首相官邸は9月17日、同日発足した第2次高市改造内閣の閣僚等名簿を公表した。高市早苗首相にとって、2025年10月の政権発足以降で初めての内閣改造となる。首相を除く18の閣僚ポストのうち10ポストで顔ぶれが代わり、8人が留任した。
木原稔官房長官は同日午前の記者会見で、臨時閣議の内容について「総理から、『本日、内閣改造を行うこととした』旨の御発言があり、その後、閣僚の辞表の取りまとめを行いました」と説明した。
骨格は動かさず、10ポストを入れ替え
留任したのは、木原官房長官のほか、茂木敏充外相、片山さつき財務相、上野賢一郎厚生労働相、赤澤亮正経済産業相、小泉進次郎防衛相、城内実日本成長戦略担当相、小野田紀美経済安全保障担当相の8人。官房長官と外務・財務・経産・防衛という予算編成と外交・安全保障の中核は、そのまま残した形だ。
交代したのは、総務相が林芳正氏から藤井比早之氏、法相が平口洋氏から山下貴司氏、文部科学相が松本洋平氏から関芳弘氏、農林水産相が鈴木憲和氏から簗和生氏、国土交通相が金子恭之氏から井林辰憲氏、環境相が石原宏高氏から笹川博義氏、デジタル相が松本尚氏から古川俊治氏、復興相が牧野たかお氏から細野豪志氏、国家公安委員長があかま二郎氏から葉梨康弘氏。こども政策などを担う内閣府特命担当相は黄川田仁志氏から中司宏氏に代わった。葉梨氏は第2次岸田改造内閣で法相を務めている。内閣官房副長官も1人交代し、佐藤啓氏に代わって中西祐介氏が就いた。
閣僚名簿の一覧(担当つき)
首相官邸の閣僚名簿に載っている19人と、主な担当は次のとおり。担当名は名簿の表記に合わせた。
| ポスト | 氏名 | 衆参 | 主な兼務・担当 |
|---|---|---|---|
| 内閣総理大臣 | 高市早苗 | 衆 | - |
| 総務相 | 藤井比早之 | 衆 | 内閣府特命担当相(地方創生)、地域未来戦略、副首都整備等推進 |
| 法相 | 山下貴司 | 衆 | 内閣府特命担当相(男女共同参画)、女性活躍、法制度検証・改革 |
| 外相 | 茂木敏充 | 衆 | - |
| 財務相 | 片山さつき | 参 | 内閣府特命担当相(金融)、租税特別措置・補助金見直し、消費税・支援金法案 |
| 文部科学相 | 関芳弘 | 衆 | - |
| 厚生労働相 | 上野賢一郎 | 衆 | - |
| 農林水産相 | 簗和生 | 衆 | - |
| 経済産業相 | 赤澤亮正 | 衆 | 原子力経済被害、GX実行推進、産業競争力、中東情勢に伴う重要物資安定確保、AX社会実装ほか |
| 国土交通相 | 井林辰憲 | 衆 | 水循環政策、国際園芸博覧会 |
| 環境相 | 笹川博義 | 衆 | 内閣府特命担当相(原子力防災)、クマ被害対策 |
| 防衛相 | 小泉進次郎 | 衆 | - |
| 官房長官 | 木原稔 | 衆 | 沖縄基地負担軽減、拉致問題 |
| デジタル相 | 古川俊治 | 参 | AI・デジタル改革推進、サイバー安全保障、コンテンツ戦略、内閣府特命担当相(知的財産戦略・科学技術政策・宇宙政策・人工知能戦略・海洋政策など) |
| 復興相 | 細野豪志 | 衆 | 内閣府特命担当相(防災)、防災庁設置準備、国土強靱化、国際防災協力ほか |
| 国家公安委員長 | 葉梨康弘 | 衆 | 領土問題、CBRNEテロ対策、内閣府特命担当相(沖縄及び北方対策・消費者及び食品安全・アイヌ施策) |
| 内閣府特命担当相 | 中司宏 | 衆 | こども政策・少子化対策・若者活躍・規制改革・共生・共助、行政改革、国家公務員制度 |
| 日本成長戦略担当相 | 城内実 | 衆 | 賃上げ環境整備、スタートアップ、全世代型社会保障改革、内閣府特命担当相(経済財政政策) |
| 経済安全保障担当相 | 小野田紀美 | 参 | 感染症危機管理、外国人との秩序ある共生社会推進、内閣府特命担当相(経済安全保障) |
首相を含む19人のうち、衆院議員が16人、参院議員は片山氏、古川氏、小野田氏の3人だ。閣僚ではないが、同じ名簿には内閣官房副長官3人と内閣法制局長官の岩尾信行氏も載っている。副長官は衆院議員1人と参院議員の中西祐介氏、国会議員ではない露木康浩氏の3人だ。首相官邸の名簿は10月15日時点でも9月17日発足時の内容で、発足後に閣僚が交代したという記載はない。
担当名の数は閣僚によって大きく違う。経産相と復興相、デジタル相は内閣府特命担当相の分野を含めて5つ以上の担当を抱える一方、外相、文部科学相、厚生労働相、農林水産相、防衛相は担当の兼務が無い。官邸の名簿は担当を閣僚ごとに列挙しているので、ある政策について誰が国会で答弁するのかを確かめるときは、この一覧から担当名を探すのが早い。
維新から初の閣僚
