電子書籍販売サイト「Renta!(レンタ)」を運営する株式会社パピレス(東京都千代田区、東証スタンダード上場)は10月19日、同サイトのサーバーに外部から不正なアクセスがあった可能性を把握したため、サービスを一時停止して緊急メンテナンスを行っていると開示した。可能性を把握したのは18日。不正アクセスの詳細は調査中で、サービスを再開する時期は決まっていない。業績への影響も精査しており、影響額は現時点で算定できていないという。

18日に把握し停止 個人情報への影響や手口には触れず

パピレスは19日午前、東京証券取引所の適時開示で「当社が運営する電子書籍販売サイト『Renta!』のサービス一時停止に関するお知らせ」を公表した。それによると、同社は10月18日に、Renta!のサーバーに対して外部からの不正なアクセスの可能性があることを把握した。これを受けてRenta!のサービスを一時停止し、緊急メンテナンスに入った。

開示は「本公表時点において、外部からの不正アクセスの詳細について調査中」とし、サービスの再開時期は「未定」としている。不正アクセスの調査結果や再開時期など、新たな事実が分かった場合は速やかに公表するとした。

適時開示は、上場会社が投資判断に影響する重要な情報を、東証のシステムを通じて投資家に一斉に知らせる仕組みだ。パピレスは開示の中で、本件が業績に与える影響を「現在精査中」とし、「業績に与える影響額等については、現時点において、算定できておりません」と記している。開示すべき事項が判明すれば速やかに知らせるという。

今回の開示は全1ページで、伝えている事実は「不正アクセスの可能性を把握したこと」「サービスを止めたこと」「詳細と影響は調査中であること」に限られる。不正アクセスがいつから始まったのか、どのような手口だったのか、会員の氏名や連絡先、決済に関わる情報などに影響が及んだのかについては、何も書かれていない。

サービスを止めるのは、外部からの侵入の可能性がある状態で運営を続けないための措置とみられる。止まっている間は、Renta!で作品を新たに購入したりレンタルしたりすることはできない。開示は、停止の対象がRenta!のどの機能やどの地域向けのサイトにまで及ぶのかも具体的に示していない。

「電子貸本」から始まった会員1100万人超のサイト

Renta!は、パピレスが2007年4月に電子コミックのレンタルサイト「電子貸本Renta!」として始めた。同社の沿革によると、同年11月にはレンタル期間を48時間に延ばし、その後、小説や実用書、写真集へと扱う分野を広げた。2020年10月には、同社の「電子書店パピレス」と「犬耳書店」をRenta!に統合している。

一定期間だけ作品を読めるレンタル販売が特徴で、同社の2026年3月期決算説明会資料によると、2025年度の全掲載冊数157万冊のうち、レンタルで読める作品は60万冊を超えた。資料は、レンタル販売には出版社からの配信許諾が必要で、掲載作品数の増加に力を入れているとしている。Renta!の会員数は2025年度に1100万人を超えたという。

海外向けにも直営サイトを持ち、資料によると、台湾市場向けの繁体字版は会員数169万人以上・掲載冊数19万冊、英語版は会員数73万人以上・掲載冊数9万冊に広がった。今回の停止が海外向けのサイトにも及んでいるかどうかは、開示には書かれていない。

パソコン通信の電子書店から30年、売上高147億円

パピレスの前身は1995年3月に設立された株式会社フジオンラインシステムで、同年11月にパソコン通信上で「電子書店パピレス」を始めた。1996年12月にはインターネットのサイトを開き、2000年10月に現在の社名に改めた。同社は沿革で、1998年1月に「世界で初めて」デジタル漫画のダウンロード販売を始めたとしている。2010年6月に大阪証券取引所のジャスダック市場に上場し、現在は東証スタンダード市場に属する。従業員数は2025年3月31日時点で連結158人。事業内容として電子書籍の販売、レンタル販売、取次販売を挙げている。

業績を見ると、2026年3月期の連結売上高は147億4000万円で、前の期の157億6800万円から6.5%減った。同社は減収の理由を「広告規制による減少」と説明している。本業のもうけを示す営業損益は、前の期の3億900万円の赤字から1億2700万円の黒字に転じた。

項目 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期予想
売上高 157億6800万円 147億4000万円 153億2800万円
営業損益 3億900万円の赤字 1億2700万円 3億3400万円
経常損益 2億8300万円の赤字 4億8100万円 3億9100万円
純損益 1億6400万円の赤字 400万円の赤字 1億2700万円
パピレスの連結業績(純損益は親会社株主に帰属する当期純損益)

出典: パピレス「2026年3月期 決算説明会資料」

今期の2027年3月期について、同社はオリジナル作品の拡販や広告の最適化を進め、売上高を153億2800万円(前期比4.0%増)、営業利益を3億3400万円とする予想を示していた。今回のサービス停止がこの予想にどう響くかは、19日の開示では「精査中」とされている。

侵入経路と会員情報、再開時期が焦点に

不正アクセスを受けて利用者向けのサービスを止めた10月の事例は、ゲオ・セカスト運営会社に不正アクセス アプリと通販、宅配買取を停止でも伝えた。企業や組織を狙った攻撃の現状と、漏えいが起きた後の監督の仕組みは、サイバー攻撃と情報漏えいの全体像 ランサム被害は最多123件、入口はVPNと委託先にまとめている。

不正アクセスで個人データが漏れたり、漏れたおそれがあったりする場合、事業者は個人情報保護委員会への報告が義務づけられている。委員会によると、報告はまず発覚後速やかに行い、不正な目的で行われたおそれがある場合は、発覚日から60日以内に確定した内容を報告する。本人の数が1000人を超える漏えい等や、財産的被害が生じるおそれがある漏えい等も報告の対象になる。ただし、今回の件で個人データの漏えいやそのおそれがあるかどうかは、パピレスの開示からは分からない。

Renta!をめぐっては、どこから侵入されたのか、会員の情報に影響があったのか、いつ再開できるのかが、今後の焦点になる。パピレスは、調査結果やサービス再開の時期など新たな事実が判明しだい速やかに公表するとしており、業績への影響についても、開示すべき事項が分かれば知らせるとしている。