内閣府と財務省は9月11日、企業に景気の見方を尋ねる「法人企業景気予測調査」の2026年7〜9月期の結果を公表した。大企業のうち、景況が前の3か月より「上昇」と答えたのは13.2%、「下降」は7.9%で、上昇が下降を上回った。同じ調査で実施した人手不足の特別調査では、経営への影響として「業務負担・勤務時間の増加」を挙げた大企業が62.8%に上り、10項目のうち最も多い。

大企業は改善が優勢、中小企業は弱さが続く

この調査は「上昇」と答えた企業の割合から「下降」の割合を引いた数字を景況判断BSI(ビジネス・サーベイ・インデックス)と呼び、企業の景況感を表す物差しに使っている。今回はその差が5.3で、プラスは2期ぶりだ。調査は8月15日時点の状況を尋ねている。

直前の4〜6月期は「上昇」が11.7%、「下降」が12.3%で、下降がわずかに上回っていた。7〜9月期はこの関係が逆転した形になる。大企業を業種別にみると、製造業は「上昇」17.4%に対し「下降」9.8%、非製造業は「上昇」11.2%に対し「下降」7.0%で、いずれも上昇が優勢だ。5月の前回調査で7〜9月期を見通した時点の差は4.3で、実績はこれを上回った。

規模が小さいほど景況感は弱い。中堅企業は「上昇」15.9%、「下降」15.1%とほぼ拮抗し、差は0.8にとどまる。中小企業は「上昇」12.9%に対して「下降」が23.8%と倍近く、差はマイナス10.9だった。中小企業は2025年1〜3月期以降の7期すべてで下降が上昇を上回っている。

先行きの見通しでも差は残る。大企業は10〜12月期の差が6.0、2027年1〜3月期が4.6とプラスが続く一方、中小企業は10〜12月期がマイナス2.8、1〜3月期がマイナス6.4と、マイナスから抜け出せない姿を描いている。

人手不足、大企業は「業務負担」中小は「人件費」

人手不足の影響を尋ねた特別調査は、10項目から3つ以内を選ぶ複数回答で実施された。大企業全産業では「業務負担・勤務時間の増加」62.8%に続き、「賃上げに伴う人件費の上昇」41.7%、「採用コストの増加」41.5%、「技術伝承・人材育成の停滞」37.7%の順に多い。

最も重要な影響を1つだけ選ぶと、大企業は「業務負担・勤務時間の増加」31.6%が首位で、「人件費の上昇」23.4%が続く。中小企業では順位が入れ替わり、「人件費の上昇」29.9%が最多、「業務負担・勤務時間の増加」は16.2%にとどまった。人手不足が、大企業では残った社員の負担として、中小企業では賃金コストとして現れている。

深刻さの差がはっきり出たのが「事業の縮小・撤退」だ。中小企業で16.6%と6社に1社が挙げたのに対し、大企業は4.7%にとどまる。「受注量・生産量の制限」も中小企業29.4%に対し大企業17.1%だった。ただし大企業製造業に限れば、この項目は前年調査の20.5%から24.3%へ増えている。

「撤退」は減り、「省力化投資」が増えた

この特別調査は前年の同じ時期(2025年7〜9月期調査)にも実施されており、10項目すべてで前年との比較ができる。中小企業の「事業の縮小・撤退」は前年調査の17.7%から16.6%へ1.1下がった。数としてはなお6社に1社だが、増えているわけではない。

同じ方向の動きは、より件数の多い項目でも起きている。中小企業の「受注量・生産量の制限」は31.6%から29.4%へ、「サービス・品質の低下」は30.1%から28.4%へ下がった。「賃上げに伴う人件費の上昇」も48.5%から47.1%へわずかに下がっている。中小企業で唯一はっきり増えたのが「無人化・省力化投資の増加」で、6.0%から7.7%になった。

大企業でも似た形になっている。「業務負担・勤務時間の増加」は63.3%から62.8%、「賃上げに伴う人件費の上昇」は42.9%から41.7%、「採用コストの増加」は42.2%から41.5%、「事業の縮小・撤退」は5.2%から4.7%と、いずれも小幅に下がった。増えたのは「無人化・省力化投資の増加」の16.8%から18.3%と、「受注量・生産量の制限」の16.3%から17.1%である。中堅企業も「無人化・省力化投資の増加」が8.1%から10.0%へ上がった。

人手が足りないという事実は変わっていないのに、「受注を断る」「事業をたたむ」という形で表れる割合が減り、機械や仕組みへの投資で埋める割合が増えている。全規模で増えた項目が省力化投資だけという点が、この1年の変化を示している。

中小企業でも製造業と非製造業で中身が違う

同じ中小企業でも、業種によって人手不足の出方は異なる。「事業の縮小・撤退」を挙げた中小企業は、非製造業が17.3%に対して製造業は12.8%で、店や事業所を閉じる圧力は非製造業のほうが強い。1年でこの差が開いた。非製造業は前年調査の17.8%から17.3%へ0.5下がっただけだが、製造業は16.9%から12.8%へ4.1下がっている。

