政府は6月12日、令和8年版の「高齢社会白書」を閣議決定し、公表した。白書によると、2025年(令和7年)10月1日時点で、総人口に占める65歳以上の割合を示す「高齢化率」は29.4%となり、過去最高を更新した。その後、総務省統計局が9月20日に公表した2026年(令和8年)9月15日現在の推計では、高齢化率は29.6%とさらに上がっている。
高齢化率とは 分子と分母は何か
高齢化率は、その国の人口のうち65歳以上がどれくらいを占めるかを示す数字だ。計算はごく単純で、分子が65歳以上の人口、分母がすべての年齢を含む総人口である。
白書が示した2025年10月1日時点の数字を当てはめると、分子は3622万人、分母は1億2322万人で、割ると29.4%になる。およそ3.4人に1人が65歳以上という水準だ。元になっているのは総務省の「人口推計」で、令和2年国勢調査を基準とする確定値である。
内訳を見ると、65歳以上3622万人のうち「65〜74歳」が1495万人、「75歳以上」が2127万人だった。総人口に対する割合ではそれぞれ12.1%と17.3%で、75歳以上のほうが65〜74歳より多い。男女別の高齢化率は男性26.2%、女性32.4%で、女性のほうが6.2%分高い。女性人口100人に対する男性人口を示す性比は、65歳以上全体で76.5、75歳以上では66.9まで下がる。長生きする女性のほうが高齢層に多く残るためだ。
この数字は「高齢者が増えた」ことだけを表しているわけではない点に注意がいる。割合である以上、分母である総人口が減っても上がる。実際、日本の総人口は減少が続いており、高齢化率の上昇は、高齢者の増加と総人口の減少の両方によって起きている。
白書は、高齢社会対策基本法に基づいて、政府が毎年国会に提出している年次報告書だ。高齢化がどこまで進んでいるかという現状と、政府が高齢者向けにどんな対策をとったか、今後どんな施策を進めるかをまとめている。閣議決定を経て公表されるため、政府が高齢化の何を課題として認識しているかを示す文書でもある。
2026年9月の最新推計は29.6% 世界39か国で最も高い
白書の29.4%は2025年10月1日時点の数字だ。より新しい数字は、総務省統計局が敬老の日に合わせて9月20日に公表した統計トピックス「統計からみた我が国の高齢者」にある。2026年9月15日現在の推計で、65歳以上人口は3624万人と前年の3622万人から2万人増え、総人口1億2262万人に占める割合は前年の29.4%から29.6%に上がった。統計局は「過去最高」としている。2026年の値は人口推計の概算値から推計したもので、2025年の値は令和2年国勢調査を基準とする確定値から推計したものである。
男女別では、男性が1571万人で男性人口の26.3%、女性が2054万人で女性人口の32.6%だった。女性が男性より483万人多い。
年齢をさらに区切ると、高齢者の中での入れ替わりが見える。
| 区分(2026年9月15日現在) | 人口 | 総人口に占める割合 | 前年からの増減 |
|---|---|---|---|
| 65歳以上 | 3624万人 | 29.6% | 2万人増 |
| 70歳以上 | 2911万人 | 23.7% | 8万人増 |
| 75歳以上 | 2168万人 | 17.7% | 43万人増 |
| 80歳以上 | 1288万人 | 10.5% | 3万人減 |
出典は総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」の表1と本文。75歳以上は1年で43万人増え、総人口に占める割合も17.2%から17.7%に上がった。一方で65歳以上全体は2万人増にとどまり、80歳以上は3万人減って割合は10.5%のまま変わらなかった。65歳以上の総数がほぼ横ばいのまま、75歳以上の比重が上がっている。
国際比較でも日本は突出している。統計局が人口4000万以上の39か国について2026年の65歳以上の割合を並べたところ、日本の29.6%が最も高く、イタリアの25.6%、ドイツの24.2%、フランスの22.9%、スペインの22.2%、韓国の21.4%が続いた。2位のイタリアとも4.0%分の開きがある。高齢化率を「日本の数字」として確かめたい場合、白書の29.4%(2025年10月)と統計局の29.6%(2026年9月)は時点の違いであり、どちらも人口推計に基づく公式の値である。
1950年の4.9%から2025年の29.4%へ 推移をたどる
