日本銀行は9月11日、8月の企業物価指数(速報)を公表した。企業の間で取引されるモノの価格を示す国内企業物価指数は136.1(2020年平均=100)で、前月比0.2%の下落となった。前月は0.4%の上昇で、前月比がマイナスになるのは2025年8月以来1年ぶりだ。

前年同月比では7.6%の上昇だった。7月の7.7%からわずかに縮んだものの、上昇率は依然として高い水準にある。

「企業物価指数」は物価の川上にあたる

企業物価指数は、企業どうしが原材料や部品、製品を売買するときの価格の動きを日銀が毎月まとめている指標だ。店頭で買うモノやサービスの値段を示す消費者物価指数(CPI)が「川下」の物価だとすれば、こちらはその手前、いわば「川上」の物価にあたる。原材料や卸売の段階の値上がりは、時間差を置いて小売価格に転嫁されやすい。

指数の「2020年平均=100」は、2020年の平均的な価格水準を100として比べた数字という意味だ。8月の136.1は、企業間で取引されるモノの値段が2020年より36%ほど高いことを示している。1年前の2025年8月は126.5で、前年同月比は2.7%の上昇だった。1年で伸び率は3倍近くに広がっている。

輸入物価が3.0%下落、契約通貨ベースでは1.0%

前月比を押し下げたのは輸入価格だ。円ベースの輸入物価指数は193.7で、前月比3.0%下落した。7月は1.2%の上昇だったから、方向が反転している。前年同月比は24.8%の上昇で、7月の29.3%から伸びが鈍った。輸出物価指数も円ベースで162.1と、前月比0.7%下がっている。

日銀は輸出入物価を「円ベース」と「契約通貨ベース」の2通りで公表している。契約通貨ベースは、ドルなど契約で定めた通貨のままの値動きを見る指数で、円ベースはそれを円に換算した数字だ。二つの差が、為替相場の動きによる分にあたる。

8月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比1.0%の下落にとどまった。円ベースでは3.0%下落した。この差が円換算による押し下げ分だ。輸出物価はさらに対照的で、契約通貨ベースでは0.6%「上昇」したのに、円ベースでは0.7%の下落となっている。

日銀の為替相場統計によると、東京市場のドル・円スポット相場の月中平均は7月が1ドル=162円45銭、8月が158円81銭だった。月中の値幅は7月が159円39銭〜163円95銭、8月が155円20銭〜160円19銭で、8月は水準が切り下がっている。

15兆3993億円の円買い介入が先行していた

円相場の水準が変わった背景には、政府・日銀による為替介入がある。財務省が8月28日に公表した外国為替平衡操作の実施状況によると、令和8年7月30日から8月26日までの介入額は15兆3993億円だった。同じ統計で今年4月28日〜5月27日の11兆7349億円、2024年5月公表分の9兆7885億円を上回る規模となっている。

介入の大きさは外貨準備にも表れた。財務省が9月7日に公表した令和8年8月末の外貨準備等の状況では、外貨準備高は1兆2075億2400万ドルで、7月末より795億7500万ドル減っている。内訳は証券が8395億5900万ドル、預金が1554億1700万ドル、金が1241億300万ドル(2720万トロイオンス)などだ。

ドル売り・円買いの介入は、政府が持つドル建ての資産を売って円を買う操作にあたる。実行すればその分だけ外貨準備が減るため、介入の規模は翌月の外貨準備の減少としても確認できる。

川上の値上がり自体は続いている

前月比が1年ぶりに下がったとはいえ、前年同月比は7.6%高い。夏の電力料金の季節的な変動をならした「夏季電力料金調整後」の指数も136.0で、前年同月比は7.7%の上昇だ。川上の価格が1年前より大幅に高い状態そのものは変わっていない。

財務省は9月末時点の外貨準備を10月1日から7日までの間に公表する予定で、円買い介入の影響がその後も続いているかは、次の統計で確かめられる。