国際エネルギー機関(IEA)は9月11日、月次の石油市場リポートを公表し、2026年の世界の石油供給が1日あたり1億70万バレルにとどまり、前年から570万バレル減るとの見通しを示した。8月のリポートから130万バレルの下方修正で、中東の湾岸産油国からの供給が本格的に戻る時期を2027年へ先送りした。
湾岸では日量1000万バレル超が止まったまま
IEAによると、8月の世界の石油生産は前月から160万バレル減り、1日あたり1億10万バレルだった。湾岸では安全上のリスクを理由に、1000万バレルを超える生産が止まったままになっている。
バレルは石油の取引で使う単位で、1バレルは約159リットル。日量1億バレルは、世界全体が1日に消費する石油の量にほぼ等しい。湾岸で止まっている1000万バレルは、その1割にあたる規模だ。
原油の輸送路であるホルムズ海峡について、IEAは原油の供給の落ち込みが45%をやや下回る水準まで縮まったとしている。海峡を迂回する輸送が増えたことに加え、米軍が護衛に付き、海峡を通る輸送を守っていることが支えになったという。
IEAは、米国とイランの交渉が行き詰まったままであることが、供給が正常に戻る時期を来年へ押しやっていると説明した。
在庫は2月からの累計で5億700万バレル取り崩し
在庫の取り崩しが続いている。8月の世界の石油在庫は9500万バレル減った。2月からの累計は5億700万バレルで、1日あたりに直すと280万バレルのペースになる。経済協力開発機構(OECD)に加盟していない国では中国を中心に5200万バレル減り、OECD加盟国では逆に2300万バレル増えた。
価格には上昇圧力がかかっている。指標原油の北海ダーテッドは8月の平均が1バレル91.00ドルで、前月から7.61ドル上がった。9月9日には113.48ドルを付けている。
値上がりが最も激しいのは軽油
品目別では軽油(ディーゼル)のひっ迫が際立つ。米国の軽油価格は9月初めに1バレル200ドルを超え、戦闘が始まる前の水準を94%上回った。ほぼ2倍である。
需要の見通しも下振れした。IEAは2026年の世界の石油需要が250万バレル減るとみており、8月のリポートから94万バレル分、落ち込みを深めている。減少は軽油や灯油、ジェット燃料といった「中間留分」と、プラスチックなどの原料になる石油化学向けに集中し、とくにアジアで大きいという。
製油所の稼働も細っている。8月の処理量は夏場のピークで日量8140万バレルとなり、前月から96万バレル増えたものの、1年前を420万バレル下回った。2026年通年では260万バレル減の8150万バレルを見込む。大西洋圏の製油所は記録的な利幅を得ている一方、シンガポールでは輸送費の高さが採算を圧迫している。
1974年の石油危機を機に生まれた組織
IEAは1974年、1973年から74年にかけての石油危機を受けて設立された。産油国による石油の禁輸で価格が当時としては歴史的な水準まで上がり、石油の輸入に頼る先進国のもろさが表面化したことがきっかけだった。加盟国が協調して緊急時に動く仕組みを整えることが、設立時の柱の一つである。毎月の石油市場リポートは、その分析を外部に示す中心的な手段になっている。
IEAは2027年について、供給が800万バレル戻り、需要も260万バレル回復するとの見通しを示している。いずれも湾岸の生産が戻ることを前提にした数字で、IEAはその時期を米国とイランの交渉の行方に結び付けている。
