総務省は10月19日、次期のBS放送用衛星について、株式会社放送衛星システム(B-SAT、東京都府中市)が申請した衛星基幹放送局5局に予備免許を与えることが適当だとする答申を、電波監理審議会(会長=笹瀬巌・慶応大名誉教授)から受けたと発表した。免許を申請したのはB-SATとスカパーJSAT(東京都港区)の2者で、希望する周波数が重なったため比較審査を行い、B-SATが2点、スカパーJSATが0点だった。総務省は速やかに予備免許を交付する予定だ。

2029年度後半に打ち上げる次の衛星

今回の免許は、2029年度(令和11年度)後半に打ち上げを予定している次期BS放送用衛星に載せる放送局が対象となる。衛星基幹放送局は、放送に使う人工衛星の無線局のことで、BSのテレビ局などはこの衛星の設備を借りて番組を届けている。B-SATは現在もBS放送の無線局の免許人として、放送局の設備を放送事業者に提供する事業を担っている。地上のラジオ放送の設備をめぐる総務省の対応は、AMラジオの運用休止、9月30日の期限を越えて延長 27社88局が停波中、うち43局は2028年10月31日まで 総務省はAM中継局の廃止を可能にする制度整備を予定で報じている。

経緯をたどると、総務省は2024年12月に公表した「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第3次)」で、BS放送とCS放送の新しい衛星を2029年度後半に「共同衛星」として打ち上げる目標を掲げ、BS用の新衛星の免許は2026年中をめどに公募を始めるとした。今年2月には衛星放送の事業者などを対象に、新衛星の免許方針を含む衛星放送インフラのあり方について意見を募った。

これを受けて総務省は5月1日から6月4日まで免許方針の訓令案について意見を募集し、11件の意見が寄せられた。7月3日に免許方針を定め、同日から8月31日まで申請を受け付けた。9月7日には、B-SATとスカパーJSATの2者から申請があったと公表していた。

両者とも申請書で、工事落成の期限を2030年7月31日としていた。

「12チャンネルすべて」が条件、重なった希望

免許方針は、申請者がまず最低限満たすべき基準を「絶対審査」で確かめ、複数の申請者が通過して希望する周波数が重なる場合は「比較審査」で優劣を付ける二段構えをとった。

絶対審査の主な要件は、BS・CSの共同衛星であること、単独か他者との連携によって12チャンネルをすべて使うこと、衛星の調達方法を適正かつ安価にする工夫があること、放送事業者の負担額が既存の料金より安く上限が決まっていることなどだ。新たに調達する衛星には13年以上の設計寿命も求めた。総務省は、技術基準や経理的基礎など6項目で審査し、2者ともすべて「適」と判定した。

一方、両者が希望したチャンネルは重なっていた。B-SATは第1希望の9チャンネルから、第3希望の12チャンネルまで4通りの組み合わせを示したうえで、希望どおりの割り当てが得られない場合に備え、業務継続の見地から6〜8チャンネルの選択肢も挙げていた。スカパーJSATの希望は6チャンネルだった。

総務省の資料によると、一つの衛星で公募対象の12チャンネルをすべて使う要件を満たすのは、B-SATの第3希望(12チャンネル)か、スカパーJSATの希望(6チャンネル)とB-SATの第7希望(6チャンネル)の組み合わせだけだった。後者なら双方に予備免許を与えることもできたが、一つの申請に複数の希望がある場合は優先順位の高い順に審査する決まりのため、B-SATの第3希望とスカパーJSATの申請とを比較審査することになったと説明している。

料金の見込みで差、点数は2対0

比較審査は5つの事項について対抗的に行い、相手より優位と判定した数に応じて1点を与える方式をとった。結果は次の通り。

比較審査事項 B-SAT スカパーJSAT
(1) 資金計画・設備の整備計画などの確実さ 1点 0点
(2) 衛星の調達・打ち上げ費用を安くする計画 0点 0点
(3) 安定的な提供と普及のための計画 0点 0点
(4) 放送局設備供給の料金見込額の水準 1点 0点
(5) 安全・信頼性を確保する対策 0点 0点
合計 2点 0点
次期BS衛星の免許をめぐる比較審査の採点出典: 総務省「BS放送に係る基幹放送局の予備免許」別紙1(2026年10月19日)

差が付いた一つは料金だ。ハイビジョン放送(広帯域伝送方式、水平1440画素)を行う場合に放送事業者が払う放送局設備供給役務の月額料金の見込額は、B-SATが1,560万円、スカパーJSATが1,850万円で、総務省はB-SATを優位とした。

もう一つは(1)の資金・設備・人材だ。資金の確保では、必要な資金を自己資金で賄うとしたスカパーJSATを優位とした。B-SATは一部をみずほ銀行を幹事とするシンジケートローンで借り入れる予定としていた。一方、設備の整備計画では、予備衛星や管制施設などをおおむね既存の設備で賄うB-SATを優位とし、他者からの借用や新設を予定するスカパーJSATを下に置いた。技術者の確保でも、訓練や職員配置の計画を具体的に示したB-SATを優位とし、(1)全体ではB-SATに1点を与えた。

(2)の衛星の調達・打ち上げ費用は、比較の対象となる衛星を両者が共同で調達するため同等と評価した。設計寿命はB-SATが15年以上(燃料寿命19年)、スカパーJSATが15年(燃料寿命15年以上)としていた。(3)の料金・役務の協議方法や普及策、(5)の災害時の事業継続、サイバーセキュリティ、経済安全保障、地上設備の物理的な防護も、いずれも同等とされた。

申請した2社の横顔

B-SATは1993年4月の設立で、資本金は150億円。主な出資者として日本放送協会(NHK)、WOWOW、TBS、テレビ朝日、BS日テレ、ビーエスフジ、BSテレ東が名を連ねる。放送衛星の調達・運用・管理を主な業務とする。

スカパーJSATは2007年4月の設立で、資本金は101.72億円。宇宙関連事業(通信・放送)とメディア事業を手がけ、現在は東経110度CS放送の無線局の免許人として、放送局の設備を提供している。

予備免許の対象は、B-SATの衛星基幹放送局5局で、使う周波数は11.72748ギガヘルツから12.14944ギガヘルツまでの12波。種類は超高精細度テレビ放送、ハイビジョン放送、標準テレビ放送、超短波放送(ラジオ)、データ放送となっている。

総務省の資料は、比較審査で下回った申請についても、希望する周波数を割り当てられる場合には予備免許を与えるとしている。今回の発表で、電波監理審議会に諮問した予備免許はB-SATの5局だけだった。

料金の低廉化を条件に、毎年の報告

総務省は、インフラコストの低減と透明化の実効性を確保するため、電波法104条の2第1項に基づいて予備免許に条件を付ける。放送事業者の負担額を安くすることや、放送事業者への情報開示など、免許申請時に出した事業計画を守り、その状況を1年ごとに報告するよう求める。

あわせて、近年激しさを増す気象災害や大規模地震などを想定して、災害対応の体制を充実させ、予備送信機や予備電源を整えるなど放送施設の安全性と信頼性を高めることを要請する。基幹放送局を提供する事業者として、役務の提供を一層効率化することも求める。

免許方針は、新衛星の料金の見込額が既存の料金より安いことを絶対審査の要件にし、比較審査でもその水準を独立した項目として採点した。