気象庁は10月16日、同日午後0時40分に北海道から中部地方へ出した緊急地震速報(警報)が過大な予測だったとして、同日中に3回の報道発表で経緯と原因を明らかにした。実際に起きたのはカムチャツカ半島付近を震源とするマグニチュード(M)6.9(速報値)の地震で、国内で観測された揺れは函館市の震度1だった。速報の処理では規模をM9.9と推定していた。午後10時40分の第3報では、2020年に同じような過大予測を起こした後に入れた再発防止の機能が「正常に動作していなかった」と認め、緊急対策を実施したうえで「多大なご迷惑とご負担をおかけした」と謝罪した。
M6.9の地震をM9.9と推定、北海道から中部に警報
午後2時に出た最初の報道発表によると、地震は16日午後0時38分ごろに発生した。震源はカムチャツカ半島付近、規模はM6.9(速報値)で、国内では函館市で震度1を観測した。
ところが緊急地震速報の処理では、震源を千島列島と決め、規模をM9.9と過大に推定した。このため気象庁は、その2分ほど後の午後0時40分に北海道から中部地方に対して緊急地震速報(警報)を発表した。資料に添えられた地図では、警報は2回に分けて出ており、北海道から東北、関東を経て中部地方まで、広い範囲が警報の対象として塗られている。
緊急地震速報(警報)は、最大震度5弱以上か、高層ビルを大きく揺らす長周期地震動の階級3以上が予想されたときに出す。対象になるのは、震度4以上などが予想される地域だ。全国を約200に分けた地域の名前で伝え、テレビ・ラジオや携帯電話の緊急速報メールなどで一斉に流れる。気象庁は、震度5弱以上になると顕著な被害が出始めるため、事前に身構えてもらう必要があると説明している。このうち震度6弱以上などが予想される場合は、特別警報に位置づけられている。具体的な予測震度を伝えずに「強い揺れ」と表現するのは、予測には±1程度の誤差があり、続報をできるだけ避けたいためだ。震度4の予想地域まで含めるのも、誤差で実際には5弱になる可能性などがあるからだという。今回は、ほとんど揺れなかった地域に「強い揺れ」への備えを促す結果になった。
午後2時の時点で、気象庁は原因を「現在調査中」としていた。
遠い地震に国内用の式、二つの震源が食い違う
午後5時30分の第2報で、気象庁は判明した原因を二つ挙げた。
一つは、日本から非常に遠い場所で起きた地震に、国内用のマグニチュードを求める式を当てはめたことだ。もう一つは、規模の計算に使った震源と、震度の予測に使った震源が違っていたことだ。気象庁は「本来、マグニチュードの計算と震度の予測に用いた震源は同一である必要があります」としている。
第2報に付いた図を見ると、食い違いの中身が分かる。規模の計算には、カムチャツカ半島よりさらに東の太平洋上の地点を震源として使った。一方、震度の予測では、千島列島付近の別の地点を震源とし、そこに先ほど求めたM9.9を当てはめた。後から地震情報で発表した実際の震源は、この二つのどちらとも違う、カムチャツカ半島の南の沖合だった。
本来より遠い場所を震源として規模を出し、それより日本に近い場所で起きたことにして揺れを予測すれば、予測は大きくなる。気象庁は第2報で、こうした理由から「広域にわたって」警報を出したと説明した。
2020年の鳥島近海の教訓、機能が動かず
午後10時40分の第3報は、さらに踏み込んだ。震源から遠い観測点を規模の計算に使ったことで規模をM9.9と過大に推定したことが、原因の一つだったとした。
気象庁が引き合いに出したのが、2020年7月30日の鳥島近海の地震だ。当時の発表によると、この日の午前9時36分ごろに鳥島近海でM5.8の地震が起き、震度1以上の揺れはどこでも観測されなかった。それなのに速報の処理は震源を房総半島南方沖と決め、規模をM7.3と過大に推定した。気象庁は2分後の午前9時38分、関東・伊豆諸島・東海・東北・甲信・北陸地方に緊急地震速報(警報)を出した。
気象庁は同年8月7日、原因を「800キロ以上離れた小笠原諸島の母島観測点で観測されたデータを用いたこと」と説明した。対策として、マグニチュードの算出には「震源からの距離が700km以下のもの」を使うよう改め、8月中にソフトウェアを改修して試験し、9月上旬に運用を始めるとしていた。今回の第3報は、この改善策を「震源から700㎞以上遠い観測点をマグニチュードの計算に用いないこととしていました」と書いている。
| 項目 | 2020年7月30日 | 2026年10月16日 |
|---|---|---|
| 実際の震源 | 鳥島近海 | カムチャツカ半島付近 |
| 実際の規模 | M5.8 | M6.9(速報値) |
| 速報処理の震源 | 房総半島南方沖 | 千島列島 |
| 速報処理の規模 | M7.3 | M9.9 |
| 国内の揺れ | 震度1以上の観測なし | 函館市で震度1 |
| 警報の対象 | 関東・伊豆諸島・東海・東北・甲信・北陸 | 北海道から中部地方 |
ところが今回の地震では、この機能が働いていなかったことが分かった。なぜ動かなかったのかについて、第3報は触れていない。
同日夜に緊急対策、詳しい原因は調査中
気象庁は16日午後9時30分ごろ、この機能が動くように緊急的な対策を実施した。対策の後、今回の地震を当てはめても緊急地震速報(警報)が出なくなることを確かめたという。第3報は「誤った緊急地震速報の発表により、国民の皆様には多大なご迷惑とご負担をおかけしたことについてお詫びいたします」と謝罪し、引き続き調査を進めて必要な対策を実施するとしている。17日付の追加の発表は出ていない。
緊急地震速報は2007年10月1日に広く一般への提供が始まり、同時にNHKや民放の放送と、全国瞬時警報システム(Jアラート)による送信も始まった。その後も、海域の地震をより早くとらえるため、2025年10月15日には海底地震計網「N-net」の沖合システム、2026年3月12日には沿岸システムのデータを取り入れるなど、改良が続いてきた。過去の地震で緊急地震速報(警報)がどう出たかは、10月7日は東京・足立区で震度5強を観測した日 2021年の千葉県北西部地震から5年、負傷49人 舎人ライナー脱線の再発防止工事は2028年度完了見込みでも扱った。
気象庁の決まりでは、出した警報を取り消すのは、落雷など地震以外の現象を地震と取り違えた「誤報」の場合に限られる。地震そのものは実際に起きていて、予想した震度が後から下がっただけのときは取り消さない。今回の気象庁は、第3報で自らの速報を「誤った緊急地震速報」と表現した。2020年の改善策がいつから働かなくなっていたのか、ほかの地震の速報に影響がなかったのかは、3回の発表では示されていない。気象庁は詳しい原因を調べ、結果を改めて公表するとしている。
