警察庁は10日、令和8年上半期(1〜6月)のサイバー空間をめぐる脅威の情勢を公表した。企業・団体から警察に報告されたランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の被害は123件で、報告の集計を始めた令和2年下半期以降、半期の件数として最も多い。これまでの最多は令和4年下半期と令和7年上半期の116件だった。
ランサムウェアは、社内のサーバーやパソコンのファイルを勝手に暗号化して使えなくし、元に戻す鍵と引き換えに金銭を要求する攻撃だ。近年は暗号化に加え、盗んだデータを「払わなければ公開する」と脅す二重の要求が一般的になっている。
中小企業が79件、製造業が最多
被害を報告した企業・団体の規模別では、中小企業が79件で全体の6割を超えた。大企業は31件、団体等が13件となっている。
業種別では製造業が37件で突出して多い。次いで卸売・小売業が15件、情報通信業と不動産業・物品賃貸業、医療・福祉がそれぞれ9件、建設業が8件と続く。教育・学習支援業も7件あった。
警察庁の統計は「警察に報告があったもの」を数えたものであり、実際の被害はこれを上回るとみられる。それでも規模の小さい事業者に偏って被害が集中している構図は、統計上はっきり表れている。
復旧まで2か月以上が8件、費用が1億円を超えた例も4件
被害から立ち直るまでにかかった時間を答えた48件のうち、即時から1週間未満で復旧できたのは17件にとどまった。1週間以上1か月未満が6件、1か月以上2か月未満が4件、2か月以上が8件で、13件は集計の時点でなお復旧作業が続いている。
復旧にかかった費用は、1000万円以上5000万円未満が11件で最も多い。5000万円以上1億円未満が6件、1億円以上も4件あった。100万円未満で収まったのは6件だ。工場やシステムが止まれば売上も止まるため、身代金を払うかどうかとは別に、原因の調査や機器の入れ替え、データの復元にこれだけの負担がかかる。
ネット詐欺の被害額は1755億円、フィッシング報告は4割減
インターネットを利用した犯罪の認知件数は上半期で3万838件となり、前年同期の2万3747件から増えた。このうち詐欺が2万6957件を占める。
被害額はさらに大きく動いている。インターネットを利用した詐欺の被害額は1755億円で、前年同期の1209億円の1.45倍になった。利用された手段別では、通話・通信アプリを使ったものが833億円から1473億円へ跳ね上がり、被害額全体の8割を占める。逆に電子メールを使った詐欺は158億円から48億円へ減った。
一方で減った指標もある。フィッシングの報告件数は前年同期の119万6000件から73万1000件へ減少した。インターネットバンキングの不正送金被害額も42億2400万円から20億6580万円へほぼ半減している。ただし内訳を見ると、個人の被害が19億4877万円から3億2291万円へ大きく減ったのに対し、法人の被害は22億7523万円から17億4289万円への減少にとどまり、被害の中心は法人へ移った。
特殊詐欺は認知件数が1万8623件から2万2031件へ、被害額は1197億円から1816億円へ増えた。手口別の被害額はSNS型投資詐欺が353億円から798億円、ニセ警察詐欺が399億円から508億円と伸びている。
警察庁は今回の統計データを同庁ウェブサイトの「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」で公開している。前年にあたる令和7年の通年の情勢は、今年3月に同じ形で公表された。
