日本銀行は10月2日、2026年9月のマネタリーベースを公表した。平均残高は532兆8464億円で、前年同月より15.2%減った。2020年5月の530兆8787億円以来、6年4か月ぶりに低い水準である。2024年4月に記録した過去最高の689兆8964億円からは157兆500億円、22.8%縮んだ。

マネタリーベースとは何か

日銀の解説によると、マネタリーベースとは「日本銀行が供給する通貨」のことだ。市中に出回っている現金である「日本銀行券発行高」と「貨幣流通高」に、金融機関が日銀に預けている「日銀当座預金」を足した金額を指す。家計や企業が持つお金の総量を測る「マネーストック」とは別の統計で、マネーストックが金融部門全体から経済に供給される通貨をみるのに対し、マネタリーベースは中央銀行が出した通貨だけをみる。流通現金には金融機関が手元に置いている分も含まれる。

この統計が注目されるのは、金融緩和をどれだけ巻き戻したかがそのまま数字に出るためだ。日銀が国債を買えば代金が金融機関の当座預金に入り、マネタリーベースは増える。買う量を減らし、手持ちの国債が満期を迎えて返ってくる分が買い入れを上回れば、当座預金から資金が抜けて減る。いまの減少は、後者が続いている状態を示している。

減ったのは当座預金 150兆円が抜けた

9月の内訳をみると、減少のほとんどが当座預金で起きている。日銀当座預金は413兆6678億円で前年同月より18.3%減、うち準備預金は382兆8930億円で17.3%減だった。当座預金の過去最高はマネタリーベースと同じ2024年4月の564兆4691億円で、そこから150兆8013億円減った。水準は2020年4月の403兆6185億円以来の低さに近づいている。

現金は様子が違う。日本銀行券発行高は114兆6005億円で2.0%減、貨幣流通高は4兆5781億円で1.2%減と、減り方は小幅だ。紙幣の発行残高は2023年1月の123兆3174億円が最高で、そこからの減少は8兆7169億円にとどまる。キャッシュレス決済の広がりで現金は緩やかに減っているが、金融政策で大きく動くのは当座預金のほうだという構図である。

季節調整をした前月比の年率でみると、9月は10.2%減だった。8月の28.8%減からは減り方が弱まっている。四半期でみた7〜9月期は14.9%減で、4〜6月期の12.4%減より加速した。月ごとの振れは大きいが、2025年10〜12月期に8.7%減となって2桁減に近づいて以降、縮小は一本道で続いている。

国債の買い入れは月2兆3000億円まで減った

縮小の直接の原因は、長期国債の買い入れを減らす計画だ。日銀は2026年6月16日の金融政策決定会合で、月間の買い入れ予定額を2027年1〜3月までは原則として毎四半期2000億円程度ずつ減らし、2027年4月以降は月2兆円程度とすることを決めた(賛成7・反対1)。別紙の表では2026年4〜6月が月2兆7000億円程度、7〜9月が月2兆5000億円程度、10〜12月が月2兆3000億円程度、2027年1〜3月が月2兆1000億円程度となっている。減額が始まる前の2024年7月は月5兆7000億円程度だったので、2年あまりで半分以下になった計算だ。

この会合では田村委員が、2028年1〜3月まで毎四半期2000億円程度の減額を続ける議案を出し、反対多数で否決された。長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきだという理由である。日銀は、長期金利が急激に上昇する場合には毎月の予定額にかかわらず買い入れ額の増額や指値オペを機動的に実施するとしており、減額の道筋は固定ではない。買い入れ計画の中間評価は実施しないが、国債市場の動向を踏まえて必要な場合は決定会合でペースを見直すこともありうるとしている。

残高の面では、日銀の国債保有割合、41.16%に低下 2023年12月末の47.90%から 買い入れ減額の受け皿は銀行と家計で示したように、国債の保有者としての日銀の比重が下がり、銀行や家計が受け皿になりつつある。マネタリーベースの縮小は、その裏側で日銀の負債側に起きている変化にあたる。

2030年3月末には36〜39%減る見通し

日銀は買い入れ計画とあわせて、国債保有残高の見通しも示している。月2兆円程度の買い入れを維持した場合の試算で、額面ベースの残高は2027年3月末に480兆円程度、2028年3月末に430〜440兆円程度、2029年3月末に390〜400兆円程度、2030年3月末に350〜370兆円程度となる。減額を始める前の2024年6月末と比べた減少率は、順に17%程度、24〜25%程度、31〜32%程度、36〜39%程度である。

金利の側も動いている。日銀は2026年9月18日の決定会合で、無担保コールレート(翌日物)を1.25%程度で推移するよう促す方針を決め、9月24日から適用した(賛成7・反対2)。当座預金のうち所要準備額に相当する部分を除く金額に付く金利も1.25%、金融機関が日銀から借りるときの基準貸付利率は1.5%になっている。日銀、政策金利を1.00%から1.25%程度へ引き上げ 賛成7・反対2 借入金利が同じだけ上がると1社平均で年46万円の利息負担増のとおり、量を絞ることと金利を上げることが同時に進んでいる。

当座預金に高い金利が付くほど日銀が支払う利息は膨らむため、残高が減ることは日銀の収支にとっては負担の軽減にあたる。一方で、金融機関からみれば日銀に置いておくだけで得られる収入が減ることになり、資金の置き場所を選び直す動きにつながる。マネタリーベースの数字は毎月2日前後に出る地味な統計だが、緩和の後片づけがどこまで進んだかを測るものさしとして、今後も毎月更新されていく。