金融庁は9月29日、新潟縣信用組合と興栄信用組合が提出した「組織再編成等実施計画」を認定したと発表した。金融機能強化法に基づく資金交付制度によるもので、両組合は2026年11月24日を目処に合併する予定だ。合併に伴うシステム改修や店舗の統廃合などに要する費用9億1607万100円のうち、4億1639万5500円の交付を預金保険機構に求める。
交付を求めるのは4億1639万5500円 最大は店舗の統廃合
計画は措置を4つに分けている。費用が最も大きいのは店舗統廃合関連の6億1044万5000円で、サテライト店舗化や店舗内店舗化といった新たな店舗エリア制の導入に充てる。次が窓口の出納事務や重要書類・重要鍵の管理を統一するための機器・装置導入で2億5499万8920円。ネットワーク環境の統一化などのシステム改修が4175万6000円、店舗看板の付け替えなどの合併関連対応が887万180円だ。
このうち交付対象として認められた経費は合計8億3279万1000円で、預金保険機構に交付を求める予定額はその半分の4億1639万5500円となる。措置ごとの内訳は、店舗統廃合関連が2億7747万5000円、機器・装置導入が1億1590万8600円、システム改修が1898万円、合併関連対応が403万1900円である。
具体的な店舗政策は6件挙がっている。興栄信組の酒屋支店を新潟縣信組荻川支店のサテライト店舗に移し、寺尾支店は新潟縣信組寺尾東支店の店舗内店舗にする。興栄信組の大野支店・赤塚支店は移転し、本店は新築移転する。新潟縣信組の吉田支店も、興栄信組の営業地域の一部である燕市の営業強化のため移転させる。計画は「店舗網は維持することを前提に」効率的な店舗運営を行うとしている。
両組合とも「基盤的金融サービス」は赤字が続く
資金交付制度は、合併や経営統合など事業の抜本的な見直しを行う地域金融機関に対し、経営基盤の強化に必要な追加的な初期コストの一部を国(預金保険機構)が交付する仕組みだ。金融庁の資料によると2021年7月に施行され、現行法上の申請期限は2026年3月末となっている。前提として、その地域で「基盤的金融サービス」を持続的に提供することが難しくなるおそれを示す必要がある。
計画はこの基盤的金融サービス利益を、有価証券利息配当金を除いた資金利益に役務取引等利益を足し、経費と与信費用を引いた額と定義している。2026年3月末の実績は新潟縣信組が18億4500万円の赤字、興栄信組が1億3500万円の赤字だった。新潟縣信組の赤字幅は2023年3月末の9億8600万円から拡大している。直近期は政策金利の引き上げで貸出金の利回りが上がったものの、預金コストの上昇が先行し、人件費や物件費の増加も重なったと説明している。
両組合を合わせた基盤的金融サービス利益は2026年3月末に19億8000万円の赤字で、合併しなければ2032年3月末も13億8000万円の赤字が続くと見込む。合併の効果は、営業力の展開による資金利益や手数料収入の増加(トップラインシナジー)が3億8800万円、店舗運営の効率化などのコスト削減が1億4200万円で、合わせて年5億3000万円と算定した。それを織り込んでも2032年3月末は8億5000万円の赤字が残る計算で、計画は基盤的金融サービス利益が「赤字基調での推移が見込まれる」と明記している。合併年度はシステム改修や機器導入の費用が先行するため、2028年3月末は合併しない場合よりかえって2億100万円悪化する見通しだ。
取引先の67.75%は従業員5名以内 県の人口は1997年がピーク
計画が公的資金の必要性の根拠に置いているのは、営業地域の縮み方だ。新潟県の総人口は1997年をピークに減少が続き、減少率は全国平均を上回る。生産年齢人口は2025年の115万人から2050年には74万人まで減る見通しで、両組合の店舗がある市区町村の平均では、2020年から2050年にかけて総人口が31.70%、生産年齢人口が41.87%減ると推計している。
事業所の減り方も示している。令和3年経済センサス活動調査によると、事業所数は平成28年と比べて全国で4.75%増えたのに対し、新潟県は5.65%減り、両組合の営業地区の平均では5.70%減った。
両組合の位置づけは小さくない。新潟縣信組は新潟県内に43店舗(うち1店舗は店舗内店舗)を構えて県内一円を営業地域とし、興栄信組は新潟市西区を中心に5店舗を展開する。県内での預金シェアは両組合合算で2.89%、貸出金シェアは2.26%にとどまるが、営業地域の取引事業者3969先のうち従業員5名以内の事業所が2689先、67.75%を占める。新潟市西区に限れば211先のうち174先、82.46%が従業員5名以内だ。小規模な事業者にどこが資金を回すのかという問題として、計画は合併の必要性を組み立てている。基幹システムは両組合とも信組情報サービス(SKC)の共同センターに加盟しており、統合はその上でのネットワーク環境の統一が中心になる。
資金交付制度の利用は7件目 これまでは銀行が中心
金融庁が「金融機能強化法に基づく実施計画」のページで履行状況報告書を公表しているのは、福井銀行・福邦銀行、青森みちのく銀行、あいち銀行、八十二長野銀行、荘内銀行・北都銀行、はばたき信用組合の6件だ。今回の認定はこれに続くもので、制度の利用は銀行同士の統合が中心だったが、信用組合の合併にも広がってきている。
金融庁は地域金融機関の経営基盤の強化を継続的な課題に挙げており、2026事務年度の金融行政方針でも金融機関の与信の集中リスクなどを点検対象に据えている(金融庁、データセンター向け融資を重点監視へ 2026事務年度の金融行政方針 国内不動産・大口与信と並べ集中リスクを点検)。中小事業者への資金供給の側では、事業者向け融資の貸金業規制の見直しも金融審議会で議論が始まっている(事業者向け融資の貸金業規制、緩和へ検討開始 金融審議会が初会合 日本で銀行免許のない外国銀行の協調融資参加が焦点)。
計画の進捗は、新潟縣信組の常務会などへの定期的な報告で管理する。措置の進捗管理は総務部、交付を受けた資金の経理は資金経理部が担当すると定めた。計画と乖離が生じた場合またはそのおそれがある場合は、担当部署が対策を検討し、常務会などの協議を経て営業店に是正の対応を実行するとしている。
