総務省は9月15日、情報通信審議会の「最終保障提供責務の導入等に伴う基礎的電気通信役務制度の在り方」三次答申案を公表した。携帯電話の電波を使いながら固定電話番号で通話できる「モバイル網固定電話」を、全国どこでも使えるようにする義務がかかるユニバーサルサービスに位置づけ、NTT東西が他社から卸提供を受けて提供する場合も含めて早期に実現できるよう、制度整備を進めるべきだとした。答申案は16日午前のユニバーサルサービス政策委員会(第55回)と、交付金・負担金の算定等に関するワーキンググループ(第12回)の合同会合で審議される。

「据え置き型の携帯電話」を公的な役務に

モバイル網固定電話は、自宅に置いた専用の機器(ターミナルアダプタ)に電話機をつなぎ、携帯電話網を通じて通話するサービスだ。工事も回線の引き込みも要らず、使うのは携帯の電波だが、利用者が使う番号は「03」や「06」で始まる固定電話番号になる。すでに携帯3社が販売しており、NTTドコモの「homeでんわ」が2022年3月29日開始で月額1078円から、KDDIの「ホームプラス電話」が2014年12月17日開始で同1463円、ソフトバンクの「おうちのでんわ」が2017年7月5日開始で同1078円から(いずれも税込み)となっている。

これまでは各社が自主的に売る商品にすぎなかった。ユニバーサルサービス(基礎的電気通信役務)に位置づけられると、扱いが変わる。生活に不可欠で、安く、全国どこでも使えることが制度上の要件となり、赤字になる地域の費用は通信業界全体が出し合う交付金で補える仕組みに乗る。答申案は、通信技術の基準を検討してきた情報通信審議会のIPネットワーク設備委員会と電気通信番号政策委員会が2026年5月にまとめた結論が、ユニバーサルサービスの三要件である「不可欠性、低廉性、利用可能性」に沿うものだと認めた。

銅線の電話は2035年に限界 1043万件の行き先

背景にあるのは、NTT東西が2025年9月29日に公表した固定電話の移行計画である。全国に張り巡らせた銅線(メタル)の設備は2035年ごろに維持の限界を迎えるとして、加入電話を光回線の電話などへ段階的に移す。2026年度に一部エリアで先行して移行を始め、2028年度ごろからエリア単位で終了計画を順次公表し、2035年度末をめどに完了させる想定だ。対象となるメタル回線の電話は、2024年度末時点で1043万件ある。

移行先は光回線電話が中心になるが、光ファイバが引かれていない家や、引き込み工事が難しい家が残る。NTT東西はそうした利用者向けに、2028年度からモバイル網固定電話を提供する意向を示している。今回の答申案は、その受け皿を制度の側から用意するものだ。無線で家庭にブロードバンドを届ける「ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)」をユニバーサルサービスに加えるかどうかは、2027年度以降に具体的な検討に入るとした。

緊急通報の課題は先送り

残る課題は緊急通報である。固定電話は110番や119番にかけると、契約先の住所が受理機関の画面に自動で表示される。モバイル網固定電話は携帯電話網を使うため、当面は携帯電話の方式、つまり音声伝送携帯電話番号とGPS・基地局の位置情報を通知する形が認められる。答申案は、光ファイバ未整備エリアなど使われる場面が限られることや、安さと使いやすさへの配慮から、この仕様での早期提供を可能とするとした。そのうえで中長期的には、より精度の高い位置情報に加え、住所情報、利用者が使う固定電話番号、氏名の通知についても、普及段階までに確実に実現するよう検討を進めるとしている。

「ユニバーサルサービス料」への影響に配慮を

答申案はあわせて、費用を賄う交付金制度の見直しにも触れた。固定電話の赤字を補う第一種交付金は、電話番号1つあたりに割り当てられる「番号単価」が現在2円程度で、これが利用者の請求書に並ぶ「ユニバーサルサービス料」の元になっている。答申案は、離島や山間地域を含めてどこでも通信を使える状態を保つため補填を重点化する一方、「過度な負担の水準とならないよう」料金の推移を注視するよう総務省に求めた。

ブロードバンドの赤字を補う第二種交付金は、2026年度の規模が約1億5000万円にとどまる。政府は光ファイバの世帯カバー率を2027年度末までに99.9%にする目標を掲げており、答申案は「政策的に整備を推進すべき区域」に資源を重点配分するよう算定方法を見直し、可能な限り2029年度から交付できるよう制度整備に着手すべきだとした。離島では、自治体が敷設した海底ケーブルを民間が譲り受けた場合に、その費用の全額を交付金の算定対象にできる枠組みも設けるとしている。

答申案は7月22日から8月25日まで意見を募り、法人・団体9件、個人2件、匿名5件の計16件が寄せられた。NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、オプテージ、日本ケーブルテレビ連盟などが名を連ねている。委員会が答申をまとめれば、総務省が電気通信事業法に基づく省令やガイドラインの整備に移る。最終保障提供責務の制度そのものは2027年度の施行が見込まれている。