総務省は10月19日、令和7年度(2025年度)の民間放送事業者の収支状況を取りまとめて公表した。地上波でテレビ・ラジオを放送する民放194社(地域向けのコミュニティ放送を除く)の売上高は前年度比1.1%増の2兆2079億円、本業のもうけを示す営業利益は同11.4%増の994億円で、いずれも前年度を上回った。ラジオ事業者67社は合計の営業損益が前年度のマイナスからプラスに転じた。一方、BS・CSの衛星放送とケーブルテレビは、本業の収益・利益とも前年度を下回った。

地上波194社、売上高・利益とも増える

集計は、地上基幹放送事業者が総務省に出した令和7年度の事業収支結果の報告に基づく。対象はテレビ127社とラジオ67社の計194社で、社数は前年度と同じ。

194社の売上高は2兆2079億円(前年度比1.1%増)、費用の合計は2兆1085億円(同0.7%増)だった。費用の伸びを売上高の伸びが上回り、営業利益は994億円(同11.4%増)、経常利益は1346億円(同6.4%増)、最終的なもうけを示す当期損益は1240億円(同40.8%増)となった。前年度の数値は営業利益892億円、当期損益881億円で、いずれも増えた。

最終損益で見ると、194社のうち黒字は151社(前年度147社)、赤字は43社(同47社)だった。売上高が前年度より増えた社は116社あった。

売上高に占める営業利益の割合(売上高営業利益率)は、地上系全体で4.5%と前年度の4.1%から上がった。総務省の別紙は比較のため、財務省の法人企業統計調査から全産業の値を並べており、全産業は前年度の5.0%から5.4%だった。地上波の民放は利益率が上がったものの、全産業の水準には届いていない。

売上高営業利益率の推移(%)

2024年度2025年度

-202464.34.7テレビ-0.41.2AM短波0.21.4FM4.14.5地上系5.05.4全産業
コミュニティ放送を除く。全産業は総務省の別紙が財務省の法人企業統計調査から引いた値出典: 総務省「令和7年度民間放送事業者の収支状況」別紙
数値で見る(単位: %)
項目2024年度2025年度
テレビ4.34.7
AM短波-0.41.2
FM0.21.4
地上系4.14.5
全産業5.05.4

テレビ127社は増益、赤字のテレビ単営社は13社に

テレビ127社の売上高は2兆1038億円(前年度比1.2%増)、営業利益は980億円(同9.7%増)、当期損益は1198億円(同37.3%増)だった。

内訳を見ると、テレビだけを放送する「テレビ単営社」96社は売上高1兆9124億円(同1.2%増)、営業利益906億円(同7.9%増)、当期損益1112億円(同35.9%増)。中波(AM)ラジオとテレビを兼ねる「ラジオ・テレビ兼営社」31社は売上高1914億円(同0.9%増)、営業利益74億円(同38.1%増)だった。

ただ、全体が増益でも個々の社の明暗は分かれた。テレビ単営社の当期損益は黒字が87社から83社に減り、赤字が9社から13社に増えた。兼営社は黒字が25社から27社、赤字が6社から4社となった。

テレビ局の経営をめぐっては、総務省が9月に規制を見直している。同じ地域のテレビ局、1社で2局まで持てるように マスメディア集中排除原則を総務省が緩和、2026年9月28日に省令を改正・施行 「全国で民放4系統」という国の目標も取り下げで伝えた通り、同じ放送対象地域で1社が2局まで持てるようにする省令改正が公布・施行された。今回の収支は令和7年度の数値で、この改正より前の期間を集計したものだ。

ラジオ67社は営業黒字に、AM単営社も赤字が減る

ラジオ事業者67社の売上高は1042億円(前年度比0.3%増)とほぼ横ばいだったが、費用が1028億円(同1.2%減)に減り、営業損益は13億7500万円の黒字となった。前年度はマイナスだったため、総務省の表では増減率を算出していない。経常利益は55億3700万円(同174.8%増)、当期損益は42億2500万円(同410.7%増)だった。

AMラジオだけを放送する「中波単営社」16社は、売上高が478億6600万円(同1.3%減)と減ったものの、費用を473億円(同3.0%減)に抑え、営業損益が5億6800万円のプラスに転じた。FMラジオの「超短波単営社」50社は売上高544億9000万円(同1.8%増)、営業利益7億5900万円(同749.1%増)だった。短波の1社は売上高18億2000万円、営業利益4800万円(同21.3%減)。

