民間のAMラジオ局が放送を止めている「運用休止」の期間が、9月30日で期限を迎える。総務省が2023年3月に公表した特例措置に基づく取り組みで、AM放送をFM放送に切り替えた場合に聴取者がどう困るかを、実際に電波を止めて確かめている。総務省は結果を踏まえ、AMからFMへの転換に必要な制度整備の検討に入る。

47社のうち27社が電波を止めている

総務省の資料によると、全国の民間AMラジオ放送事業者は47社ある。1回目の特例措置を受けたのはそのうち13社で、再免許に伴って申請のあった38局のうち34局が対象になった。残る4局は、休止すると世帯やエリアのカバー率を最大限維持できるとは認められないとして対象から外された。FM補完中継局もケーブルテレビの再放送も他のAM局も届かない、あるいは他のAM局では十分に補えないのにFM補完中継局が整備される予定がない、という理由だ。

休止は2024年2月1日から順に始まった。同年3月5日の総務省資料の時点では10社20局だったが、その後13社34局まで広がった。当初の期限は2025年1月31日だったが、インターネット配信でどこまで代わりになるかも合わせて確かめるため、2026年9月30日まで延びた。

2回目の特例措置は適用期間を2025年9月1日から2026年10月31日までとし、1回目の13社を除く14社が対象になった。青森放送、ラジオ福島、栃木放送、山梨放送、信越放送、CBCラジオ、静岡放送、京都放送、山陰放送、中国放送、西日本放送、四国放送、大分放送、宮崎放送の14社で、2025年12月1日から2026年3月30日にかけて順次止めている。1回目の13社も新たな局を追加した。2つを合わせると27社となり、全国47社の半分を超える事業者がAM局の電波を止めている状態だ。

送信設備は50年超、AMとFMの二重負担

令和8年版情報通信白書は、民間AMラジオ放送事業者が使うAM送信設備には設置から50年以上たったものが多く、老朽化が深刻だと記している。AM放送は531〜1602キロヘルツの電波を使い、波長は約200〜600メートルに及ぶ。アンテナも大きくなり、NHK第1放送の594キロヘルツなら波長は約500メートル、実際に建てる短縮アンテナでも100メートル強になる。これに対しFM放送は76.1〜98.9メガヘルツで波長は約3〜4メートルと短く、山頂や鉄塔に小さなアンテナを置けば済む。設備の更新費用の差が、そのまま経営の重さの差になる。

負担が二重になっている事情もある。AMが建物の中で聞こえにくい「難聴」を補うために始めたFM補完放送(ワイドFM)によって、事業者はAMとFMの両方の設備を抱えることになった。白書は、事業収入が減少傾向にあるため、AM放送設備の更新費用が経営上の課題になっていると説明している。2020年7月1日に総務省が公表した「放送事業の基盤強化に関する取りまとめ」は、民間AMラジオ放送事業者の経営は厳しく、企業努力で対応できる範囲を超えていると踏み込んでいた。

止めるといっても、事業者が勝手に電波を落とせるわけではない。電波法第76条第4項第1号は「正当な理由がないのに、無線局の運用を引き続き六月以上休止したとき」に総務大臣が免許を取り消すことができると定めている。長く止めれば免許を失いかねない建て付けになっており、特例措置はこの規定に該当しないものとして扱うことで、6か月以上の休止を可能にする仕組みだ。適用を受けるには、休止開始日の遅くとも3か月前から周知広報を始めること、同じく3か月前から問い合わせ窓口を置くこと、災害時のラジオ放送について取り決めのある自治体とは大規模災害時の運用再開や再休止まで含めて調整すること、報告書を作ることなどが求められる。国が5年ごとに免許を出し直す仕組みの重みは、携帯の電波免許、2027年10月に一斉更新へ 総務省が審査基準の新設案 3.5GHz帯の基地局増設は年1万3989局から3976局に鈍化で携帯電話について示したとおりで、ラジオも同じ再免許の節目で制度が動く。

聴取者の反応をどう確かめたか

事業者は休止の結果を報告書にまとめ、総務省のページから公開している。山口放送は2025年2月28日付の報告で、ホームページとアプリでアンケートを実施したと明らかにした。期間は2025年2月7日から23日までで、回答は774件。カーラジオのワイドFM対応が80%を超えていたことから、FMへの切り替えは着実に進んでいると受け止める一方、災害時の周知やトンネル内でのFM再送信への対応、FMが届く範囲のさらなる拡充が課題だとしている。同社は2015年からFM中継局の建設を進め、これまでに14の中継局を整備して県内のほぼ全域でFMが聞ける状態にしたという。

課題はあらかじめ洗い出されていた。2020年の取りまとめは、AMのほうが山間地まで届きやすいためFMに変えると一部地域で受信できなくなる可能性、FM補完放送の周波数に対応した受信機の普及、災害用に買ったAM専用ラジオでFMが聞けないと災害時まで気づかないおそれ、FM用周波数のひっ迫、そして政見放送がAMでは実施されているのにFMでは実施されていないことなどを挙げていた。実証としての停波にあたっては、災害の発生や大きな課題が生じた場合にすぐAM放送を再開できる状態を保っておくことが適当だとも記している。旧世代の方式が役目を終える流れは、3G携帯の契約数がゼロに 2026年6月末 ドコモのFOMA終了で24年半の歴史に幕 5Gは1億3153万契約と重なるが、AMラジオは災害時の備えという役割を抱えている点が違う。

期限は2028年の免許更新

制度を変える期限は決まっている。日本民間放送連盟は2019年3月、総務省の検討分科会に対し、遅くとも2028年の再免許時までにAM放送からFM放送への転換や両方の併用を全国的に可能にすること、2023年の再免許時を目途に一部地域で長期間の停波を実証実験としてできるよう制度的措置を講じることの2点を要望した。このうち2点目が今回の特例措置にあたる。2020年の取りまとめも、停波までに対応できなかった課題は検証結果を踏まえ、2028年の再免許時までに行う全国的な制度整備に間に合うよう取り組むべきだとしていた。

1回目の結果は「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の第32回会合に報告され、再度の特例措置を設けることが適当と判断された。総務省は2025年5月29日に2回目の申請受付を発表し、翌30日から受け付けを始めている。令和8年版情報通信白書は、総務省が運用休止の結果を踏まえて必要な制度整備について検討を行う予定だと記している。休止期間は9月30日までで、特例措置の適用期間は1回目・2回目ともに10月31日までとなっている。