消費者庁は9月11日、消費生活用製品安全法に基づいて報告された重大製品事故27件を公表した。特記事項として挙げたのは、すでにリコール(無償交換や回収)が実施されている4社の製品で火災や負傷事故が起きた事例だ。公表資料には4件それぞれの対象台数と回収の進み具合も載っている。対象は合わせて約497万台にのぼるが、交換や回収が済んだ割合は電気ケトルで15.0%、充電式スピーカーで44.4%にとどまる。メーカーが交換や回収を告知した後も、対象製品が各家庭に残ったまま使われ続けている実態が数字で示された。
27件の内訳と、特記された4件
公表資料によると、27件のうちガス機器・石油機器に関する事故は該当がなかった。製品起因が疑われる事故は6件で、電気蓄熱式湯たんぽ、液晶テレビ、電気ケトル、充電式スピーカー、電動アシスト自転車、充電式高圧洗浄機が各1件だった。残る21件は製品起因か否かが特定できていない事故で、IH調理器や電気洗濯機、ノートパソコン、エアコンの室外機、太陽電池モジュール、延長コードなどが並ぶ。この21件のなかにもリチウム電池内蔵充電器が2件、ファン付衣類用と電動工具用のリチウムイオンバッテリーが各1件含まれている。
特記事項として扱われたのは、製品起因が疑われる6件のうちの4件である。株式会社グループセブジャパンが販売した電気ケトル(電源プレートの無償交換)、アンカー・ジャパン株式会社が輸入した充電式スピーカー(回収・交換)、ブリヂストンサイクル株式会社が製造した電動アシスト自転車(無償交換)、株式会社サイン・ハウスが輸入した充電式高圧洗浄機(回収・交換)だ。いずれもメーカーが交換や回収を告知済みの製品だった。
電気ケトルは418万5393台が対象、交換率は15.0%
4件のうち対象が最も大きいのが電気ケトルだ。グループセブジャパンが2025年9月16日に無償交換を告知した案件で、消費者庁の公表資料によると対象台数は418万5393台にのぼる。同社の発表によると、2021年10月から24年7月までに製造された特定の製造ロットで、電源コードの不適切な使用によって電源プラグが破損し、コンセント近辺での発煙や発火に至る可能性が確認された。構造の異なる電源プラグを備えた電源プレートに交換する。
その交換率は、告知から約1年たった2026年8月31日時点で15.0%だった。交換が済んだのは単純計算でおよそ62万8000台で、残る約355万台は対象のまま各家庭にある。今回報告された事故も、使用中に電源プラグ部とその周辺を焼損する火災だった。
公表資料には、この案件で「リコール対象の内容による」事故として報告された件数も載っている。2025年度が3件、2026年度が3件で、いずれも火災だった(今回公表の事故は含まない)。
回収率は1.4%から71.9%まで開いている
残る3件も、対象台数と回収の進み具合が明記されている。
充電式スピーカーは、アンカー・ジャパンが「Ankerグループ4製品」として2025年10月21日に告知した自主回収のうち、消費者庁が特記したスピーカー「Soundcore 3」である。ブラック・ネイビー・レッド・グレーの4色で、販売期間は2022年12月16日から2025年10月21日まで、対象台数は9万1933台。同社は、電池セルの製造を委託していたサプライヤーの工程で特定時期に異物が混入した可能性のある製品が出荷され、使用に伴い電池セルの内部短絡が起こって火災に至る可能性が判明したと説明している。回収率は2026年9月10日時点で44.4%で、約5万1000台が未回収のまま残る。事故件数は2025年度が3件、2026年度が4件で、いずれも火災。2022年度から24年度までは0件だった。今回の事故は車両内で発煙に気付いて確認したところ、製品と周辺を焼損する火災になっていたもので、消費者庁は「上記のリコール事象によるものかどうかは現時点では不明」と記している。
電動アシスト自転車のリコールは、電池ではなく車輪の「ステンレス製リム」が対象だ。ブリヂストンサイクルの発表によると、2016年12月から2020年12月までに製造した一部の自転車・電動アシスト自転車用車輪のステンレス製リムで、リム溶接部の線状のサビ、ヘコミ、ひび割れによる破損が原因で走行時にバランスを崩す事故が発生しており、2022年10月11日から無償交換を実施している。翌12日に新聞社告を出し、2023年5月16日付で対象車両を追加した。対象はブリヂストンサイクル販売分が完成車53万6520台と補修用リム2万3337本、ヤマハ発動機販売分が完成車6万8325台と補修用リム6779本である。回収率は2026年6月12日時点で完成車が45.2%、補修用リムは1.4%にとどまる。補修用リムは2社合わせて3万116本が対象だが、交換が済んだのは単純計算で約420本にすぎない。事故件数は2022年度2件、2023年度2件、2024年度1件、2025年度1件で、いずれも重傷。今回の事故も走行中に前輪リムが破損し、身体が前方に投げ出されて転倒・負傷したものだった。
充電式高圧洗浄機は、サイン・ハウスが輸入した「SPICERR ポケッタブル高圧洗浄機」で、型番はSWU-1とPHP-1。対象台数は8万8710台で、2025年7月23日にウェブサイトへ情報を掲載し、8月4日から回収・交換を実施している。バッテリーパックのバッテリーセルの製造過程における問題で発煙・発火が起きる可能性があるとしている。回収率は2026年8月31日時点で71.9%と4件のなかで最も高い。それでも事故件数は2025年度14件、2026年度10件で、4件のなかで最も多い。対象台数が電気ケトルの47分の1以下でありながら、報告された火災は4倍にのぼる。
