国土交通省は10月15日、2024年1月の能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通しを、2026年9月末時点でまとめて公表した。七尾市と穴水町で計2地区64戸の災害公営住宅が完成し、順次入居が始まった。輪島市と珠洲市を結ぶ国道249号沿岸部では、逢坂トンネル工区で9月18日に一般交通の2車線通行を確保した。
3か月ごとに進み具合を公表
国交省は地震後、道路や河川、港湾、住宅など所管する分野ごとの復旧の実績と今後の予定を一つの資料にまとめ、定期的に公表している。前回は7月に6月末時点の状況をまとめており、今回はそれから3か月分の進み具合を反映した。資料は6月末からの変更点を赤字で示している。
資料は全体の認識として、2024年9月の奥能登豪雨による被災分も含め、二次災害に直結する切迫した被災箇所の応急対策は全て終わり、本復旧などが順調に進んでいるとした。そのうえで、住まいの再建、漁業の再開、観光の再生など、暮らしと生業(なりわい)の再生に向けた動きが本格化しているとしている。国交省は、復旧の見通し時期をできるだけ具体的に示すことで、被災地の再生に向けた動きが加速することを期待するとしている。
6月末時点からの主な変化は次の通り。
| 項目 | 6月末時点 | 9月末時点 |
|---|---|---|
| 災害公営住宅の工事に着手した市町 | 7市町 | 8市町 |
| 完成した災害公営住宅 | 最も早い地区で8月入居予定 | 2地区64戸が完成、順次入居 |
| 災害復興住宅融資の受理件数 | 425件 | 450件(8月末時点) |
| 傾斜した住宅の修復支援の申請受理 | 2,806件(6月1日時点) | 3,140件(9月1日時点) |
| 和倉温泉で営業を再開した旅館 | 19軒中9軒 | 19軒中11軒 |
| 国道249号・逢坂トンネル工区 | 一般車両の1車線通行 | 一般交通の2車線通行 |
出典: 国土交通省「令和6年能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通し(令和8年9月末時点)」
災害公営住宅、恒久的な住まいへの移行が始まる
災害公営住宅は、自力で住宅を再建するのが難しい被災者が入る公営の賃貸住宅だ。地震で家を失った人の多くは応急仮設住宅で暮らしており、建設型の仮設住宅は必要とされた6,882戸が2024年12月26日までに全て完成した。このうち木造の1,579戸は、将来の恒久使用も視野に入れて6市町で供給されている。
災害公営住宅は10市町が整備する予定で、計画戸数は3,061戸。全戸の用地確保のめどが立ち、全ての市町が2025年度末までに測量や設計に着手している。工事に着手したのは輪島市、珠洲市、能登町、穴水町、七尾市、中能登町、羽咋市、氷見市の8市町で、6月末時点の7市町から1つ増えた。このうち七尾市と穴水町で計2地区64戸が完成した。6月末時点の資料は、最も入居が早い地区を2026年8月の予定としていた。UR都市機構は輪島市、珠洲市と整備に関する基本協定を結んでいる。
自力で再建する人への支援では、住宅金融支援機構の災害復興住宅融資の受理件数が8月末時点で450件となった。6月末時点は425件だった。9月時点の融資金利は、返済期間20年以下で1.45%、21年以上で1.65%。60歳以上が対象で月々の返済を利息のみとする高齢者向け返済特例は2.38%となっている。
傾いた住宅の修復などへの支援は2024年7月に始まり、石川、富山、新潟の3県で受理した申請は9月1日時点で3,140件となった。6月1日時点は2,806件だった。
輪島市の輪島朝市周辺では、地元住民の合意のもとで土地区画整理事業などが進んでいる。資料によると、道路工事などにも着手し、一部の宅地では住宅や店舗の建築工事が進んでいる。
国道249号、本復旧は2029年春の予定
能登半島の外周をたどる国道249号の沿岸部は、地震と豪雨で大きく被災し、国が県に代わって復旧する「権限代行」で工事を進めている。輪島市門前町と珠洲市の間は2024年12月27日までに通行を確保したが、区間によっては緊急車両に限る1車線通行や、県道・市道を使った迂回路での確保にとどまっていた。
