世帯で、2010年の24.8%から上がった。

自治体によっては、消費者安全法に基づいて福祉施設や民間企業、警察などが連携する「消費者安全確保地域協議会」を設け、見守りの仕組みを作っている。同センターは今回の集計結果を消費者庁と内閣府消費者委員会に情報提供した。