売上高営業利益率は、AM・短波が前年度のマイナス0.4%から1.2%に、FMが0.2%から1.4%に上がった。当期損益の黒字・赤字の社数は、AM・短波単営社が黒字8社・赤字9社から黒字12社・赤字5社に、FM単営社が黒字27社・赤字23社から黒字29社・赤字21社に変わった。

AMラジオの運用休止をめぐる経緯はAMラジオの運用休止、9月30日の期限を越えて延長 27社88局が停波中、うち43局は2028年10月31日まで 総務省はAM中継局の廃止を可能にする制度整備を予定にまとめている。

地域向けのコミュニティ放送は、集計できた315社(前年度313社)の売上高が147億5500万円(同2.8%増)に増えたが、営業損益は3億5400万円の赤字だった。当期損益の黒字は180社、赤字は135社。決算期が来ていない社は直近の事業収支を使って集計している。

衛星放送は収益・利益とも減る、110度CSの営業利益は26.8%減

衛星系の放送事業者38社(前年度39社)では、衛星放送事業の営業収益が3150億7200万円(前年度比1.6%減)、営業利益が203億8400万円(同8.7%減)とともに減った。ほかの事業も含めた企業全体では営業収益5110億3300万円(同0.2%増)、営業利益417億6300万円(同5.3%増)と増えた。

衛星系は、BS放送と東経110度CS放送を「衛星基幹放送」、それ以外の衛星放送を「衛星一般放送」と分けて集計している(2011年6月に改正・施行された放送法に基づく区分)。

BS放送20社の衛星放送事業は営業収益2056億8900万円(同0.3%増)、営業利益155億7100万円(同6.5%減)。このうち在京テレビキー局系のBS5社は営業収益788億8100万円(同1.7%減)、営業利益140億4400万円(同5.4%減)だった。

東経110度CS放送20社の衛星放送事業は営業収益700億6000万円(同5.6%減)、営業利益24億1300万円(同26.8%減)と落ち込みが目立った。営業収益は令和5年度が777億円、令和6年度が742億円で、さらに減った。衛星一般放送2社は営業収益393億2300万円(同3.4%減)、営業利益24億円(同1.0%増)だった。

衛星放送事業の営業損益で見た黒字・赤字は、延べ42社のうち黒字35社・赤字7社で、前年度の黒字33社・赤字9社から改善した。

ケーブルテレビ事業も減収減益、赤字は39社

ケーブルテレビは、有線設備で自主放送を行う登録一般放送事業者(営利法人に限る)のうち集計できた275社(前年度276社)が対象。ケーブルテレビ事業の営業収益は4877億7100万円(前年度比0.7%減)、営業利益は387億6200万円(同4.0%減)だった。

ケーブルテレビ以外の事業も含む企業全体では、営業収益5兆4671億5100万円(同2.5%増)、営業利益8683億4000万円(同3.9%増)と増えている。

ケーブルテレビ事業の営業収益は令和3年度の5203億円から毎年減り、令和7年度は4878億円となった。総務省は今回から、IPマルチキャスト方式の事業者などを集計に加え、過去の年度も同じ方式で合算し直したため、昨年度までの公表値とは数値が異なるとしている。

単年度で赤字を計上したのは275社中39社(14.2%)で、前年度の43社(15.6%)から減った。

表: 区分ごとの本業の収支(2025年度)

区分 社数 営業収益・売上高 前年度比 営業損益 前年度比
地上テレビ 127 2兆1038億円 1.2%増 980億円 9.7%増
地上ラジオ 67 1042億円 0.3%増 13億7500万円 黒字転換
コミュニティ放送 315 147億5500万円 2.8%増 3億5400万円の赤字 ―
衛星放送事業 38 3150億7200万円 1.6%減 203億8400万円 8.7%減
ケーブルテレビ事業 275 4877億7100万円 0.7%減 387億6200万円 4.0%減

出典: 総務省「令和7年度民間放送事業者の収支状況」別紙(衛星とケーブルは放送事業の分。地上は企業全体の売上高)