4案件を合わせると、リコール対象の内容による事故として報告された件数は43件(今回公表の4件を除く)になる。
法律で義務づけられた事故報告
今回の公表は、消費生活用製品安全法(消安法)第35条第1項に基づく制度によるものだ。同項は、消費生活用製品の製造または輸入の事業を行う者に対し、自社の製品で重大製品事故が生じたことを知ったときは、製品の名称・型式、事故の内容、製造・輸入した数量と販売した数量を内閣総理大臣(消費者庁)に報告するよう義務づけている。報告の期限と様式は内閣府令で定められている。
重大製品事故とは、製品事故のうち、生じた危害またはそのおそれが重大なものとして政令の要件に当たるものを指す。死亡や重傷、火災などが該当し、消費者庁は報告を受けた事案を随時公表している。リコール実施中の製品による事故は、この公表のなかで「特記事項」として区別され、注意喚起の対象となる。
ただし公表の位置づけは速報にとどまる。消費者庁は留意事項として、報告内容の概要であって現時点で調査等により事実関係が確認されたものではなく、事故原因等について消費者庁として評価を行ったものでもないと明記している。今後の追加情報や事故調査の進展で、内容が変更または削除される可能性もあるとしている。
火種がリチウムイオン電池だったのは4件のうち2件
今回特記された4件のうち、内蔵するリチウムイオン電池の不具合が原因とされているのは、充電式スピーカーと充電式高圧洗浄機の2件である。電気ケトルは電源プラグの破損、電動アシスト自転車はリム溶接部の腐食や損傷による破損で、いずれも電池とは別の原因だ。火災として報告されたのは電池を内蔵する2件と電気ケトルで、電動アシスト自転車の被害はすべて重傷だった。
電池が火種になった2件は、どちらも電池セルそのものの製造工程に問題があったとされる。スピーカーは異物の混入による内部短絡、高圧洗浄機は製造過程の問題による発煙・発火で、使い方の問題ではない。
この2件は、製品事故全体の傾向とも重なる。製品評価技術基盤機構(NITE)が2026年7月15日に公表した注意喚起によると、リチウムイオン電池を搭載した製品の事故は、2021年から2025年までの5年間に2140件報告されている。製品別ではモバイルバッテリーが最も多い。事故は春から夏にかけて気温の上昇とともに増え、8月にピークを迎えるという。
NITEは、近年リチウムイオン電池搭載製品での火災が増えていることを受けて、経済産業省や環境省などの関係省庁が連携して「3つのC」という呼びかけを行っていると紹介している。粗悪品を避けて賢く選ぶ(Cool Choice)、落下や高温を避けて丁寧に使う(Careful use)、家庭ごみに混ぜず正しく捨てる(Correct disposal with better recycling)の3点だ。電池は一度傷むと外見からは判断しにくく、膨らみや異常な発熱が出た時点ですでに危険な状態にあることが多い。リコール対象と分かった製品を「まだ動くから」と使い続けることの危うさは、ここにある。
手元の製品が対象か確かめるには
リコールは告知しただけでは事故を防げない。数年前に買った家電やバッテリーは、購入時の記憶も薄れ、メーカーからの案内が届かないまま使い続けられることが多いためだ。今回の4件も、充電式高圧洗浄機が告知から1年1か月、電気ケトルと充電式スピーカーが1年弱、電動アシスト自転車のリムに至っては2022年10月の開始から4年近くが経過している。2週間後の9月25日公表分でも同じ構図が繰り返され、鞄やリュックに入れたモバイルバッテリーから出火 9月に報告の3件はいずれも持ち運び中 リコール対象の40万1771台、回収率は55.3%のとおり、モバイルバッテリーの回収状況が公表されている。
消費者庁はリコール情報サイトで、製品名やメーカー名から対象品を検索できるようにしている。各社も専用の受付ページやフリーダイヤルを設けている。
電気ケトルは、本体の底面に貼られた扇形または長方形のラベルで確かめる。ラベルの青枠内が製品品番、赤枠内が4桁の番号で、この2つがともに対象製品一覧表と一致した場合が対象になる。一覧表には61の製品品番が載っている。4桁の番号は製造時期を示し、左側の2桁が製造された週、右側の2桁が製造された年を表す。「4221~2522」と書かれていれば、2021年の42週目から22年の25週目までに製造された製品が対象という意味だ。「ウォッシャブル 0.8L」だけはラベルではなく本体底面への刻印で確認する。申し込みは特設ページ(24時間受付)か、電源プレート無償交換事務局のフリーダイヤル(0120-153-020、受付は9時〜18時、土日祝日と事業者休業日を除く)で受け付けている。
ほかの3件の問い合わせ先は、アンカー・ジャパンが0120-775-171(土日祝日を含む9時〜17時)、ブリヂストンサイクルが0120-662-722、ヤマハ発動機が0120-456-579、サイン・ハウスが0120-196-353である。
リチウムイオン電池を内蔵した製品が対象の場合は、扱いにも注意が必要だ。サイン・ハウスは、対象製品を持っている場合は使用を中止したうえで動作しなくなるまで放電し、放電後は充電せず、高温多湿を避けて風通しがよく水に濡れない場所に保管するよう呼びかけている。
