国土交通省は11日、経済安全保障推進法に基づく「造船業再生基金」で、造船会社の設備投資計画5件を新たに認定したと発表した。4日に認定した3件と合わせて計8件となり、令和8〜16年度の最大助成額は合計で約3110億円、これに伴う官民の投資額は約9000億円規模になる。国内の造船所の建造設備を公費で一斉に更新する、異例の規模の支援となる。
新たに認定された5件
11日に認定されたのは、大島造船所(最大助成額約61億円)、川崎重工業(同約156億円)、新来島どっくと新来島豊橋造船・新来島高知重工・新来島サノヤス造船の4社(同約320億円)、内海造船(同約43億円)、三菱造船(同約400億円)の5件。
4日の初認定は、今治造船ほか2社(同約1138億円)、ジャパン マリンユナイテッドほか2社(同約494億円)、名村造船所ほか1社(同約499億円)の3件だった。大手から中堅まで、国内の主要な造船会社がほぼ出そろった形だ。
このうち川崎重工業は同じ11日、坂出工場(香川県坂出市)で約450億円の設備投資を行うと発表した。先進的な省力化・自動化設備の整備やクレーン更新などを含み、同工場が得意とする液化ガス運搬船の船体の供給能力を確保・強化するとしている。同社は「日本の経済安全保障の確立と造船業の発展に貢献していく」とコメントした。
「船体」が経済安保の重要物資になった
支援の根拠は経済安全保障推進法だ。同法は、国民生活や経済活動に欠かせず、供給が止まると国が困る品目を「特定重要物資」に指定し、企業が国に設備投資などの「供給確保計画」を出して認定を受けると、国が費用の一部を助成する仕組みを設けている。半導体や蓄電池、抗菌性物質製剤などが指定されてきた。
船舶もこの枠組みに入っていたが、これまで対象は舶用エンジンなどの部品にとどまっていた。国交省の認定実績には、三井E&Sなどによる2ストロークエンジンの計画(最大助成額約23.7億円)などが並ぶ。今回、部品のうち「船体」そのものが追加されたことで、造船所のドックや溶接・加工設備といった本体部分への支援が可能になった。今回の8件はその第1弾にあたる。
2035年に建造量を倍に
背景には、日本の造船業の縮小がある。国交省と内閣府は2025年12月26日、「造船業再生ロードマップ」を策定し、年間約900万総トンの建造量を2035年に1800万総トンへ引き上げる目標を掲げた。倍増の目標は、今年7月21日に閣議決定された「日本成長戦略」の官民投資ロードマップにも書き込まれている。
建造量を倍にするには、既存のドックをより速く回すか、設備そのものを増やすしかない。造船は労働集約的な産業で、人手不足が建造量の上限を直接決める。今回の各社の計画に省力化・自動化設備やクレーン更新が並ぶのは、人を増やさずに建造量を伸ばす狙いからだ。
国が船体の建造能力を経済安全保障の課題として扱うのは、有事や国際情勢の変化で海外の造船所に発注できなくなれば、島国である日本の物流が成り立たなくなるためだ。助成は令和16年度までの9年間にわたる長期の枠組みで、実際に建造量が伸びるかどうかは、設備が動き始める数年後から問われることになる。