白書の図1-1-2は、1950年(昭和25年)から2070年(令和52年)までの高齢化率を1本の線で示している。2020年までは国勢調査、2025年は人口推計の確定値、2030年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」の出生中位・死亡中位の推計値である。10年ごとの実績値と直近の2025年を抜き出すと、上がり方の形が見える。
| 年 | 高齢化率 |
|---|---|
| 1950年(昭和25年) | 4.9% |
| 1960年(昭和35年) | 5.7% |
| 1970年(昭和45年) | 7.1% |
| 1980年(昭和55年) | 9.1% |
| 1990年(平成2年) | 12.1% |
| 2000年(平成12年) | 17.4% |
| 2010年(平成22年) | 23.0% |
| 2020年(令和2年) | 28.6% |
| 2025年(令和7年) | 29.4% |
戦後の20年ほどは5%前後でほとんど動いていない。上がり始めるのは1970年代からで、1990年から2010年の20年間に12.1%から23.0%へとほぼ倍になった。一方、2020年の28.6%から2025年の29.4%までは0.8%分の上昇にとどまる。直近の5年は、それ以前に比べて上昇のペースが鈍っている。
将来推計 2070年に38.7%、総人口は8700万人へ
推計値のほうも同じ図に示されている。
| 年 | 高齢化率 | 総人口 |
|---|---|---|
| 2025年(令和7年・実績) | 29.4% | 1億2322万人 |
| 2030年(令和12年) | 30.8% | 1億2012万人 |
| 2040年(令和22年) | 34.8% | 1億1284万人 |
| 2050年(令和32年) | 37.1% | 1億469万人 |
| 2060年(令和42年) | 37.9% | 9615万人 |
| 2070年(令和52年) | 38.7% | 8700万人 |
2070年の38.7%は、およそ2.6人に1人が65歳以上という計算だ。総人口に占める75歳以上の割合も25.1%まで上がり、約4人に1人が75歳以上になると見込まれている。
ここで見落としやすいのが、65歳以上の人口そのものは増え続けるわけではないという点だ。白書は、65歳以上人口が2043年(令和25年)に3953万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計している。それでも高齢化率が上がり続けるのは、分母の総人口がより速く減るからである。上の表で総人口が2025年の1億2322万人から2070年の8700万人へ、45年で3622万人減る見通しになっているのがその中身だ。
現役世代の負担という形で見ると変化はもっと急だ。白書は65歳以上1人を15〜64歳が何人で支えるかを示している。1950年(昭和25年)は65歳以上1人に対して現役世代12.1人だったが、2025年には2.0人になった。2070年には1.3人という比率になると見込まれる。年金や医療、介護の仕組みに圧力がかかる構図である。
7%から14%まで24年 国際比較で見る日本の速さ
高齢化の「速さ」を国際比較するとき、白書が使うのは倍加年数という指標だ。高齢化率が7%を超えてから、その倍の14%に達するまでに何年かかったかを数える。
日本は1970年に7%を超え、24年後の1994年(平成6年)に14%へ達した。同じ指標で、フランスは127年、スウェーデンは85年、アメリカは72年、イギリスは46年、ドイツは40年かかっている。日本はドイツよりさらに16年短く、フランスの5分の1以下の年数で通過した。上の推移表では1970年が7.1%で、その24年後の1994年に14%へ達したことになる。表は10年ごとなので1994年の行は無いが、1990年の12.1%と2000年の17.4%の間に当たる。
もっとも、この速さは日本だけのものではなくなっている。白書によれば韓国は2000年から18年後の2018年に、シンガポールは2005年から20年後の2025年に14%へ達し、中国も2000年から23年で2023年に到達した。いずれも日本の24年を下回るか、ほぼ並ぶ速さだ。高齢化への対応が「日本固有の課題」から「アジア共通の課題」へ移りつつあることを示している。
この水準は国際的に見ても突出している。内閣府が国連の推計をもとにまとめた国際比較では、世界全体の高齢化率は2060年でも18.5%、先進地域に限っても28.6%と見込まれており、60歳以上が2050年に21億人へ 国連「高齢者の日」テーマは「長寿の時代」 100歳以上は4倍超にで示したとおり、日本はその先進地域の2060年の水準を2020年の時点で通過している。