一方、中小製造業で重いのは受注と技術の問題だ。「受注量・生産量の制限」は39.8%(非製造業27.5%)、「技術伝承・人材育成の停滞」は42.0%(同28.7%)に達する。人がいないために注文を受けきれず、同時に技術を次の世代へ渡せないという二重の詰まりが起きている。大企業製造業でも「技術伝承・人材育成の停滞」は48.1%で、規模を問わず製造業に共通する課題になっている。

逆に非製造業で目立つのは「サービス・品質の低下」で、中小非製造業が29.6%、大企業非製造業が28.3%。製造業(中小21.5%、大企業19.7%)より高い。人手が足りないと、製造業では作る量が減り、非製造業では提供するものの質が落ちる、という違いが数字に出ている。

人手が足りないまま売上が伸びる状態は、月次の統計にも現れている。総務省統計局のサービス産業動態統計調査によると、2026年7月のサービス産業の売上高は38兆3553億円で前年同月比5.0%増えたが、事業従事者数の増加は0.6%にとどまった(サービス業の7月の売上高38.4兆円、57か月連続で増加 飲食店は売上5.9%増でも働く人は0.9%減 道路貨物運送も6.7%増で1.6%減)。

人員の過不足感そのものも締まったままだ。9月末時点で従業員が「不足気味」と答えた大企業は28.0%、「過剰気味」は1.3%。中堅企業は不足気味36.4%に対し過剰気味2.1%、中小企業は31.6%に対し3.8%で、いずれも不足を訴える企業が圧倒的に多い。

設備投資は11.0%増、利益は減益予想から増益予想へ

2026年度の設備投資計画(ソフトウェアを含み土地を除く)は、全規模全産業で約51兆9445億円から約57兆6512億円へ増え、前年度比11.0%増となった。5月の前回調査時点の8.2%増から上積みされている。この計画は、2025年度と2026年度の双方に回答した8800社を基に推計したものだ。

規模別では大企業14.3%増、中堅企業16.2%増と二桁の伸びを見込む。中小企業だけは2.4%減とマイナスが残るものの、前回調査の9.2%減からは減少幅が縮んだ。

業績見通しも上向いた。2026年度の売上高は全規模全産業で前年度比4.1%増と、前回調査の3.3%増から引き上げられている。経常利益は2.3%増で、前回調査では2.4%減と減益を見込んでいたものが増益見通しに転じた。ただし中堅企業は3.0%減と、減益見通しが残っている。

日銀短観では中小企業もプラス、何が違うのか

日本銀行が10月1日に公表した全国企業短期経済観測調査(短観)の9月調査は、同じ時期の企業の景況感を別の物差しで測っている。業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた業況判断DIは、大企業製造業が6月調査の22から24へ上がり、大企業非製造業は37から35へ下がった。中小企業は全産業でプラス15で、6月調査の13から上がっている。

法人企業景気予測調査で中小企業がマイナス10.9だったのに、短観ではプラス15になるのは、尋ねている中身が違うためだ。法人企業景気予測調査は、前の四半期と比べて景況が「上昇」したか「下降」したかという変化の向きを尋ねる。短観は、いまの業況が「良い」か「悪い」かという水準を尋ねる。業況が「良い」側にある企業でも、3か月前より悪くなったと感じていれば、法人企業景気予測調査では「下降」に数えられる。

調べた時期も少しずれる。法人企業景気予測調査は8月15日時点の状況を尋ねたのに対し、短観の回答期間は8月26日から9月30日だった。短観の調査対象は9104社で、回答率は99.4%。

先行きの見方は、短観でも慎重だ。3か月後の業況判断DIは、大企業非製造業が30と今回より5下がり、中小企業全産業も11と4下がる見通しになっている。法人企業景気予測調査の中小企業は、10〜12月期がマイナス2.8、2027年1〜3月期がマイナス6.4で、「下降」が「上昇」を上回る見通しが続いている。

調査の仕組み

法人企業景気予測調査は、内閣府と財務省が共同で実施する統計だ。資本金1千万円以上の法人企業から約1万6000社を抽出し、資本金10億円以上を大企業、1億円以上10億円未満を中堅企業、1千万円以上1億円未満を中小企業と区分している。電気・ガス・水道業と金融業・保険業は資本金1億円以上が対象で、金融業・保険業では中小企業の区分を設けていない。内閣府の「法人企業動向調査」と財務省の「財務省景気予測調査」を一元化し、2004年度(平成16年度)から始まった。

今回の結果は、金融業・保険業を除く全産業で、母集団87万7075社に対し標本1万4448社、回答1万1244社、回収率77.8%に基づく。規模別の回収率は大企業が85.9%(標本4303社・回答3695社)、中堅企業が73.2%(4236社・3100社)、中小企業が75.3%(5909社・4449社)で、数が最も多い中小企業の回答が4449社にとどまる点は、中小の数字を読むうえで押さえておきたい。資本金20億円以上の階層は全数を抽出する一方、中小企業は四半期別調査の標本の約60%を抽出する設計になっている。

調査時点は5月15日、8月15日、11月15日、翌年2月15日の年4回で、結果は6月、9月、12月、3月の中旬までに公表される。次の10〜12月期調査は11月15日時点で行われ、12月中旬に結果が公表される予定だ。