中司氏は日本維新の会の衆院議員で、同党の公式サイトによると大阪11区(枚方市・交野市)選出。枚方市長を4期務め、党の幹事長も経験した。2025年10月の第1次高市内閣、2026年2月の第2次高市内閣の閣僚名簿にはいずれも維新の議員が入っておらず、自民党と維新の連立政権で維新側から閣僚が起用されるのは今回が初めてとなる。
「副首都整備」「クマ被害対策」など担当を新設
今回は顔ぶれ以上に、閣僚に割り振る担当分野の組み替えが目立つ。閣僚名簿には、前の内閣に無かった担当が複数並んだ。
総務相の藤井氏には、内閣府特命担当相(地方創生)に加えて「副首都整備等推進担当」が付いた。副首都構想は維新が掲げてきた看板政策で、連立相手の政策課題を担当名として内閣に据えたことになる。環境相の笹川氏には「クマ被害対策担当」が新設された。クマによる人身被害は各地で相次いでおり、環境省の所管に閣僚の担当名を与えて位置づけを引き上げた形だ。
閣僚名簿の発表後、内閣の体制は数日かけて固まった。第2次高市改造内閣、副大臣27人・大臣政務官28人を発令 連立の維新から5人、女性は55人中6人が9月19日に発令され、9月18日には高市改造内閣が基本方針を閣議決定している。首相補佐官も同じ時期に入れ替えられ、「物価高対策・責任ある積極財政」担当を新設し松本尚氏が就いた。
このほか、法相に「法制度検証・改革担当」、財務相に「消費税・支援金法案担当」、経産相に「AX社会実装担当」、デジタル相に「AI・デジタル改革推進担当」と「コンテンツ戦略担当」、復興相に「国際防災協力担当」がそれぞれ加わった。
「クマ被害対策担当」が置かれた背景の数字
新設された担当のうち、統計で裏づけが取れるのがクマ被害対策だ。環境省が都道府県から聞き取ってまとめている人身被害の速報値によると、クマ類による人身被害は令和7年度(2025年度)が216件・238人で、うち死亡者は13人だった。件数・人数・死亡者数のいずれも、同省が公表している平成20年度以降の18年度分で最も多い。
被害は年ごとの振れが大きい。直近8年度分を並べると、令和元年度が140件・157人(死亡1人)、令和2年度が143件・158人(死亡2人)、令和3年度が80件・88人(死亡5人)、令和4年度が71件・75人(死亡2人)、令和5年度が198件・219人(死亡6人)、令和6年度が82件・85人(死亡3人)、そして令和7年度が216件・238人(死亡13人)となる。多い年と少ない年が交互に現れる形だが、令和7年度の死亡13人は、それまでの最多だった令和5年度の6人の2倍を超える。
令和8年度も同じ水準で進んでいる。同じ速報値では、令和8年7月末までで56件・60人、死亡者は6人。環境省が別に公表している死亡事故の一覧でも、令和8年7月10日現在で6件が並び、岩手県で3件(紫波町・八幡平市・西和賀町)、山形県酒田市、秋田県秋田市、青森県青森市で各1件だった。
市街地に出てきたクマを警察官の許可なしに撃てるようにする「緊急銃猟」の運用も始まっている。環境省が9月24日に更新した実施状況によると、令和8年度に発砲まで至った事例は29件で、うち2件がイノシシ、残る27件がクマだった。クマの27件はツキノワグマが25件、ヒグマが北海道士別市と下川町の2件である。地域別では東北と北陸に集中する一方、9月3日には京都府舞鶴市、7月11日に奈良県東吉野村、7月20日に三重県尾鷲市の事例もあり、西日本にも及んでいる。
環境大臣に担当名を与えることは、法律や予算を直ちに動かすものではない。ただ、クマ対策はこれまで鳥獣保護管理法に基づく環境省の一業務として扱われてきた。担当閣僚を明示すれば、国会審議や省庁間の調整で誰が答弁と責任を負うかがはっきりする。
防災は復興相に集約
担当の移し替えで最も実務に響きそうなのが防災だ。これまで内閣府特命担当相(防災)は国家公安委員長が兼ねていたが、今回は復興相の細野氏に移った。細野氏は「防災庁設置準備担当」と「国土強靱化担当」も併せて持つ。政府が設置準備を進める防災庁をめぐり、準備の担当と平時の防災行政を一人の閣僚に集めた形で、縦割りの解消を狙ったとみられる。
一方、デジタル相には海洋政策が、こども政策担当相には規制改革と行政改革、国家公務員制度が移った。感染症危機管理担当は城内氏から小野田氏に移っている。
内閣改造は、内閣総理大臣が閣僚を入れ替えて内閣の顔ぶれを変えることをいう。首相は憲法68条で国務大臣の任免権を持ち、総辞職を経ずに大臣を交代させられる。閣僚が一斉に辞表を出し、首相が新たな閣僚を指名して天皇の認証を受ける手続きを踏む。首相官邸によると、木原官房長官は記者会見で、この後の予定として午後1時から与党党首会談を行うと説明していた。
なお、首相官邸が公表している閣僚等名簿は2026年9月29日時点でも9月17日発足時の内容のままで、その後の交代は反映されていない。名簿には閣僚の担当名がすべて列挙されており、記事中の担当の新設・移し替えはいずれも同名簿で確認できる。
