石破茂前首相は7月5日、鹿児島市で記者団に対し、高市政権が進める飲食料品の消費税減税について「減収がどれだけあり、どうやって補うのか示さなければ、自民の政策のやり方では全くない」と述べ、財源の裏づけを欠いたまま減税に進む姿勢を批判した。首相の座を退いた前首相が、後任である高市首相の看板政策に党の名を持ち出して異を唱えた。

石破氏「その場しのぎの甘いことは言わない」

石破氏は同じ日に鹿児島市内で行った講演でも、「決してその場しのぎの甘いことを言わないのが自民だ」と語った。人気取りのために財源の議論を後回しにすべきではない、という主張だ。

石破氏は首相在任中から消費税減税に慎重だった。食料品に限った減税を「適当ではない」とし、減税は「社会保障政策とセットで考えるべきだ」と繰り返してきた。消費税は年金・医療・介護といった社会保障の主要な財源であり、税率を下げれば穴埋めの財源が要る、という立場は一貫している。今回の発言もその延長線上にある。

高市政権のねらいは「2年限定」の物価高対策

これに対し高市政権は、飲食料品の消費税減税を物価高対策の柱に位置づけている。軸となっているのは、2027年4月に食料品の税率を今の8%から1%へ引き下げる案だ。将来の「給付付き税額控除」(所得に応じて減税と現金給付を組み合わせる仕組み)が始まるまでの「つなぎ」として、2年程度の期限を区切って実施する構想である。

背景には、自民党と日本維新の会が2025年に交わした連立の合意文書がある。ここには、飲食料品を2年間に限って消費税の対象としないことも視野に法制化を検討する、と明記された。食料品は収入が少ない世帯ほど負担が重くなりやすく、生活支援として減税を求める声は与野党に根強い。

争点は年5兆円規模の財源

最大の課題は財源だ。食料品の減税による税収の減少は年5兆円程度に上ると見込まれる。高市首相は「特例公債(赤字国債)の発行に頼ることはない」と明言し、補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などで賄う考えを示している。ただ、ガソリンの暫定税率廃止など他の減税策の財源も固まっておらず、5兆円をどう工面するかには政府内でも懐疑的な見方がある。

税率を1%とする案では、店側のレジ改修が5〜6カ月程度で済むことが政府の実務者会議で確認された。自民党税制調査会は「2027年4月に1%」とする案を軸に早期の意見集約を目指しており、高市首相が最終的にどこで判断を下すかが次の節目となる。