厚生労働省は、令和7年就労条件総合調査の結果を労働組合の有無と企業規模で組み合わせ直した特別集計を公表した。時間外労働の割増賃金率を一律に定めている企業のうち、その率が26%以上と法律の下限を超えている企業は、労働組合がある企業で18.7%、労働組合がない企業で2.7%だった。会社の規模をそろえて比べても差は残った。

残業の割増率、法定の下限を超えるのは組合がある会社で18.7%

就労条件総合調査は、常用労働者を30人以上雇う民営企業を対象に、労働時間制度や賃金制度を毎年調べている統計である。令和7年調査は6,448社を抽出し、3,820社から回答を得た(有効回答率59.2%)。今回の特別集計は、この回答を「労働組合がある企業」と「ない企業」に分け、さらに企業規模ごとに並べ直したもので、厚生労働省の統計情報ページに2026年8月3日付で掲載された。

まず、時間外労働の割増賃金率そのものを定めているかどうかで違いが出た。定めている企業は、労働組合がある企業で98.4%、ない企業で93.9%。裏を返すと、定めていない企業は組合がある企業で1.6%にとどまるのに対し、ない企業では5.5%あった。

割増賃金率を「一律に定めている」企業を100としたときの内訳をみると、率が25%の企業は、労働組合がある企業で80.7%、ない企業で96.4%。率が26%以上の企業は、労働組合がある企業で18.7%、ない企業で2.7%だった。調査対象の全企業でみると26%以上は4.6%である。

労働基準法37条は、時間外労働や休日労働について「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率」で割増賃金を支払うよう使用者に義務づけている。さらに、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分については5割以上と定める。調査が「25%」と「26%以上」で区切っているのは、時間外労働の割増賃金率の下限が2割5分にあたるためで、26%以上は法律が求める水準を上回って支払っている企業ということになる。残業そのものが法令を守って行われているかは別の問題で、違法な残業、1万1228事業場で確認 月200時間超の労働者がいた職場も111 厚労省が令和7年度の監督指導結果のとおり、労働基準監督署の監督指導では違法な時間外労働が毎年多数見つかっている。

会社の規模をそろえても差は縮まらない

労働組合は大きな会社に多いため、こうした差は「組合の有無」ではなく「会社の大きさ」を映しているだけではないか、という見方が出てくる。今回の集計は企業規模ごとの数字も載せており、規模をそろえても差は残っている。

割増賃金率が26%以上の企業の割合は、従業員1,000人以上規模では労働組合がある企業の28.0%に対し、ない企業は2.7%。300〜999人規模では30.3%と5.4%、100〜299人規模では24.7%と3.4%だった。最も小さい30〜99人規模でも6.8%と2.3%で、組合がある企業のほうが高い。

また、時間外労働の時間数などに応じて異なる率を定めている企業も、労働組合がある企業で11.5%、ない企業で8.3%だった。

休日の差は小さく、フレックスタイム制では開く

一方、休日の制度では差が小さかった。完全週休2日制を主な週休制とする企業は、労働組合がある企業で69.3%、ない企業で65.0%。週休1日制または週休1日半制の企業は、組合がある企業で4.8%、ない企業で5.7%である。従業員1,000人以上規模に限ると完全週休2日制は組合がない企業が78.3%で、組合がある企業の77.6%をわずかに上回り、大小が入れ替わった。

なお、完全週休3日制を主な週休制とする企業は調査対象の全企業で0.0%、月3回や隔週など完全週休3日制より休日が実質的に少ない制度を含めても0.9%にとどまる。

差が開いたのは働く時間の柔軟さを示す制度である。フレックスタイム制を導入している企業は、労働組合がある企業で19.5%、ない企業で6.7%。1,000人以上規模では42.0%と23.6%、300〜999人規模では32.6%と18.3%、100〜299人規模では21.6%と9.5%だった。変形労働時間制を何らかの形で導入している企業も、組合がある企業で67.6%、ない企業で59.2%となっている。賃上げの水準そのものも労使交渉の結果に左右され、大手企業の夏のボーナス、平均97万6043円で3年連続の過去最高 伸び率は3.12%、2年前の6.29%から鈍化で示した一時金の妥結額は、労働組合のある主要企業を集計したものである。

組合は大企業に偏り、30〜99人規模の組織率は0.7%

ただし、この集計が示す条件の差が届く範囲は限られている。厚生労働省の令和7年労働組合基礎調査によると、2025年の労働組合員数は992万7千人で前年より1万5千人増えた。労働組合の数は22,244組合で268組合減っている。推定組織率は、前年の16.1%から16.0%へ下がった。組合員が増えたのに組織率が下がったのは、分母となる雇用者数が6,139万人から6,205万人へ増えたためである。推定組織率は2021年には16.9%だった。

偏りが大きいのは企業規模別の数字である。民営企業の労働組合員数を規模別にみると、1,000人以上規模が596万7千人で全体の68.3%を占め、推定組織率は38.7%。ただしこれも前年の40.0%から下がっている。300〜999人規模の推定組織率は9.9%で前年と同じ、30〜99人規模は0.7%だった。100〜299人規模の組合員数は52万6千人、29人以下は2万人である。

つまり、割増賃金率やフレックスタイム制で見られた条件の差は、従業員1,000人以上の大企業では4割近くの働き手が関わる話だが、30〜99人規模では100人に1人にも届かない。就労条件総合調査が対象とする30人以上の企業の中でも、労働組合という交渉の窓口を持つ職場は規模によって大きく偏っている。