国連女性機関(UN Women)と国連経済社会局(UN DESA)は9月17日、年次報告書「持続可能な開発目標の進捗 ジェンダー・スナップショット2026」を公表した。各国でジェンダー平等政策を担う政府機関の3分の1が、この2年で権限を縮小されていた。4分の1は運営予算を削られ、10機関に1機関近くは予算を自ら差配する権限そのものを失っていた。UN Womenのシマ・バフース事務局長は「権力なき平等は、そもそも平等ではない」と述べた。

この報告書は、持続可能な開発目標(SDGs)17目標のすべてを男女別のデータで点検し、毎年9月の国連総会に合わせて出されるもの。今年は各国の推進機関を対象にした2026年の調査結果が新たに加わり、制度そのものが痩せていく実態に焦点を当てた。ここでいう推進機関とは、日本の内閣府男女共同参画局にあたる、政府内で横断的に政策を調整する部署や省庁を指す。予算と権限を失えば、法律や計画が残っていても実行する手足がなくなる。

資金は2021年以来の低水準

ジェンダー平等分野に充てられる資金は、2021年以降で最も少ない水準まで落ち込んだ。減り方は一様ではなく、政府機関よりも現場で活動する女性の権利団体への打撃が大きいと報告書は指摘する。各国の援助予算の縮小が、規模の小さい団体から順に効いている形だ。

内向きの数字も示された。国連システムに属する各機関のうち42%が、自らのジェンダー平等の取り組みが弱まったと回答している。旗を振る側の足元でも後退が起きていることになる。

閣僚の割合、伸びが止まり反転

政治参画の数字は、長く少しずつ増えてきた。国会議員に占める女性の割合は2015年の22.3%から2026年は27.4%に伸びた。一方で閣僚に占める割合は、2024年の23.3%を頂点に2026年は22.4%へと下がった。積み上げてきた数字が減ったのは、この分野では珍しい。報告書は、政治における女性の代表性の伸びが崩れやすいものであることを示す兆候だとしている。

頂点付近の偏りはさらに大きい。世界の国の7分の6は男性が首脳を務める。国防相の9割近く、財務相の8割超が男性で、各国の最高裁長官175人のうち女性は31人にとどまる。企業では上場企業の最高経営責任者(CEO)の5.8%、取締役の25.1%が女性だった。新しい分野も例外ではなく、AIの専門職に占める女性は約22%、AIを率いる立場では14%まで下がる。2024年のベンチャー投資では、創業者が全員女性のチームに渡ったのは2.3%で、全員男性のチームの83.6%と大きく開いた。

日本は衆院14.6%で147位

日本の現状は、この世界平均より下にある。内閣府男女共同参画局が今年6月にまとめた資料によると、衆議院議員465人のうち女性は68人で14.6%(2026年2月18日現在)。下院にあたる衆議院の女性比率は184か国中147位で、世界平均の27.4%のほぼ半分にとどまる。参議院は247人中74人で30.0%あり、両院を合わせると712人中142人、19.9%になる。有権者に占める女性の割合は51.7%である。

報告書は、女性が立候補しにくい仕組みも数字で示した。選挙運動にかかる費用が国民1人あたり所得の100倍を超える国があり、女性候補の最大8割が公の場で暴力や嫌がらせを受ける国もある。こうした障壁を放置したまま今のペースが続けば、国会の議席が男女半々になるのは63年後、ジェンダー平等全体の達成は171年後になると推計された。SDGsの目標5は、どの指標も2030年の達成予定に乗っていない。

UN DESAの李軍華事務次長は、この171年という数字は避けられない運命ではなく、政策の選択の結果だと指摘した。報告書は、解体が進む推進機関を立て直すこと、差別的な社会規範に取り組むこと、女性の権利団体と多様な担い手への投資を続けることの3点を優先課題に挙げている。今年の国連総会でも、加盟国の関心が安全保障や通商に向かうなかで、この分野の資金と制度をどう維持するかが問われる。