政府は6月12日、令和8年版の「高齢社会白書」を閣議決定し、公表した。白書によると、2025年(令和7年)10月時点で、総人口に占める65歳以上の割合を示す「高齢化率」は29.4%となり、過去最高を更新した。

高齢化率29.4%とは何を意味する数字か

高齢化率は、その国の人口のうち65歳以上がどれくらいを占めるかを示す数字だ。29.4%は、およそ3.4人に1人が65歳以上という水準にあたる。前の年の29.3%からわずかに上がり、日本の高齢化率は毎年、過去最高を更新し続けている。

この数字は「高齢者が増えた」ことだけを表しているわけではない点に注意がいる。割合である以上、分母である総人口が減っても上がる。実際、日本の総人口は減少が続いており、高齢化率の上昇は、高齢者の増加と総人口の減少の両方によって起きている。

白書は、高齢社会対策基本法に基づいて、政府が毎年国会に提出している年次報告書だ。高齢化がどこまで進んでいるかという現状と、政府が高齢者向けにどんな対策をとったか、今後どんな施策を進めるかをまとめている。閣議決定を経て公表されるため、政府が高齢化の何を課題として認識しているかを示す文書でもある。

2070年に38.7% 「2.6人に1人」が65歳以上

今後の見通しも示された。国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとにすると、高齢化率は上がり続け、2070年(令和52年)には38.7%に達するとされる。これは、およそ2.6人に1人が65歳以上になる計算だ。

子どもの数が減る少子化が進む一方で高齢者の割合が増えるため、社会全体で高齢者を支える若い世代の負担が重くなっていく。現役世代の一人ひとりが支える高齢者の人数が増えるという形で、年金や医療、介護の仕組みに圧力がかかる構図である。

一人暮らしの高齢者が増える

白書は、65歳以上で一人暮らしをする人が増えていることも取り上げた。核家族化が進んだことや、生涯結婚しない人が増えたこと、配偶者と死別した後に一人で暮らす人が多いことなどが理由だ。

一人暮らしの高齢者が増えると、周囲とのつながりが薄れて孤立しやすくなったり、災害時に逃げ遅れたりする恐れがある。これは本人の努力だけで解決できる問題ではなく、地域での見守りや支え合いの仕組みづくりが課題になる。自治体が進める見守りネットワークや、民生委員による訪問といった取り組みが、こうした背景から重みを増している。

高齢化は、年金や医療、介護といった社会保障の費用が増える要因にもなる。政府は白書で、働く意欲のある高齢者が活躍できる環境づくりや、健康に過ごせる期間を延ばす取り組みなどを進める方針を示している。

最新の人口推計では「中身」が動いている

白書が示すのは長期の姿だが、足元ではより細かい変化が進んでいる。総務省統計局が2026年8月20日に公表した人口推計によると、2026年3月1日現在の65歳以上人口は3620万2千人で、前年同月から1万5千人(0.04%)増とほぼ横ばいだった。

一方、そのうち75歳以上は2148万8千人と、1年で47万9千人(2.28%)増えている。差し引きすると65〜74歳は46万4千人減った計算で、高齢者の総数はほぼ変わらないまま、中身が75歳以上へ移っている。65歳以上に占める75歳以上の割合は59.4%と、およそ6割に達した。

75歳以上が増えることの意味は、高齢化率の上昇とは別にある。医療保険では原則として75歳から後期高齢者医療制度に移り、介護の必要度も年齢が上がるほど高くなる。高齢者の頭数が頭打ちでも、75歳以上が増え続ければ医療や介護の需要は増える。白書が描く2070年の姿へ向かう途中で、まずこの構成変化への対応が求められることになる。

「高齢者」の定義そのものも議論に

高齢化の進み方が変わるなかで、政府は「高齢者」を何歳からとするかという定義そのものの見直しにも着手している。65歳という線引きは、年金の支給開始年齢や各種の支援制度、統計の区分など、制度全体に幅広く使われてきた。

平均寿命が延び、65歳を過ぎても働く人が増えている実態と、制度上の区切りが合わなくなっているという問題意識がある。高齢化率という数字も、どこから高齢者と数えるかで大きく変わるため、定義の見直しは統計の見え方にも直結する。