片山さつき財務相は10月16日の閣議後記者会見で、前日の15日にタイ・バンコクで開かれた主要20か国・地域(G20)と先進7か国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議について、「ボラティリティの高い時期で、地政学的にも様々なことが起きているときに、ほとんど全員本人出席で集まれたということが非常に意味があった」と述べた。会議では重要鉱物のサプライチェーンの多様化や人工知能(AI)がもたらすリスクへの対応、世界的な経常収支の不均衡の是正について日本の考え方を伝えたと説明した。第2次補正予算案の検討状況を問われると、「補正予算の編成が必要かどうか、予断を持って申し上げられる状況ではない」と答えた。

重要鉱物・AI・不均衡の3点で日本の考えを説明

財務省が公表した会見の概要によると、片山氏は会議で日本から訴えた点として、①重要鉱物などのサプライチェーンの多様化を含む経済の強靱化、②AIがもたらすリスクへの対応、③グローバルインバランス(世界的な経常収支の不均衡)の是正に向けた政策対応――の3つを挙げた。

AIのリスクについては「G7等で今後机上演習をやることになりました」と述べ、「1つ大きな進化」と位置づけた。机上演習は、想定した事態に各国がどう動くかを、実際の危機を起こさずに図上で確かめる訓練のことだ。グローバルインバランスについては「主に中国の大幅黒字とアメリカの大幅赤字」と説明した。 財務省は、16日にバンコクで開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会での片山氏の総務演説も公表した。演説では、「過度で持続的なグローバル・インバランスは、貿易を巡る緊張の更なる高まりや、金融市場の無秩序な調整につながるおそれがあり」、IMFによる率直な政策提言が不可欠だとした。重要鉱物についても「恣意的な輸出規制は、世界経済の下方リスク要因であり、撤回されるべき」と述べた。中東情勢には「一日も早い、ホルムズ海峡の自由で安全な航行の確保が不可欠」と触れ、母子保健と栄養を支える国際基金「グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)」への4000万ドルの新規拠出も表明した。

為替は「高い緊張感で注視」 声明はまだ公表されず

記者からは、会議で為替のコミットメント(合意事項)を再確認したことや、足元で株・為替・債券の値動きが激しくなっていることについて、どのような議論があったかを問う質問も出た。

片山氏は、G20などの為替のコミットメントも踏まえ、「高い緊張感を持って金融市場の動向を注視する必要がある」と会議で「再三発言しておりまして」と説明した。そのうえで「それ以上の具体的な議論につきましては内容をお答えするのは差し控えさせていただきます」と述べ、他国とのやりとりの中身には踏み込まなかった。

G20とG7の会議で採択された声明の内容は、財務省のG20のページには18日時点で掲載されていない。同ページの2026年の欄に載っているのは、8月31日~9月1日に米国・アシュビルで開かれた会議の議長声明までだ。

開発委員会は日本から初の議長に 韓国とは通貨スワップを更新

片山氏は会議の期間中、世界銀行・IMF合同開発委員会にも出席した。議長声明の表題によると、開発委員会は世銀とIMFの総務会が合同で置く閣僚級の委員会で、途上国への資金の移転などを話し合う。15日の第114回会合の後に出された議長声明は、過去2年間議長を務めたスウェーデンのエリザベート・スヴァンテッソン財務相に謝意を示したうえで、「後任の日本の片山さつき財務相を歓迎する」と記した。次回の会合は2027年4月に米ワシントンで開くとしている。

片山氏は会見で「日本からは初めて」と述べ、「任務は非常に重いので、身の引き締まる思いでしっかりと臨みたい」と語った。議長に就いたことで「より多くの情報が入る立場になった」とも述べた(指名の経緯は片山財務相、世銀・IMF合同開発委員会の次期議長に 1974年の設置以来日本初)。

二国間の会談では、韓国、インド、タイ、インドネシアの財務相らと会ったと説明した。財務省は韓国、タイ、インドの3か国との面会について発表文を出している。

相手国 面会した相手 内容
韓国 イ・ヒョンイル副総理兼財政経済部長官 日韓通貨スワップの更新に合意
インド シタラマン財務相兼企業相 財務相間の二国間協議に格上げする方向が「ほぼ合意」(片山氏)
タイ エクニティ副首相兼財務相 11月に財務相が投資委員会を率いて来日する予定(片山氏)
インドネシア 財務相(財務省の発表文なし) 二国間協議への格上げを「望んでおられる」(片山氏)
片山財務相がバンコクで会った各国の財務相らと主な内容出典: 財務省「閣議後記者会見の概要」(2026年10月16日)、各面会の発表文(同10月15日)

通貨スワップは、自国通貨が急落するなど資金繰りが苦しくなったときに、相手国の中央銀行などから外貨を融通してもらえるよう、平時に結んでおく取り決めだ。財務省の発表文は、韓国との面会で「日韓通貨スワップの更新に合意する」とともに、今後の協力について意見を交わしたとしている。

第2次補正は「緊要性の高いものに限定」の原則

会見の後半では、第2次補正予算案の検討状況が問われた。片山氏は「高市政権においては事業者や地方公共団体の予見可能性を高める観点から、従来続いていました大規模経済対策に基づく補正予算に依存した財政運営からは脱却」するという原則を立てていると説明した。補正予算は「緊要性の高いものに限定し、恒常的な施策については当初予算で措置する」方針だという。

そのうえで、「現時点で、補正予算の編成が必要かどうか、予断を持って申し上げられる状況ではない」と述べ、編成するかどうかを明言しなかった。

片山氏が根拠に挙げたのは、政府が7月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針)だ。骨太方針は、今年度すでに組んだ補正予算について「中東情勢が不透明である中で、経済活動や国民生活に支障が生じないよう必要な額を措置する」とともに、市中への国債の発行額にも配慮して対応したものだと位置づけた。そのうえで「今秋以降に補正予算が必要となる場合であっても、真に緊要性の高い施策に限定する」と明記している(原案の段階の内容は政府、骨太方針2026の原案を提示 「責任ある積極財政」掲げ実質1%超の成長へ)。

補正予算は、年度の途中で当初予算の内容を変えたり、足したりするために組む予算だ。片山氏が「予見可能性を高める観点」と説明したのは、大型の補正予算に頼ると、自治体や事業者がその年度にどれだけの予算がつくのかを当初予算の段階で見通しにくくなるためだ。骨太方針は補正予算と当初予算の区分の考え方を検討し、2026年内に改定する予算編成の基本方針に反映するとしており、年末にかけてその線引きが具体的に示されることになる。

IMF・世銀年次総会の総務演説は、国内の財政運営にも触れていた。演説では「日本は、国・地方の総債務残高対GDP比を安定的に低下させること等により、インフレ・金利のある世界に変わりつつある中でも、市場の信認を確保しつつ、経済成長と財政の持続可能性を両立させていきます」と述べている。

総債務残高対GDP比は、国と地方が抱える借金の合計を、国内総生産(GDP)と比べた割合だ。金利が上がる局面では、借金の利払い費が膨らみやすい。補正予算を「真に緊要性の高い施策」に絞るという会見での説明は、こうした国際会議の場での財政の説明とも重なる。

片山氏は補正予算について、骨太方針に「沿っての対応ということになります」と答えを結んだ。第2次補正予算案を編成するかどうか、編成する場合にどの施策を盛り込むかは、今後の経済情勢を見ながら政府内で判断される。