総務省行政評価局は9月17日、健康保険と厚生年金保険の保険料について、同居の親族だけを雇っている会社で働く人が育児のために休んだ場合にも免除できるよう検討することを、厚生労働省の保険局長と年金局長にあっせんした。現在の制度では、こうした人は育児休業を取っても保険料が免除されない。家族4人で会社を営む世帯の女性がいったん免除を認められた後、1年半たってから「誤りだった」として返納を求められたという行政相談がきっかけになった。
1歳半の手続きで「対象外」と告げられた
相談は、相談者と夫、息子、息子の妻の4人で会社を経営し、夫が代表取締役を務めている世帯から寄せられた。4人は同居している。
息子の妻が出産し、育児に専念するため、年金事務所に育児休業による保険料免除を申し出たところ、免除が認められた。子が1歳になったときの延長も認められた。ところが子が1歳半になり、再延長の手続きのために年金事務所へ出向くと、息子の妻は免除の対象ではなく、これまでの免除は誤りだったとして、免除されていた保険料を納付するよう求められた。納得できない――というのが相談の内容である。
労働基準法の「適用除外」が保険料にまで及ぶ
育児休業中の社会保険料の免除は、健康保険法159条と厚生年金保険法81条の2に基づく。事業主が日本年金機構に申し出れば、本人が負担する分と事業主が負担する分の両方が免除される。ただし対象は、育児・介護休業法の適用を受ける人に限られている。
その育児・介護休業法でいう「労働者」は、労働基準法の「労働者」と同じ意味だと厚労省の通達で示されている。そして労働基準法116条2項は、同居の親族だけを使用する事業には同法を適用しないと定めている。家族だけで営む会社で働く人は労働基準法上の労働者ではなく、育児・介護休業法も適用されない。だから育児で休んでも保険料は免除されない、という筋道になる。
裏を返すと、同居の親族以外を1人でも雇っていれば育児・介護休業法が適用され、申し出れば免除が認められる。従業員が全員家族かどうかという一点で、扱いが分かれていることになる。
機構は確認せず、注意書きにも書かれていなかった
年金機構に提出する「育児休業等取得者申出書」に添付書類は要らず、機構は申出者が同居の親族だけを雇う事業に雇用されているかどうかを確認していなかった。
申出書の裏面と機構のホームページには、免除を受けられるのは育児・介護休業法に基づく育児休業等の期間に限ること、事業主は原則として労働者にあたらないため申し出ができないことが書かれている。しかし、同居の親族だけを雇う事業に雇用される人は対象外だとは明示されていなかった。誤った申し出がそのまま通り、後から覆る余地が残っていた。
手続きの件数自体は多い。申出書の手続きは2023年度に約105万件行われた。厚生年金保険で育児休業などによる保険料免除を受けた人は2024年度末で51万人(男性3万8千人、女性47万人)にのぼり、2021年度末の47万人から増えている。この人数には産前産後休業中の免除も含まれる。
厚労省「今後の制度改正に向けて検討すべき課題」
あっせんは、江利川毅・医療科学研究所相談役を座長とする行政改善推進会議にかけたうえで出された。同会議は2025年9月から2026年6月まで4回にわたってこの件を議論し、「育児のために働けなくなり、収入がなくなった場合、保険料を免除するのが筋であろう」「同居の親族以外の者が1人でも雇用されている事業と比べると、公平とはいえないのではないか」といった意見が出た。
あっせんの内容は2つある。1つは、同居の親族だけを雇う事業に雇用される人が育児で休んだ場合にも保険料を免除することを検討すること。その際、育児・介護休業法の適用を受けない人の免除要件や、不正な申し出による免除を防ぐ検査の方法を整理するよう求めた。もう1つは、当面の運用として、誤った申し出を防ぐために申出書の様式見直し、業務処理マニュアルの整備、周知の工夫といった措置を講じることだ。
厚労省保険局と年金局は「今後の制度改正に向けて検討すべき課題としたい」と答えた。その一方で、家族だけの事業での「休業」を労働基準法が適用される労働者の休業と同じように扱えるのか、育児休業をどう定義するのかといった論点があるとしている。総務省は、措置の結果を2027年3月17日までに知らせるよう求めた。
