政府は9月11日、「給付付き税額控除」に関する国と地方の協議の場の第4回会合に、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(案)」を示した。会合はオンラインで午前8時半から1時間開かれ、内閣官房が資料を公表している。

大綱案は、飲食料品の消費税率を令和9年(2027年)4月1日から令和11年(2029年)3月31日までの2年間、0.78%とする特例を創設する内容だ。0.78%は国に納める消費税の部分で、地方消費税と合わせた税率は1%になる。

税率は8%から1%に、1000円の食品で70円安く

飲食料品には現在、標準税率10%ではなく軽減税率8%が適用されている。酒類と外食は軽減税率の対象外で、この点は特例でも変わらない。

引き下げ後の税率は1%で、現行の8%から下がる。税込み価格で見ると、本体価格1000円の食品は現在1080円だが、特例期間中は1010円になる。1000円の買い物で70円安くなる計算だ。

大綱案には、税率が切り替わる前後の値札の扱いも書き込まれた。2027年2月1日から3月31日までと2029年4月1日から5月31日までは特例税率(1%)に基づく税込み価格を、2027年4月1日から5月31日までと2029年2月1日から3月31日までは軽減税率(8%)に基づく税込み価格を表示できるとし、切り替え期に事業者が値札を貼り替える負担を抑える。

農林漁業者や食品事業者、外食事業者への影響についても、関係府省庁が連携して事業者の実情を確認しながら予算編成の過程で対応する、と明記している。

「つなぎ」の先にある支援金制度

今回の引き下げは、それ単独の物価対策ではない。高市早苗首相は8月5日、「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針を臨時閣議で決定した後の記者会見で、飲食料品の消費税率の引き下げを給付付き税額控除への移行までの「つなぎ」と位置づけると説明し、「制度の詳細設計をさらに進めて、9月には大綱を決定した上で臨時国会に法律案を提出して、早期成立を目指したいと考えております」と述べていた。今回の大綱案は、その詳細設計にあたる。

大綱案が定める新制度の名称は「就業者負担軽減支援金」で、2027年4月に導入する。中低所得の働き手が負担する税と社会保険料を軽くする仕組みで、前年の勤労所得(給与収入に応じて算定した額と、一定額を超える事業所得・雑所得の合計)が一定の範囲にあり、合計所得金額が上限額以下であることなどが支給要件になる。

支援額は「支援基本額」を土台に、19歳未満の扶養児童がいる場合の加算と、いわゆる「年収の壁」に配慮した加算を上乗せする構成だ。ただし各金額は大綱案の段階では「検討し定める」と書かれるにとどまり、具体的な水準は示されていない。

「年収の壁」の数字を制度設計に織り込む

大綱案は、制度設計の前提となる数字を注記の形で示している。2025年度に全国で最も低い地域別最低賃金である時給1023円に、被用者保険が短時間労働者に適用される週20時間を掛けて年収に換算すると、給与収入106万円(所得32万円)となる。この場合の社会保険料負担はおよそ16万円だ。

また、国民年金の第3号被保険者が年収130万円に達して第1号被保険者になった場合、税と社会保険料を差し引いた手取りが元の水準まで回復するのは年収およそ160万円だとしている。第3号被保険者は会社員などに扶養される配偶者で、自分では保険料を納めない区分を指す。働く時間を増やして扶養から外れると保険料負担が生じ、手取りがいったん減る。この落ち込みが「年収の壁」と呼ばれてきた問題だ。

支援額を一定割合で増やし始める「逓増開始額」の目安としては、単身者の個人住民税所得割の非課税限度額である所得45万円(給与収入119万円)が挙げられている。

費用は3分の2以上を国が負担

支給の実務は市町村(特別区を含む)が担う。受給資格者の請求に基づいて市町村長が認定し、年1回支給する。公金受取口座を登録している人については、請求がなくても市町村長が職権で認定して支給できる仕組みとし、受給者と市町村の双方の事務負担を軽くする。市町村が処理する事務は法定受託事務に位置づける。

費用の負担は地方と協議中としたうえで、支給に要する費用の3分の2以上を国が負担すると記した。事務費やシステム改修に必要な経費は、制度導入にあたって全額を国費でまかなう。制度全体の調整役として、内閣府に「租税・社会保険料負担に関する総合調整本部」を設置する。

財源について大綱案は、2029年度以降の支援金制度の分と、2027・2028年度の消費税率引き下げの分を分けて記載し、恒久財源の確保と併せて検討すると位置づけている。所得上限額なども、諸外国との純負担率の比較を踏まえて恒久財源の確保と併せて定めるとした。

大綱案はこのほか、後期高齢者医療制度における金融所得の扱いや、国民年金第3号被保険者に係る制度の見直し、人的控除のあり方の見直しを検討事項に挙げ、支援金制度の施行後5年をめどに施行状況を検討するとしている。政府は地方との協議を続けたうえで大綱を決定し、秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。