都道府県別 最も高い秋田は39.5%、最も低い東京は22.7%
全国の29.4%は平均の数字で、都道府県ごとに見ると開きは大きい。白書の表1-1-10は、総務省「人口推計」による2024年(令和6年)10月1日時点の都道府県別の高齢化率と、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」による2050年(令和32年)の見通しを並べている。全国値の29.4%は2025年時点、都道府県別の値は2024年時点で、基準の年が1年ずれている点には注意がいる。
| 都道府県 | 2024年 | 2050年(推計) |
|---|---|---|
| 秋田県 | 39.5% | 49.9% |
| 高知県 | 36.6% | 45.6% |
| 青森県 | 35.7% | 48.4% |
| 徳島県 | 35.7% | 44.8% |
| 愛知県 | 25.8% | 34.5% |
| 沖縄県 | 24.2% | 33.6% |
| 東京都 | 22.7% | 29.6% |
2024年に最も高いのは秋田県の39.5%で、2.5人に1人が65歳以上という水準になる。最も低い東京都は22.7%で、秋田県との差は16.8%分ある。35%を超えたのは秋田、高知、青森、徳島、山形(35.6%)、山口(35.5%)、岩手(35.4%)、島根(35.2%)の8県で、東北と中国・四国に集まる。25%を下回ったのは東京都と沖縄県の2都県だけだった。75歳以上に限った割合でも秋田県が22.0%で最も高く、高知県の21.6%、山口県の20.9%が続く。
白書は、2050年には高齢化率が全ての都道府県で上がると見込む。秋田県は49.9%と、ほぼ2人に1人が65歳以上になる。40%以上になるのは47都道府県のうち25道県で、45%を超えるのは秋田、青森(48.4%)、岩手(45.9%)、高知(45.6%)の4県だ。最も低い東京都でも29.6%と、2025年の全国平均とほぼ同じ水準に達する。
高齢化は地方だけの話ではない。上がり幅が最も大きいのは青森県で、35.7%から48.4%へ上がる。白書は首都圏の例として、埼玉県が27.5%から35.5%へ、神奈川県が26.0%から35.0%へ上がる見通しも挙げ、高齢化が大都市圏を含めて全国に広がるとしている。上がり幅が最も小さいのは島根県で、35.2%から39.7%への上昇にとどまる。都市の規模別に65歳以上人口の動きを示した図1-1-11では、2020年を基準にすると人口5万人未満の都市以外では65歳以上人口が増え、2045年(令和27年)以降は大都市以外で減少に転じる見込みだ。高齢者の数が増え続けるのは主に大都市で、地方では高齢者の数が減りながら割合だけが上がる局面に入っていく。
なぜ上がるのか 平均寿命と出生数の両側から
高齢化率が上がる理由は、長生きする人が増えることと、生まれる子どもが減ることの2つに分けられる。
白書によると、平均寿命は令和6年現在で男性81.09年、女性87.13年。2070年には男性85.89年、女性91.94年まで延びると見込まれている。男性は4.80年、女性は4.81年延びる計算だ。寿命が延びれば65歳以上の層に人がとどまる期間が長くなり、分子が押し上げられる。
もう一方の出生数は、2070年に45万人まで減ると推計されている。子どもが減れば、時間をかけて分母全体が縮む。この見通しの手前にある実態は、第17回出生動向基本調査 未婚者の結婚意思は男性75.1%・女性77.8%に低下 夫婦の予定子ども数1.95人で初の2人割れで整理したとおりで、夫婦が予定する子どもの数が初めて2人を割った。
一人暮らしの高齢者が増える
白書は、65歳以上で一人暮らしをする人が増えていることも取り上げた。65歳以上の男女それぞれの人口に占める一人暮らしの割合は、1980年(昭和55年)には男性4.3%、女性11.2%だった。2020年(令和2年)には男性15.0%、女性22.1%に上がり、2050年(令和32年)には男性26.1%、女性29.3%になると見込まれている。2050年には、65歳以上の女性のおよそ3.4人に1人が一人で暮らす計算だ。
世帯の側から見ても変化ははっきりしている。65歳以上の人がいる世帯は2024年(令和6年)現在で2760万4千世帯と、全世帯5482万5千世帯の50.3%を占める。1980年には三世代世帯がその半数を占めていたが、2024年には夫婦のみの世帯と単独世帯がそれぞれ約3割となった。核家族化が進んだことや、生涯結婚しない人が増えたこと、配偶者と死別した後に一人で暮らす人が多いことなどが背景にある。
