JR東海(東海旅客鉄道)は10月16日、東海道・山陽新幹線に投入する次期車両の名称を「S0(エスゼロ)系」とし、主な特長と投入計画を発表した。現行のN700S以来のフルモデルチェンジとなる車両で、運転士が運転室に乗務したまま列車を自動で走らせる自動運転システム(GOA2)を搭載する。営業運転の開始は2029年7月を予定し、2032年度上期までに計25編成を入れる。同社は社長会見の案件としてこの発表を公表した。
「0」に込めた新たな基点、25編成を順次投入
発表によると、名称の「0」は東海道・山陽新幹線の「新たな進化の基点」を表し、「S」はShinkansen(新幹線)とSupreme(最高の)の頭文字から取った。同社は、現行のN700系シリーズを超える革新的な車両と位置づけている。N700Sと同じく、編成の両数をさまざまに組み替えやすい「標準車両」として設計する。
投入は、2028年8月に確認試験車1編成を入れて走行試験を始めるところから始まる。営業用の車両は2029年度に8編成、2030年度に7編成、2031年度に7編成、2032年度上期に3編成の計25編成を投入する計画だ。2032年度下期以降の計画は「現時点では未定」としている。
S0系の年度別投入編成数(計画)(編成)
数値で見る(単位: 編成)
| 項目 | 編成 |
|---|---|
| 2029年度 | 8 |
| 2030年度 | 7 |
| 2031年度 | 7 |
| 2032上期 | 3 |
既存の車両との入れ替えの関係も資料に示されている。S0系の新機能の一部を既存車にも取り入れるため、N700AとN700Sに改造工事を行うが、2032年7月までに廃車を予定しているN700Aは地震時のブレーキ制御の改良の対象から外し、2031年3月までに廃車を予定しているN700Aはグリーン車の座席の改造の対象から外すとしている。
自動運転は「運転士が乗る」GOA2、無線で速度を自動更新
S0系の最大の特長は、自動運転システムの搭載だ。GOA(Grade of Automation)は鉄道の自動化の段階を示す区分で、同社は今回のGOA2を「運転士が運転室に乗務する自動運転」と説明している。運転士がいなくなるわけではなく、運転士が乗ったまま、加速や減速、停止といった操作をシステムが担う形になる。
仕組みの中心は「ミリ波列車無線」だ。40GHz帯のミリ波を使う高速・大容量の通信方式で、列車はこの無線で地上からダイヤなどの情報を受け取る。システムはその情報をもとに、効率よく加速し、惰行(動力を切って惰性で走ること)も生かした省エネ運転になるよう「計画速度」を決める。運転士がボタンを押して出発すると、列車は計画速度に従って自動で走り、定刻に到着して決まった位置に止まる。
駅間で急に徐行が必要になったときも、ミリ波列車無線で最新のダイヤや速度制限を受け取り、計画速度をただちに自動で更新する。徐行の後は回復運転を行い、遅れを最小限に抑えるという。
この仕組みを支える地上側の準備も進んでいる。資料によると、駅の決まった位置に止める定位置停止は「TASC(Train Automatic Stop-position Control)」で行い、2026年9月から全ての営業列車で使い始めた。運行管理システム「コムトラック」の運転情報をミリ波列車無線で車両に送る仕組みは、2030年度末から使い始める。
地震検知からブレーキまで2秒程度を0.2秒程度に
安全面では、地震が起きたときに列車を早く止める仕組みを強める。ミリ波列車無線を使った早期地震検知システムを導入し、地震検知の情報を無線で車両に直接送る。資料の図では、現行は地震を検知してから送電を止め、ブレーキがかかるまでに2秒程度かかるのに対し、S0系では0.2秒程度になる。同社はこれを「10分の1程度に短縮」と説明しており、新しい仕組みは現行の機能に追加する形で入れる。
あわせてブレーキ制御も改良し、時速285キロから地震時のブレーキをかけた場合の停止までの距離を、N700Sより約5%縮める。同社は「地震時の列車停止のさらなる早期化を図り、安全性を向上」するとしている。
地震時の対策はS0系だけで終わらない。早期地震検知システムと自動運転はN700Sにも改造で取り入れ、ブレーキ制御の改良はN700SとN700Aに広げる。これらの改造は2029年10月以降、順次始める予定だ。
グリーン車に2種類の座席、荷物置場は9か所に
車内では、グリーン車の設備を大きく見直す。8号車(68席)と9号車(64席)には、スマートフォンホルダーやドリンクホルダーを備えた「多機能アームレスト座席」を置き、10号車(48席)には大型のパーティション(仕切り)を備えた「パーティション座席」を置く。同社は「昨今の多様なニーズを踏まえ、選択肢を提供」すると説明している。
9号車のデッキには、身だしなみを整えられる「パウダーコーナー」を新設する。無料Wi-Fiは、従来の7・8号車に加えて9・10号車にもビジネス向けの「S Wi-Fi for Biz」を導入し、8〜10号車には5G対応の透明ガラスアンテナを載せて通信を安定させる。揺れを抑える装置「フルアクティブダンパ」の制御を改良し、列車がすれ違うときの横揺れを約10%減らす。座席のリクライニングの角度を調整して跳ね上げ式のフットレストを採用し、足元の空間をN700Sより約140ミリ広げる。
普通車も含めた共通の設備では、スーツケースなど大きな荷物を持つ乗客が増えていることを踏まえ、デッキの荷物置場を6か所から9か所に増やす。客室の荷棚は先頭車で約25%、中間車で約5%広げる。女性専用トイレは広さを約25%増やしてベビーベッドを新設し、男性専用トイレは引き戸にする。洗面所の間口は49センチと、N700Sより14センチ広げる(1・7・11号車を除く)。
グリーン車の新しい座席などは、S0系を待たずに先行して取り入れる。2027年12月以降に投入するN700Sの新しい車両から実施するほか、既存車の改造も進める。Wi-Fiの拡充は2027年1月以降、座席やパウダーコーナー、乗り心地の改良は2028年4月以降に順次始める予定だ。
新しい先頭形状で消費電力量を約6%削減
環境面では、先頭の形を一新する。N700Sの「デュアル スプリーム ウィング形」をさらに進化させた「ツイン リーメクス形」を採用する。リーメクスは鳥が空気の流れを受けて揚力を生み出す翼の羽「風切羽(かざきりばね)」のことで、車体の側面から先頭部にかけての滑らかな面のねじれをこの羽になぞらえ、先頭でも後尾でも風の流れを操る形を表したという。青帯などのデザインは今後決める。
先頭形状の改良による空気抵抗の低減に加え、自動運転による効率的な走行と効率的な電気機器の搭載で、編成全体の消費電力量をN700Sより約6%減らす。
車体の素材では、廃車になった新幹線車両から取り出したアルミをリサイクルした「再生アルミ部材」の使う範囲を、屋根や側面の一部から床や妻面の一部にも広げる。車両の構体(骨組み)に占める再生アルミの割合は、2026年度以降に追加投入するN700Sの約14%から約20%に高まる。車体の素材をほぼ全てリサイクルできるアルミに統一し、廃車のアルミを再び車両に使う「水平リサイクル」を進めるとしている。
