こども家庭庁は10月16日、保育所での感染症対策の基本を示す「保育所における感染症対策ガイドライン」の2026年改訂版案を公表し、意見募集(パブリックコメント)を始めた。子どもが感染症にかかった後に登園を再開する際、医師が「意見書」を書くことが考えられる感染症から、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、咽頭結膜熱の3つを外し、医師の診断を受けたうえで保護者が「登園届」を書く感染症に移す。「換気と空調管理」と「感染症集団発生時の保育所の事業継続などに関する対策」の項目も新たに設ける。意見は11月14日まで受け付け、12月に通知として出す予定としている。
新型コロナの経験を踏まえ、前回から8年ぶりの見直し
このガイドラインは、乳幼児期の特性を踏まえた保育所の感染症対策の基本を示すものとして、2009年8月に当時の厚生労働省の保育課長通知で出された。その後、2012年の学校保健安全法施行規則の一部改正や、2017年の保育所保育指針の改定に合わせて改訂を重ねてきた。現在の版は2023年の一部改訂版で、今回はこども家庭庁成育局成育基盤企画課が改訂案をまとめた。
改訂案の概要によると、前回の改訂から8年がたち、その間に新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きて感染症対策に関する多くの知見が得られた。これを受け、国の「令和7年度成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業」で、有識者による「保育所等における感染症対策の推進のための研究」が行われ、その成果を踏まえて改訂する。
こども家庭庁は改訂の観点として、二つを挙げている。一つは保育所の感染症対策そのものの見直しで、もう一つは「こどもの安全の確保を最優先としつつ、こども、保護者、保育所、行政機関などの負担軽減を図る」ことだ。改訂の柱は、登園再開時の意見書・登園届の対象となる感染症の見直し、換気と空調管理や集団発生時の事業継続に関する項目の追加、そして個別の感染症ごとの症状や予防、感染拡大防止策の記載と写真の充実の三つである。
インフルなど3つは「意見書」から「登園届」へ
保育所は、学校保健安全法施行規則が定める出席停止の期間の基準に準じて、病気ごとに「登園のめやす」を定めておく必要がある。ガイドラインは、登園を再開する際に保護者が保育所に出す書類として、医師が記入する「意見書」と、医師の診断を受けた後に保護者が記入する「登園届」の2種類の参考様式を示している。
2023年版では、医師が意見書を記入することが考えられる感染症として、麻しん(はしか)、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、風しん、水痘(水ぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、結核、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎、百日咳、腸管出血性大腸菌感染症、急性出血性結膜炎、侵襲性髄膜炎菌感染症の13を挙げていた。
改訂案ではこのうちインフルエンザ、新型コロナ、咽頭結膜熱が抜け、意見書の対象は10になる。3つは保護者が登園届を記入することが考えられる感染症に移り、こちらは溶連菌感染症、マイコプラズマ肺炎、手足口病などと合わせて12になる。改訂案の本文も、これらを「意見書(医師記入)から登園届(保護者記入)に移行したもの」と明記している。
3つのうちインフルエンザと新型コロナについて、今季のインフルエンザの流行状況はインフルエンザ2026年第40週、全国11.35人で注意報の目安超え 16都県が10人超・沖縄37.07人、新型コロナは新型コロナ、全国1.51人 昨年同期の3分の1以下で推移 入院は週258人で伝えている。2023年版の扱いでは、これらの感染症で書類を求める園の場合、登園を再開する際に医師の意見書が想定されていた。改訂案の扱いでは、医師の診断を受けたうえで保護者が登園届を書けばよい形になる。こども家庭庁は今回の見直しの観点に、保護者や医療機関を含む関係者の負担軽減を挙げている。
登園のめやすは変えない
書類の種類は変わるが、登園してよい目安そのものは2023年版から変えていない。3つの感染症の登園のめやすは次のとおりである。
| 感染症 | 感染しやすい期間 | 登園のめやす |