一人暮らしの高齢者が増えると、周囲とのつながりが薄れて孤立しやすくなったり、災害時に逃げ遅れたりする恐れがある。これは本人の努力だけで解決できる問題ではなく、地域での見守りや支え合いの仕組みづくりが課題になる。自治体が進める見守りネットワークや、民生委員による訪問といった取り組みが、こうした背景から重みを増している。孤立の度合いには男女差もあり、頼れる人も相談相手もいない男性は9.4% 女性3.1%の3倍 最も高いのは50代男性の13.5% 孤立死の推計2万2222人も8割が男性のとおり、内閣府の全国調査では困った時に頼れる人も相談相手もいない人の割合が男性9.4%、女性3.1%となっている。
高齢化は、年金や医療、介護といった社会保障の費用が増える要因にもなる。政府は白書で、働く意欲のある高齢者が活躍できる環境づくりや、健康に過ごせる期間を延ばす取り組みなどを進める方針を示している。
医療の中身も高齢化と無関係ではない。海外で承認されながら日本で開発が始まっていない医薬品がどれだけあるかは、日本が抗がん剤審査の国際枠組み「Project Orbis」に正式参加 米国など8か国に次ぐ9か国目 国内で開発が始まっていない「ドラッグ・ロス」28品目のうち10品目はがん領域で整理している。
最新の人口推計では「中身」が動いている
白書が示すのは長期の姿だが、足元ではより細かい変化が進んでいる。総務省統計局が2026年8月20日に公表した人口推計によると、2026年3月1日現在の65歳以上人口は3620万2千人で、前年同月から1万5千人(0.04%)増とほぼ横ばいだった。
一方、そのうち75歳以上は2148万8千人と、1年で47万9千人(2.28%)増えている。差し引きすると65〜74歳は46万4千人減った計算で、高齢者の総数はほぼ変わらないまま、中身が75歳以上へ移っている。65歳以上に占める75歳以上の割合は59.4%と、およそ6割に達した。
75歳以上が増えることの意味は、高齢化率の上昇とは別にある。医療保険では原則として75歳から後期高齢者医療制度に移り、介護の必要度も年齢が上がるほど高くなる。高齢者の頭数が頭打ちでも、75歳以上が増え続ければ医療や介護の需要は増える。白書が描く2070年の姿へ向かう途中で、まずこの構成変化への対応が求められることになる。この需要を受け止める現場の側の状況は、令和8年版厚生労働白書を公表 介護職の有効求人倍率3.98倍、病院の58.0%が経常赤字 テーマは「医療・介護・福祉の現場で働くこと」にまとめている。2025年度の有効求人倍率は介護関係職種で3.98倍に達し、2024年度の決算では経常利益が赤字の病院が58.0%を占めた。
「高齢者」の定義そのものも議論に
高齢化の進み方が変わるなかで、政府は「高齢者」を何歳からとするかという定義そのものの見直しにも着手している。65歳という線引きは、年金の支給開始年齢や各種の支援制度、統計の区分など、制度全体に幅広く使われてきた。
白書自身も、コラム「『高齢者』とは」で、高齢者という用語は文脈や制度ごとに対象が異なり一律の定義がないと明記している。令和6年9月に閣議決定された「高齢社会対策大綱」は、平均寿命が世界で最も高い水準にあり65歳以上の就業者も増え続けている状況を踏まえ、「65歳以上を一律に捉えることは現実的ではない」とした。白書はこれを受け、統計や制度の定義に従う場合を除いては、一般通念上の「高齢者」を広く指す語として使うとしている。
学会側からはより踏み込んだ提案も出ている。日本老年学会・日本老年医学会の「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ報告書」(平成29年3月)は、75歳以上を高齢者の新たな定義とすることを提案した。日本老年学会が令和6年6月にまとめた報告書も同じ意義を確認したうえで、年齢にかかわらず希望と能力に応じて参加と活動ができる「エイジフリーな社会」を目指すべきだと提言している。
高齢化率という数字も、どこから高齢者と数えるかで大きく変わる。仮に75歳以上を分子にすれば、2025年の割合は29.4%ではなく17.3%になる。9月29日に公表された令和7年国勢調査の実測でも、65歳以上の割合は白書と同じ29.4%、75歳以上は17.2%だった(65歳以上の割合は秋田40.0%・東京22.8% 令和7年国勢調査の実測で全国29.4% 47都道府県すべてで15歳未満を上回る)。定義の見直しは、統計の見え方そのものに直結する。
分母である総人口が実際にどこまで減ってきたかは日本の総人口は1億2265万人 2026年9月1日現在の概算値で1年前より54万人減 2016年からの9年間で382万人減った 日本人人口は569万人減で追っている。
