NTTドコモビジネスなど5社と、九州電力・インターネットイニシアティブ(IIJ)など7社は9月18日、総務省の令和8年度「ワット・ビット連携関連実証」に採択された事業を8月に始めたと、それぞれ発表した。離れた場所に建てた複数のデータセンターを光ネットワークでつなぎ、電力の余り具合に応じてAIの計算処理を別の拠点へ移す仕組みを、実際の業務で検証する。
電気とデータを一緒に最適化する
「ワット・ビット連携」とは、電力(ワット)の供給とデータ処理(ビット)を切り離さず、一体で最適にしようという考え方だ。総務省と経済産業省は2025年3月に官民懇談会を立ち上げ、同年6月12日に「取りまとめ1.0」を公表している。背景には、AIの普及でデータセンターの電力消費が急に膨らんだ事情がある。
もっとも、国内のデータセンターは東京と大阪の周辺に偏っている。IIJは発表で、災害時に事業を続けられるかという点と、電気を安定して確保できるかという点の両方から、地方への分散が求められていると説明した。一方で九州や北海道には、太陽光や風力でつくった電気が需要を上回る時間帯がある。計算の仕事のほうを電気のある場所へ運べば、送電線を増やさずに両方の問題を減らせる、というのが実証の狙いになる。
三鷹—札幌—広島と、三鷹—秋葉原—横浜
NTTドコモビジネス、中国電力、NTTアノードエナジー、エネコム、北海道総合通信網の5社は、検証環境を2通り用意した。広域版は三鷹・札幌・広島の3拠点を1秒あたり10ギガビットの回線で結ぶ。東京近郊版は三鷹・秋葉原・横浜の3拠点を、その10倍にあたる1秒あたり100ギガビットで結ぶ。距離を取ると速度が落ち、近場なら速い、という条件の違いを比べる構えだ。
載せる仕事は、医療に特化したLLM(大量の文章を学習して文章を作る大規模言語モデル)と、設備の保安に使うVLM(画像や映像と文章を組み合わせて判断する視覚言語モデル)。どちらも応答の速さが要る用途で、処理を遠くの拠点へ移したときに使い勝手が落ちないかを調べる。あわせて、再生可能エネルギーの発電予測などの電力データをもとに、複数拠点のGPU(画像処理などの計算を担う半導体)の間で学習や推論を動かす「ワークロードシフト」の技術を確立する。5社は2028年度ごろまでに、電力・通信・計算資源をまとめて制御する仕組みの実現を目指すとしている。
九州は3拠点を1つのように使う
九州電力を代表機関とする7社の実証は、佐賀県玄海町の「ハイレゾ玄海DC」、福岡県糸島市の「糸島サイエンスヴィレッジ」、福岡県糟屋郡の「IIJ福岡空港DC」の3拠点を光でつなぎ、仮想的に一つの大きなデータセンターとして運用する。医療・介護、製造業、自治体、まちづくりの4分野で使い勝手を試す。2025年10月から2026年3月までは九州の2拠点で試しており、今回は拠点を1つ増やした形だ。将来は再エネと蓄電池とデータセンターを一体で整備する「オフグリッド型」も見据える。
総務省は5月22日にこの実証事業を公募し、6月12日に締め切った。提案は7件で、7月15日にその7件すべてを採択している。委託費の合計上限は、分散運用の実証が18億5000万円、ワークロードシフトの実証が10億8000万円で、あわせて29億3000万円。履行期間は契約から2027年2月1日までと定められており、7件の結果はこの冬に出そろう。