その後、大川浜工区で2025年4月に一般交通の1車線通行、中屋トンネル工区で同年7月にトンネルを使った2車線通行を確保した。逢坂トンネル工区は2025年12月23日に一般車両の1車線通行を確保しており、今回の9月18日の措置で2車線になった。
権限代行区間の約53キロ全体の本復旧は、用地買収や大型構造物の施工などが順調に進んだ場合、2029年春までの完了を予定している。能登への幹線道路である能越自動車道などは、のと三井インターチェンジ(IC)からのと里山空港ICまでなどの区間が2027年春までに本復旧を終える予定で、残る区間は2029年春の予定。国交省は、地震から5年程度での本復旧完了を目指すとしている。県道以上の道路の通行止めは、地震で87か所、豪雨で48か所に上ったが、2025年度末には計8か所まで減った。
沿岸を走る「いしかわ里山里海サイクリングルート」は2026年7月、国が指定するナショナルサイクルルートになった。6月末時点では候補ルートの段階だった。
河川・港湾と和倉温泉の再生
河川では、国が権限代行で進める全ての河川の本格的な復旧工事に2025年11月に着手し、2028年度末までに改良工事も含めて全ての箇所の完了を目指している。輪島市の河原田川は2026年5月に本格的な復旧工事が完成した。豪雨で大きな被害が出た塚田川の最下流の堰堤(えんてい)は、2026年度中の完成を目指す。県が管理する河川では、人家が連なるなど優先度の高い22河川で本格的な復旧工事に着手した。砂防・地すべり対策は、県や市町の対策箇所も含め2029年度末までに全箇所で完了させる目標だ。
七尾市の和倉温泉では、旅館の建物と海沿いの護岸が大きく壊れた。国は民有の護岸も公有化したうえで復旧する方針を2024年9月に定め、工事を進めてきた。営業を再開した旅館や再開予定の旅館の前にある護岸(施工延長790メートル、うち国の施工535メートル)は2026年6月25日に完成した。和倉温泉旅館協同組合に加盟する19軒のうち、9月末までに11軒が営業を再開した。港湾では、主要な係留施設全ての本復旧を2026年度末までに終える目標を掲げている。
津波で大きな被害を受けた珠洲市の宝立正院海岸は、2025年9月までに全地区で本復旧に着手し、2027年度中の完成を目指している。上下水道は、土砂崩れなどで現状の復旧が難しい地域を除いて断水は解消しており、水道施設の本復旧は2028年度末までの完了を目指す。
地域の足の確保、AIを使う乗り合い交通の実証へ
資料によると、公共交通は奥能登地域を除けば、総じて地震前のサービス水準までおおむね回復している。JR七尾線は2024年2月、のと鉄道は同年4月に運転を再開し、ともに地震前と同じダイヤに戻った。羽田と能登を結ぶ空路は2024年12月25日から地震前と同じ1日2往復で運航している。能登空港を拠点とする金沢との特急バスは2024年9月から走り、1日あたり輪島市へ6往復、珠洲市へ4往復、能登町へ3往復を運行している。路線バスを再開できない奥能登の区間では、仮設住宅との行き来も含め、市町のコミュニティーバスや予約に応じて走るデマンド交通の実証運行を国が支援している。
石川県や関係市町、国は2024年7月に能登地域全体の広域協議会を立ち上げ、金沢と各市町を結ぶ広域の基幹交通(2025年3月)、市町を結ぶ幹線や地域内の交通(2026年3月)の再構築の方針を、2回に分けて「能登地域公共交通計画」として策定した。これに沿って、2026年10月から各市町に共通するAIオンデマンド交通の実証運行を始める予定だ。能登地域では5月にタクシーの営業区域も統合された。のと鉄道は、電気式気動車の導入や観光列車「のと里山里海号」の運行再開などを盛り込んだ再構築計画が2025年6月に認定されている。
液状化に伴って地盤が横にずれる「側方流動」が起きた地域では、土地の境界を確定し直す地籍調査を進めており、境界の再確定に向けた調査を最短で2026年度中に終えることを目指している。