|---|---|---|
| インフルエンザ | 症状がある期間(発症前24時間から発病後3日程度までが最も感染力が強い) | 発症した後5日経過し、かつ解熱した後2日(乳幼児は3日)経過していること |
| 新型コロナウイルス感染症 | 発症後5日間 | 発症した後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過すること(無症状の場合は検体採取日を0日目として5日を経過すること) |
| 咽頭結膜熱 | 発熱、充血などの症状が出現した数日間 | 発熱、充血などの主な症状が消失した後2日経過していること |
改訂案は、意見書と登園届は「一律に作成・提出が必要となるものではありません」とする2023年版の考え方も引き継ぐ。登園再開の取り扱いは個々の保育所だけで決めるのではなく、子どもの負担や医療機関の状況も考え、市区町村の支援の下で地域の医療機関や医師会、学校などと協議して決めることが大切だとしている。書類が必要になった場合は、事前に保護者や嘱託医に十分知らせることも求める。
あわせて、インフルエンザ迅速診断検査やRSウイルス迅速抗原検査など特定の検査を一律に求める必要はなく、治ったことを確かめるための迅速抗原検査の陰性確認も必要ないと記している。家庭で市販の検査キットを使って新型コロナの検査をする場合は、「研究用」ではなく国が承認した「体外診断用医薬品」か「第1類医薬品」を使うよう勧めている。
換気の徹底と、集団発生時の「業務の優先順位」
新設する「換気と空調管理」では、施設に備え付けの24時間換気システムや換気扇を常に動かすこと、通常のエアコンには換気機能がないことに注意することを挙げた。子どもの動きや声が活発になる活動の時間に合わせて窓を開けるなど換気を強め、換気扇がない部屋では扉を開けるか、HEPAフィルター付きの空気清浄機などを使うよう求めている。
「感染症集団発生時の保育所の事業継続などに関する対策」は、感染症が集団で発生した際に感染対策を強めつつ、不要不急の業務から縮小・中止して、できる限り保育を続けることを目指す内容だ。業務継続計画(BCP)づくりの足がかりとして、業務を四つに分けて整理する。①保育や食事の提供など最低限続けなければならない業務、②消毒や換気・清掃、感染状況の情報収集、嘱託医や保健所との連携など感染拡大防止に必要な業務、③散歩や合同保育など状況に応じて縮小できる業務、④行事や課外活動など延期や中止ができる業務、である。①と②を最優先とする。
取り組む項目として、症状が出た子どもや保育者の待機場所を設けること、慢性肺疾患や免疫抑制剤の服用など職員の感染リスクを把握して業務の変更や勤務制限を想定しておくこと、特定の職員に負担が集中しないよう相談窓口を置くことも挙げた。感染拡大が続く場合は、登園時間を分散させたり保育時間を短くしたりすることも具体策として示している。待機場所は出入り口に近く、専用のトイレや手洗い場を割り当てられる場所が望ましいとした。
意見は11月14日まで、12月に通知予定
個別の感染症の解説も見直す。改訂案では、ガイドラインで取り上げる感染症に「その他保育所で知っておくことが有用な感染症」の区分を設け、その他のアデノウイルス感染症とヒトメタニューモウイルス感染症を加えた。ウイルス性胃腸炎の項目は、2023年版のノロウイルスとロタウイルスに加え、アデノウイルスも含める形にまとめた。
ガイドラインは課長通知として示される指針で、e-Govの案件ページでも根拠となる法令の条項は示されておらず、今回の意見募集は行政手続法に基づかない任意の手続きとされている。それでも、こども家庭庁は改訂案の冒頭で、ガイドラインが保育所などで幅広く活用されているとの認識を示しており、改訂は保護者が園に出す書類の種類や、園の感染症対応の進め方に関わる。保育を巡っては、2026年4月時点で待機児童が9年ぶりに増えるなど受け皿の確保も課題になっている(待機児童2435人、9年ぶりに増加 東京都内で急増 世田谷区は166人で全国最多)。
意見は、e-Govの意見提出フォーム、郵送、電子メールで受け付ける。期限は11月14日(必着)で、電話では受け付けない。こども家庭庁は寄せられた意見を踏まえ、12月に改訂版を通知として出し、公表する予定だ。実際に登園届で足りるかどうかは、改訂後に各保育所が地域の医療機関などと協議して決めるため、保護者は通っている園からの案内を確認する必要がある。
