産業技術総合研究所(産総研)は9月17日、千葉県の地下の地質構造を立体的に示した「都市域の地質地盤図」に、新たに「千葉県中央部」と「千葉県北部延長域」の2区域を加えたと発表した。千葉県環境研究センターとの共同研究で、4000地点に及ぶボーリング調査のデータを解析し、地下数十メートルまでの地層の広がりを3次元で可視化した。2018年に立体図を公開した「千葉県北部地域」と合わせ、千葉県の中央部から北部までを網羅する3次元地質地盤図が初めて整った。

昔の谷を埋めた軟弱層の形が見える

都市域の地質地盤図は、土木・建設工事で掘られた大量のボーリングデータをもとに、地下の地層の分布を3次元で解析した地質図だ。地層の重なりを平面図・断面図・立体図で表示でき、解析に使った基準ボーリングデータもそのまま閲覧できる。産総研地質調査総合センターのウェブサイトで、誰でも無償で見られる。

今回の解析で立体的に示されたのが、低い土地の地下に広がる沖積層の形だ。沖積層は、最終氷期の最盛期(約2万年前)以降に川沿いや沿岸に積もった地層で、水分を多く含むため軟らかいことが多い。最終氷期の最盛期には氷床の発達で海水が減り、海面は現在より120〜130メートルも低かった。そのため川の侵食で各地に深い谷が刻まれ、その後の海面上昇とともに谷が軟弱な堆積物で埋め戻された。養老川低地や村田川低地の地下には、この「埋もれた谷」を埋める形で沖積層が厚く分布していることが分かった。

東京下町より砂が多い理由

もう一つの発見が、砂の割合だ。千葉県中央部の沖積層は、泥が多い東京下町の沖積層に比べ、全体に砂の割合が高かった。産総研は、房総半島の丘や台地をつくる砂の地層が川によって削られ、下流の低地に運ばれて積もったためと考えている。丘陵・台地から低地への土砂の供給過程と、それに伴う地盤の性質の地域差を、広い範囲で一体的に示したのは初めてだという。

この違いは、防災の上で軽くない。軟弱層は地震の揺れを増幅させたり、地盤沈下の原因になったりする。さらに、泥の層は液状化が起きにくい一方、地下水を多く含んだゆるい砂の層は液状化が起きやすい。同じ「軟弱な低地」でも、砂が多いか泥が多いかで地震時の振る舞いが変わるため、地層中の砂の割合や地盤特性の地域差を把握することが、地震災害のリスク評価では重要になる。

千葉県の中央から北部にかけては都市化が進み、内陸の低地や台地に商業施設や住宅が広がり、東京湾沿いの埋立地には工場や商業施設が集まる。この地域では1923年の関東地震と2011年の東北地方太平洋沖地震で液状化が起き、大きな被害が出た。将来発生が想定される首都直下地震でも被害が懸念される。産総研は、国や自治体の防災マップづくり、都市開発、建設工事などに役立つとしている。

国内初の公開から10年、首都圏の整備が進む

都市域の地質地盤図は、2016年4月に千葉県北部地域の地質図と基準ボーリングデータが公開されたのが始まりで、2018年3月に立体図が加わった。産総研は当時、3次元地質地盤図の公開は国内初と説明している。千葉県が保有する1万地点以上のボーリング調査データに、産総研が独自に実施した約20地点の調査を加えて作成された。

その後、2021年5月に東京都区部、2025年3月に埼玉県南東部が公開された。埼玉県南東部には2026年3月31日、地面の細かな揺れ(微動)から地盤の揺れやすい周期を読み取る「微動H/Vスペクトルのピーク周波数マップ」が追加されている。今回の千葉県中央部と千葉県北部延長域も、同じ2026年3月31日付でデータがサイトに掲載されており、研究成果としての発表が今回まとまった形になる。千葉県北部延長域は下総台地の北西端、千葉県中央部は同じ台地の南西部にあたり、いずれも先行して整備された千葉県北部地域に隣接する。

研究には、産総研地質情報研究部門の野々垣進研究グループ長、中澤努氏、米岡佳弥研究員のほか、千葉県環境研究センターの風岡修氏らが参加した。