米ホワイトハウスは9月18日、対ロシア制裁を強化する法律「リンゼー・O・グラハム対ロシア・イラン制裁法2026」(H.R.5334)に大統領が署名し、成立したと発表した。ホワイトハウスは同法について「ロシアに対する法定の制裁・関税・禁止措置を認め、拡大するとともに、イランに対する既存の制裁を延長する」と説明している。日本を含む同盟国にも関わるのは、ロシア産の原油や天然ガスを買い続ける「第三国」に高関税を課す条項だ。
ロシア産ガスの購入国に最大100%
法律の第113条は、ロシア産の原油または天然ガスの購入国に対する関税を定める。対象となるのは、(1)法律の成立から30日を過ぎた日以降に、ロシア産の原油または天然ガスを新たに購入したことを知りながら行い、(2)成立前の直近12か月間に、ロシア産の原油または天然ガスの輸入量が総量ベースで上位5か国に入っていた国――である。ロシア産石油の制裁逃れを助けた上位5か国も別に対象になる。
大統領は成立から30日以内に、これらの国からの輸入品すべてについて、最大100%の従価税(品物の価格に対して課す税)まで関税率を引き上げなければならない。この関税は、既存の関税やアンチダンピング税などに「上乗せ」される。対象の判定は一度きりではなく、USTRが国務長官・エネルギー長官と協議のうえ、最初の関税発動から180日ごとに、直近12か月の原油上位5か国とガス上位5か国を洗い直して課税する。
ロシアからの輸入品そのものにも、第112条で最大500%の従価税を課す。対象には原油、天然ガス、LNG、石油製品、石化製品、石炭が明記された。このほか、ロシアの大統領・首相・国防相ら政府高官への資産凍結、米国産エネルギーのロシア向け輸出の禁止、ロシア産ウランの輸入禁止も盛り込まれた。法律の効力は成立から5年で切れる(イラン制裁法の2031年までの延長を除く)。
日本のLNGの8.9%はロシア産
日本にとっての焦点は、天然ガスだ。資源エネルギー庁が今年3月の審議会に出した資料(出典は財務省貿易統計)によると、日本の2025年のLNG輸入量は約6498万トンで、国別ではオーストラリアが39.7%、マレーシアが14.8%に続き、ロシアが8.9%で3番目に多い。単純計算で年約578万トンにあたる。大半は日本企業が権益を持つサハリン2からの調達で、政府はエネルギー安全保障上の重要な供給源と位置づけて輸入を続けてきた。一方、原油の中東依存度は94.0%で、同じ資料の輸入先の内訳にロシアは個別に表示されていない。
「15%未満」なら除外される
ただし法律には逃げ道がある。第113条(d)は、天然ガスの輸入を理由とする関税について、(1)その国の直近12か月のロシア産天然ガス輸入量が、同じ期間のロシアの年間ガス輸出総量の15%未満であり、(2)その国がロシア産ガスの輸入を減らす相当の取り組みを進めている――の両方を満たす場合、関税を課さないと定める。パイプラインを含むロシアのガス輸出全体と比べる規定のため、日本のLNG輸入量がこの閾値に届くかどうかが分かれ目になる。
もっとも、上位5か国に入るかの判定も、除外規定を満たすかの判断も、米側が握る。大統領は国益に資すると議会に証明すれば、制裁も関税も個別に免除できる(第115条)。関税をかける10日前までに、率の根拠と対象国の認定方法を議会に文書で示すことも義務づけられており、どの国がどう扱われるかは10月下旬以降、米側の文書で順次明らかになる見通しだ。
