厚生労働省は9月11日、令和8年の民間主要企業の夏季一時金(夏のボーナス)の妥結状況を公表した。平均妥結額は97万6043円で、前年の94万6469円から2万9574円(3.12%)増え、3年連続で過去最高を更新した。ただし増え方そのものは年々小さくなっており、伸び率は令和6年の6.29%、令和7年の5.31%から3.12%へと3年続けて下がっている。

集計の対象は労働組合のある大企業365社

この集計は、厚労省が労使交渉の実情をつかむために毎年行っているものだ。対象は資本金10億円以上かつ従業員1000人以上で労働組合のある企業のうち、妥結額を把握できた365社。全国の働き手の平均ではなく、日本の企業の中でも規模が大きく、労働組合を通じて交渉する力を持つ層に限った数字である点に注意がいる。集計社数は令和6年が326社、令和7年が342社と年によって入れ替わるため、金額の比較もその前提を含む。

対象から外れる層との差は小さくない。厚労省の労働経済白書は、医療・運輸・接客など「社会インフラ関連職」の欠員率は約5% ほかの職種は1.7% 年間所得は約436万円、ほかの職種は約541万円と分析しており、暮らしを支える職種ほど賃金が低い構図を示している。夏のボーナスの記録更新が、そのまま働き手全体の実感になるわけではない。

過去最高でも増加額は2年前の6割

金額だけを追えば右肩上がりが続く。令和6年は89万8754円、令和7年は94万6469円、そして令和8年が97万6043円だ。だが1年間で増えた額は、令和6年の5万3197円、令和7年の4万7715円に対し、令和8年は2万9574円にとどまった。2年前のおよそ6割の増え方で、100万円の大台まではあと2万3957円ある。

要求額はほぼ横ばい、妥結額との差は2万円台に

変化がはっきり出たのは労働組合側の要求額だ。令和8年の平均要求額は99万7612円で、前年の99万7430円からわずか182円(0.02%)の増にとどまった。前年は5万9508円(6.34%)上積みしていたのと対照的で、要求水準をほぼ据え置いた形になる。その結果、要求額と妥結額の差は令和7年の5万961円から令和8年は2万1569円まで縮まり、要求に近い線で決着する交渉が増えた。

月例賃金の方も伸びは鈍い。厚労省が7月31日に公表した令和8年の春季賃上げ集計(428社)では、平均妥結額は1万8167円、賃上げ率は5.18%で、前年の1万8629円・5.52%をいずれも下回った。賃上げ率が5%台に乗るのは3年連続だが、上げ幅は前年より小さい。

経団連の集計とは6万6494円の開き

同じ「大手企業の夏のボーナス」でも、集計する主体が変われば数字は変わる。経団連が8月6日に公表した2026年夏季賞与・一時金の最終集計では、総平均は104万2537円で、前年の最終集計97万4000円より7.04%多い。厚労省の97万6043円とは6万6494円の差がある。

違いの理由は対象の取り方にある。経団連の調査は原則として従業員500人以上の主要23業種の大手248社が対象で、このうち妥結を把握できた163社の加重平均だ。厚労省の365社とは企業の顔ぶれも業種構成も重ならない。どちらかが誤っているというより、見ている企業の範囲が違うと受け取るのが実態に近い。7月2日の第1回集計の時点では大手企業の夏ボーナス、初の100万円超え 経団連1次集計、総平均100万8706円だったが、集計が進んで社数が増えたことで、最終的な総平均はさらに上振れした。

なお経団連の最終集計を業種別に見ると、造船が129万2円、食品が122万637円、機械金属が116万3829円と高く、航空は70万7616円、紙・パルプは74万345円と低い。鉄鋼は89万5403円で前年から3.84%減、商業は113万2306円で3.56%減と、前年割れの業種もある。ボーナスは業績に連動して決まるため、賃上げ率よりも業種ごとの差が大きく出る。